SORA NOTE

嶋田先生から空のみんなへ


脳ミソってすごい

【令和6年1月13日(土)】
 今日は大学入試の共通テストの日です。高校3年生の人には正念場。中学3年生の人も、どうかがんばってください。祈っています。

 練習開始5分前の時点では小学生二人と中学生男子一人の三人しか会場にいませんでした。それでクヨクヨするような嶋田先生ではありません。逆に
「よし。久しぶりにミミクリーペットとピアノを響かせる「響きのある声とは」のトレーニングをやろう」
と思っていました♪そうしたら9時25分からゾロゾロゾロっとメンバーが入ってきて、けっきょくは普通に「曲を覚える」練習に突入しました。
 でも集まったメンバーを見ると「ミミクリーペットとピアノってなあに?」と言いそうな子がたくさんいて、よっぽど「ミミクリーペットとピアノ」をやろうかなぁ…とも思ったのですよ。これは、とっても大切なトレーニングですからね。
 ですが、去年の第27回定期演奏会で、あれほどの響きとハーモニーを生み出した経験者ばかりです。その経験者に向かって「このミミクリーペットをだなぁ…」とやるのは効率が良くないね。
 ミミクリーペットは極めて効率が良くて分かりやすいトレーニングではありますが、やはり「合唱を知らない初心者向けの話」です。今のメンバーなら他にやることがいっぱいあるな、と、そう思って「曲を覚える」練習にしたというわけ。
 始める前の3分とか5分で、いろんなことを考えるんですよ、嶋田先生は。
 ミミクリーペットとピアノは新入団員が入ってきてくれてから考えることといたします(笑)

さて、集まったメンバーに「空にかいた12の童話」の中で一度も歌っていない曲に手を上げてください…と聞いたところ、1~11曲目までは全員が歌っていて、手が上がったのは「あこがれ」だけでした。そりゃ「あこがれ」は先週初めて歌ったので、つまり先週いなかった子が手を上げたことになります。
 「あこがれ」を深めていくのはもう少し後にしようかな…と一瞬思いましたが、歌うことにしました。
 音取りだけで意味の説明はしませんでしたが、この1ヶ月ほど書き続けてきたソラノートを読んでくれているのか、けっこう歌い方も熱がこもっていて、多くの子が初めて歌っているとは思えないような響きでした。

 50年以上も合唱を続けてきて、いったいどれだけの曲を歌ったのか自分でも分からない嶋田先生ですが、その嶋田先生が知っている中でも「あこがれ」は

 「歌う人が、本当に歌詞の内容を自分のこととして歌う必要がある」

曲のなかのトップです。
 その反対の「歌詞の内容を自分のこととして歌う必要がない」曲とは何かというと、カンタンな話で今回のプログラムの中では「一匁一丁」や「ずいずいずっころばし」です。
 「ずいずいずっころばし」を歌う時に「このネズミの気持ちを思いやろう」とか「茶壺に追われた子の気持ちを聴いているお客様に伝えよう」などと考える人はいない。
 いたとしたらその人は変態ですわな。
「三つのわらべうた」はハモりゃぁ良いんです。

 だけど「あこがれ」はそうはいかない。歌っている人が本気になって

 その人がそばにいるだけで
  みんなやさしくなれる
 その人がそばにいるだけで
  みんな勇気がでる
 その人がそばにいるだけで
  みんなしあわせになれる
 そんな人になりたい
  いつかそんな人になりたい

 と思っていなくては音楽が成立しないんです。
 今ソラノートを読んでくれている「あなた」に質問したいのですが、「あなた」が今コンサートに出かけるとして、ステージに出てきた合唱団が「あこがれ」を歌うとして、その合唱団が「そんな人になりたい」と思っていないとしたら、「あなた」はその「あこがれ」を聴きたいですか?
 嶋田先生は聴きたくありません。どんなにハモっていても、どんなに音程が正確でも、聴きたくないです。
 合唱には本当にいろいろな曲がありますが、大きく分けると2種類です。
○音程とハーモニーが正確であることが大切な曲
○音程とハーモニーも大切だけど、もう一つ歌う人の共感が必要な曲
 これは良い悪いの問題ではなく両方とも必要です。嶋田先生は両方とも好きです。だから今回のプログラムにも「三つのわらべうた」を選びました。

 ひとつだけハッキリしていることは、「あこがれ」は少年少女向きの曲ではありますが、「歌う人が、本当に歌詞の内容を自分のこととして歌う必要がある曲」
「音程とハーモニーも大切だけど、もう一つ歌う人の共感が必要な曲」
として、「あこがれ」は古今東西、世界的にもまれに見るトップクラスの曲です。ちょっと「あこがれ」以上の曲を思い浮かべることができませんね。嶋田先生の50年の経験をもってしても…。

 合唱指導者として難しいのは、歌っている人たち、すなわち「空」のメンバーに向かって、
「はい。そのように思いましょう。そのように共感しましょう。」
「はい。共感しましたか? では歌いましょう」
なんていう指揮指導では通用しない!!!ということです。
 また、ソラノートを読んでくれている「あなた」に質問したいのですが、嶋田先生が
「はい。そんな人になりたいと思ってください」
と「あなた」にお願いをすれば、「そんな人になりたい」って思ってくれますか?

 ¥10000あげるから「そう思ってくれ」と言われたって、そうは思えないでしょう。金をもらえば「そう思える」などいう話ではありません。
 ここが合唱指揮の難しい点です。
 池辺先生だって村田さち子さんだって「難しい」と思ったはずです。
 詩人と作曲者がこの問題を考えた結論は、「あこがれ」の前にファンタジックでロマンチックで楽しい空想の世界を11曲並べることでした。嶋田先生はそう思います。
 ただ思うだけではなくて、「空にかいた12の童話」という組曲に今までに5回取り組んでみて得られた嶋田先生の結論です。
 今までの5回、最初に取り組んだのは1993年でしたが、今までに「何曲かカットしよう」と思ったことは一度としてありません。

 今日「あこがれ」の音取りが終わった後、それは10時15分ごろの話ですけれども、嶋田先生が一瞬「う~ん」とウナって考えたのは、上に書いたことを瞬間的に考えていたからです。
 それで12曲全部を歌い通すことにしました。
 これ、全部歌い通さないと分からない話です。「そう思え」って言われたって「そう思える」ような話じゃないですから。
 人間の脳ミソって便利ですね。このソラノートを書くために何文字書いたかな。この文字数が必要なことを5秒か10秒で考えて結論が出せるんですから、脳ミソってすごいです。
 今の「空」メンバーが初めて等して歌った「空にかいた12の童話」。すごくステキだったと思います♪

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