SORA NOTE

嶋田先生から空のみんなへ


人間にしか成し得ない「音楽の世界」

【令和3年4月4日(土)】
快心の演奏をありがとうございました。
と書くことができる幸せを噛みしめています。
「コタンの歌」に対する「空」のメンバーのイメージの膨らみは、嶋田先生が予測していたレベルを大きく上回る豊かなものでした。
マリモの心(つまり人間の心 さらに言えば歌うメンバーの心)が太陽の神を仰いで、神話(つまり人間の心の真実)と戯れる…
ムックリの音が緑の大地と真っ青な大空に響き、そして同時におばあちゃんの病床にも響き、そしてムックリの音は「紫陽花色」に輝いておばあちゃんの悲しい心を(紫陽花色に)染めていく…
川下コタン(川下の村)の村長(ここでは若者と考えて良い)の心は正直で親切で小鳥の神(カムイ)が鳴いているけれど、川上コタンの村長(若者)の心はズルくてイジワルで怠け者で冷たい魚が泳いでいるようだ。
川上コタンの若者の心の中の太陽の神は死んでしまったのか?蘇ってあげてくれ太陽の神よ、あの貧しい若者の心に…
書き出したらキリがありません。
楽譜の中に書き込まれているのは「音符」と「ひらがな・カタカナ」と「強弱記号・表現記号」だけです。
この「音符」と「文字」と「記号」を声とハーモニーに変換するだけだったら、「コタンの歌」に限らずいかなる音楽でも歌う値打ちはありません。それは作曲者の責任ではない。もしそうだとしたら責任は歌う人たちのイメージの貧困さにあります。
しかし合唱団「空」の場合、その「音符」と「文字」と「記号」の中から無限に広がる豊かなイメージを膨らませ、人間にしか成し得ない「音楽の世界」を紡ぎ出すことができたと確信しています。最初に「快心の演奏」と書いたのはそういう意味です。

ここに東海メールクワイアーの豊かな音楽性が「快心の演奏」に「超」の文字を加えることになりました。
「豊かな音楽性」とは何か。「空」の子どもたちにも分かりやすい言葉に直せば「豊かに膨らむイメージの力」です。
東海メールクワイアーのメンバーは全員、30年、40年、そして70年(ステージに立ってくださった最年長メンバーは91才です)歌い続けているウルトラスーパー合唱人間です。その長い経験の中で、「ふりしきれ雨よ」と歌う時には瞬時に「悲しんでいる人の心に愛の雨よふりしきれ」と変換し、「来なさい 重荷を負う者」と歌う時には「心に深い傷を背負う人よ、私がいっしょにその傷を受け止めてあげるよ」とイメージを拡げて歌うことを知っています。
2月から3月にかけての東海メールの歌声の変化(熱量の高まり)に驚きました。というのは浜田先生の証言です。

「空」のメンバーは、もちろん自分自身で「コタンの歌」の世界をイメージし膨らませました。そのことは驚嘆に値しますし、嶋田先生は大きな称賛を捧げます。
しかし、30年40年そして70年かけて膨らませ続けた東海メールの「イメージの力」、豊かな音楽性が隣にあったことを忘れないでほしいと願っています。「本当に音楽を愛する」とはどういうことなのかを身をもって示してくださり、隣にいてくれた東海メールの姿を忘れてしまったら、今回のステージに立った意味は半分以下になってしまいます。
プログラムに書いた「忘れられない仲間とともに」とは、いっしょに練習を続けてきた「空」の友達のことであることはモチロンですが、同時にいっしょになって本気で歌ってくださった東海メールの皆さんのことでもあります。

プログラムの文章を書いたのは3月です。その時は、だから「こうなると良いな」と思って、予測して書きました。
その予測は裏切られることもあります。いや、むしろ裏切られることの方が多いのが事実です。
3月に書いた「こうなると良いな」は真実の体験として実を結びました。冒頭の2行目に「…と書くことができる幸せを噛みしめています」と記したのはそういう意味です。

それにしても、古今東西史上初となる少年少女合唱団と男声合唱団とによる「コタンの歌」でした。
指揮をしていても本当に難しかった。ソプラノ・メゾソプラノ・アルトに加えてトップテノール・セカンドテノール・バリトン・バスの合計7声部あるのですから、指揮者の勉強不足・準備不足がいたるところに露呈(ろてい)しました。
そして、そんじょそこらの少年少女合唱団であったなら、とてもじゃないけど東海メールクワイアーの響きの前に崩壊していたことでしょう。

浜田先生の証言をもう一つ記しておきます。
録音を取るということでリハーサルも本番だと思って(ピアノを)弾く努力をしました。でも「テイクワン」とか何とか言って、1曲ずつ歌っていくのと本番で8曲連続して歌うのとでは、合唱団の気力がゼンゼン違いました。「あぁ、組曲って、こういうものなんだ…」と思いました。1曲目が2曲目を生かし、2曲目が3曲目を生かしているのです。貴重な体験でした。

これは「空」のメンバーにとっても同じでしたでしょう。良い経験になりました。
この貴重な体験が浜田先生の最後のステージになったことは幸せなことです。浜田先生、ありがとうございました。
鋼鉄の一枚岩となって支えてくださった父母会の皆様、そして女声コーラス青の皆様、フェールマミの矢代マミ子様にも深い感謝を申し上げます。

さて、浜田先生に深い感謝を捧げ、そして来週からは江川 智沙穂 先生をお迎えします。
何人かの入団希望者・見学者も来てくれます。
新生・合唱団「空」のスタートです。力を貸してくださいね。

楽譜は「われもこう」と「ぼくは雲雀」と「やさしい魚」と歌集「歌はともだち」を持ってきてくださいね。

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