SORA NOTE

嶋田先生から空のみんなへ


丁寧(ていねい)な表現

【令和2年11月28日(土)】
今日は「コタンの歌」に終始しました。楽譜を配ってから10カ月近くになり、メンバーの共感やイメージの高まりは相当なものだとは思いますが、いかんせん音楽の作り方が巨大であり、曲数も8曲と多く、何よりコロナによる練習自粛もあって、丁寧(ていねい)な表現を作り上げる練習が足りなかったかな…?という反省がありました。これまでの嶋田先生の練習が大雑把だったかな…という反省です。
コロナの心配に加えて期末テスト週間でもあり、集まってくれたメンバーも苦しかったでしょうね。よく歌ってくれました。大感謝です。
「船漕ぎ歌」はP5の5小節目と6小節目を整理しました。5小節目「アイヨーアイヨー」と6小節目「アイヨホアイヨー」です。ソプラノもメゾソプラノもアルトも1~3拍目までは同じ音ですね。ところが4拍目は
ソプラノ   5小節目の4拍目はファレ、6小節目の4拍目はレド
メゾソプラノ 5小節目の4拍目はドラ、6小節目の4拍目はラソ
アルト    5小節目の4拍目はソレ、6小節目の4拍目はレド
というように違っています。このような部分を勢いに任せて歌っても、今の「空」ならソコソコきれいに聴こえます。ですが、アヤフヤに歌うのではなく、こういう部分をキチンと確認し整理することによってハーモニーに磨きがかかってくるのです。よく集中して正確に歌ってくれました。少なくとも嶋田先生の耳では100点の正確さで、これ以上のキビシイ練習を続けることは不可能…というレベルでした。世の中には「耳の化け物」と綽名(あだな)されるような指揮者がいますが、そのような指揮者ならいざ知らず、嶋田先生の耳ではこの5~6小節目は「もうこれ以上は望めない」というレベルでした。
この5~6小節目は39~40小節目と73~74小節目で同じことが繰り返されますから、「船漕ぎ歌」は要所要所がピシっと引き締まってカッコイイ音楽になりました。
「マリモの歌」はV(ブレス・息継ぎ)の位置です。「マリモは」でVします。次は「冷たい清らかさを生きている」とV無しでつないで歌うわけです。普通なら3小節目と4小節目の間にVがあり、「マリモは冷たい」「清らかさを生きている」となるはずですが、湯山先生はそうはしない。日本語の語感(ごかん・話す時の感じ)を生かすためです。続いて
「重くなった心を湖底に沈めたり」を一息。
「軽くなった心を湖面に浮かべて」を一息。
「太陽のカムイを仰いだり」を一息で歌います。
これは全て「日本語の語感」を生かすためです。もう少し国語的に説明しますと
①「マリモは」「冷たい清らかさを生きている」
②「マリモは」「重くなった心を湖底に沈めたり」
③「マリモは」「軽くなった心を湖面に浮かべて」
④「マリモは」「太陽のカムイを仰いだり」
という詩であって、②と③と④の「マリモは」が省略されているわけなんです。
つまり実際の歌では
①「マリモは」「冷たい清らかさを生きている」
②      「重くなった心を湖底に沈めたり」
③      「軽くなった心を湖面に浮かべて」
④      「太陽のカムイを仰いだり」
と歌うことになる。湯山先生はこういうことを考えて3小節目のど真ん中にVを付けているんです。
このような部分を、苦しくなったら息を吸う…というような歌い方で押し通していくと、日本語の語感は死滅します。それを確認し整えることで、今日の「空」の「マリモの歌」は要所要所がピシっと引き締まってカッコイイ音楽になりました。P19から始まる2番も全く同じことが言えますが、いやぁ苦しかったですねぇ。2番は男声が入る分だけフレーズが長くなっていて、つまり一息で歌うセットが長くなります。これは苦しい練習でした。でも本当にカッコ良かったですよ。

途中で「みんながどれだけ上手くなっても次のレベルがあります」というセリフを吐いてしまいました。簡単に言えば25m泳げるようになったら次は50mであり、50m泳げるようになったら次は100mという話です。大切なことは25mを泳ぐためのヒントだけを用意しておくのではなく、50mや100mを泳ぐためのヒントも用意しておくということです。これが授業です。

5年生の理科で「振り子の動き」という学習があります。これは「振り子が一往復する時間」について、①おもりの重さは関係がない ②おもりをつなぐ糸の長さによって変化する という2点を理解すればテストで100点が取れます。
教科書では、糸の長さを20cmにしたり30cmにしたりして実験をするわけです。ここまでなら教室でも実験できます。結果は当然30cmの糸にした方が振り子の動きは遅くなるわけです。
嶋田先生の場合、教室での実験が終わったら体育館に移動するわけです。そして天井からぶら下がっている昇り綱を引っ張り出してきて全員で遊ぶ。子供の身体がおもりで、15メートルの昇り綱が糸です。その後、天井のバスケットゴールにロープをつないで20メートルの振り子を作る。その動きたるやビックリするくらい遅いわけです。
それを確認した後で教室に戻って、「では糸を東京スカイツリーから垂らしたらどうなるか?」と質問しました。「ものすごく遅くなるはずだ」という答えが返ってきます。でも、どのくらい遅くなるかは分からない。知りたくなります。
そこで「では糸の長さを38万キロメートルにしたらどうなるか?」と問題を出しました。38万キロメートルというのは地球と月との距離ですね。
そんな長さの糸は無く、だいたい振り子を月から地球まで垂らすことなんかできません。しかし実験は今すぐにできます。
「空」の中学生・高校生に質問します。「振り子を月から地球まで垂らしたら、その一往復にかかる時間はどのくらいでしょう?」
アハハ!ちょっと脱線しすぎましたね。答えは明日11月29日の「ソラノート特別編」に記すことにします。

ま、そんな具合で、今日も美しく歌えました。みんな、ありがとう。しかし、どんなに上手になってもその先がある、次のレベルがあり次の目標がある…ということは忘れてはならないことです。今日の練習は、そのことを実証することができた練習だったと思います。
では、また明日。

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