SORA NOTE

嶋田先生から空のみんなへ


鮎のいのち 自分自身の命

【令和2年10月3日(土)】
10月に入りました。涼しくなってきましたね。
11月1日に予定されているスペシャルジャンボスーパーリハーサルまで1ヶ月となりました。本来は第24回定期演奏会(4月4日(日)に延期。湯山先生も東海メールクワイアーも了承済)でしたから、リハーサルとなったことは残念ですが、しかしその残念をプラスに変えましょう。当日は午後に集まってウイルホールで練習をし、最後に仮想本番みたいな形でネット中継をする予定です。
あくまでもリハーサルですから、遠く離れた場所にいる「サポートメンバー」や普段の練習に来られない「現役メンバー」も、ぜひ参加してください。「もう半年くらい練習に行っていないから…」などと考えないでくださいね。半年ぶりだろうが1年ぶりだろうが「空」にとっては大切な仲間です。なくてはならない子なのです。待っています。
当日は、マスクや消毒、検温、当日の会場に誰がいたかの把握など、あらゆる対策を施し、ステージは大中先生コンサートで使った広い山台(あの180人が乗った山台)を組んで、そこに「空」だけが広がって立ちます。客席には家族しかいない状態ですから、あとは家からウイルあいちまでの道中での感染対策さえ考えてもらえれば心配はいらないと思います。
半年ぶり(この言葉は分かりやすいから使っているだけで、先生は誰が何回休んでいるかなどは覚えていません。ようするに久し振り…という意味です)のメンバーが来ても気楽に楽しく歌えるように、指揮者として土台を固めておく必要はあります。今日もそのためにメンバーの力を借りました。大感謝です。
まず力を借りたのは「鮎の歌」。5曲目です。
P35が1番、P36を2番とします。1番と2番は朝の風景の様子を伝えるフレーズです。いわばアナウンサーのセリフ。「むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんがおりました」という語りの説明です。だから気楽にフワッと歌えばOK。「空」の得意な歌い方でOKです。
その歌い方でP37に突っ込んではいけない。P37は「故郷が見えてきた喜び」のワクワク感がほしいです。だからP35~36とは少し声を変えて、明るくエネルギッシュに歌いましょう。
P38の「川石の青」のフレーズはもっとエネルギッシュに。そしてP38の3段目から始まる「川の流れは歌う…」の3回目、いわば3番は、1番・2番とは明らかに違います。ここは朝の情景を語るアナウンサーであってはいけません。歌うメンバーが自分自身のことを歌う部分です。
鮎という魚のことを歌うのならば、別に「鮎の歌」でなくても良いのです。「鯉の歌」でも「鮒の歌」でも良い。あるいは「金魚の歌」とか「サンマの歌」でも何でもかまわない。
なぜ「鮎の歌」か。
それは「鮎」という魚の姿を通して「自分自身」を歌い上げる「人間の歌」だからです。だから3番はこうなる。
川の流れは歌う 私の命の夜明けの歌を 谷から谷へ 命の木霊を響かせて 命の夜明けを告げるのだ
とイメージしてください。
あのね、そのようなイメージがある歌と、ない歌と2種類あったとして、後者の「そのようなイメージのない歌」って、歌う値打ちがありますか? あるいは聴く価値がありますか? もっと言うと、その楽曲が存在する意義はあるでしょうか。
イメージを持って、自分なりの「思い」を持って歌わない限り、その楽曲は存在意義を失います。つまり、みんなの歌い方ひとつで、湯山昭という不世出の作曲家が送り出した楽曲に存在意義が生まれるのです。

そのイメージや「思い」のクライマックスがP41の「鮎 鮎 鮎の命」です。
そこまでに2度、「鮎 鮎 夏」と歌うところがありますね。それまでは2回とも四分休符で「鮎」「鮎」と切って歌っています。それは「夏という季節」を歌っているからです。
ところがP41では休符がありません。「自分自身のいのち」を歌っているからです。「あゆーあゆーあゆのいーのーちー」と歌う。「わたしのーわたしのーわたしのいーのーちー」です。激烈な、そして爆発的なエネルギーが必要です。まさに歌うメンバーの全身全霊を込めた表現の高まりになる。
その前段(少し前の部分)に「早い瀬を 深い淵を」という言葉がありますね。「瀬」とは急流、「淵」とは底なしの深い水たまりのことです。鮎にとっては「瀬」も「淵」も、乗り越えなくてはならない「壁」です。
みんなだって「壁」にぶつかったことがあるでしょう? 大切な親友とケンカをしてしまった、クラスの中でイジメられた、父さんや母さんに本気で叱られた、これ全て「壁」です。人生の試練です。コロナだって「壁」であり試練です。幼稚園の子供だって「壁」にぶつかって泣いていることはしょっちゅうです。
そんな時、みんなは自殺しましたか? あるいは未来に、本当に辛いことがあった時、みなさんは自殺しますか?
命って大切なものです。その「命の大切さ」「命の強さ」を歌う。それが「鮎の歌」です。
「瀬」や「淵」を乗り越えて、上流へ上流へと(目標へ目標へと)川をのぼることだけが「私の命」なのだ。こう歌いましょう。
こんなセリフを11月1日に言えるといいな。できたらこのセリフを言っている瞬間をネット中継してもらいたいな。そしたら「鮎の歌」を歌いたいって子が増えるんじゃなかろうか…。みんなが頑張って歌ってくれて、そして多いとは言えない人数なのに精一杯の表現をしてくれて、そしてその歌声が少しずつ高まっていくのを聴いて、先生はそんな夢を見ていました。指揮をしながら…です。
みんな、ありがとう。

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