SORA NOTE

嶋田先生から空のみんなへ


集中ということ 聴いて1分以内なら

【令和2年3月21日(土)】
「学校の休校要請を延長しない」との報道があり、ホッとしています。無事に入学式・始業式が開催できることを祈っています。
とは言え、嶋田先生は元気ではありません。元ウィーン少年合唱団音楽監督のアグネス・グロスマン先生(現在はカナダ在住)が来日できなくなり、ために6月21日に予定されていた東海メールクワイアーの定期演奏会は中止…との決定がなされました。コロナウイルスごときで積み上げてきた練習と努力が水の泡になることは無念です。今回の指揮者が外国人であったことが裏目に出ましたね。合唱団「空」がこんな目に会わないように祈るばかりです。
さて、今日も元気なメンバーが集まりました。楽譜を配ってから一度も歌っていない曲をやりたいな…と思い、そうなると残っているのは合唱組曲「鮎の歌」の3曲目「猪譚」しか無いということが分かりました。これまでの練習が効率よく進んでいる証拠です。
「猪譚」の最初の和音はシとミです(ハ長調ならドとファの関係)。冒頭のソプラノのメロディーは低いシ→ミ→シ→高いミへと移行していき、メゾソプラノとアルトの音の進行も基本的には同じです。これをまず確認しました。
次に17小節目の「見切り」の和音ですが下からミ・♯ファ・シです。これが基本。これは根音(根っこになる基本の音)が抜いてありますが要するに低いシ・ミ・♯ファ・シです。ハ長調に直せばド・ファ・ソ・高いドの関係。これは雅楽(ががく)の音で、分かりやすく言えば「さくら」の基本和音です。真ん中のミ・♯ファ(ハ長調で言えばファとソ)がぶつかっていて非常に美しい。このブツカりの美しさを当たり前のように自然に出してくれるから嬉しいですね。
今の「空」はレベルが高いので、ただ歌うだけで自然に音をぶつけることができます。それがテクニックだけに終わらないように、つまり、その音と音とのブツカりが何を元に作られているかを明らかにしました。この場合は「雅楽」です。「越天楽(えてんらく)」で検索してYouTubeか何かで2~3分で良いので聴いてみてくださいませ。
P19はP17の歌い出しが分割されて順々に出てくるだけで、基本的な和音構造に変わりはありません。だからアッと言う間にクリアです。
P21「そもそも人は…」からのフレーズは半音上がってP25「おやおや あれは…」で繰り返しになります。P27はP17が半音上がっているだけなので音取りに時間はかかりません。だから「猪譚」も初見にも関わらず、全部のパートを全員が歌って、その上で変わり番こに全部のパートを歌って3回ハモらせることができました。

休憩の後は「いちごたちよ」。合唱組曲「鮎の歌」は①「雉」が対立②「わさび田」が融合(ゆうごう)、③「猪譚」も対立で④「いちごたちよ」が融合という対比になっていて、⑤「鮎の歌」で生命の大切さを歌い上げる構成です。だから「猪譚」を歌った後は「いちごたちよ」を歌うことが効果的です。
最初に提示した課題は「聴いて1分以内なら、聴いたとおりにそのメロディーを再現して正確に歌うことができるように聴く」というものです。
昭和61年(1986年)だったと思いますが、嶋田先生は東海メールクワイアーの合宿に参加しました。その最初の練習にイキナリ本番の指揮者が来ていて、まだ1度も歌ったことがない「ヴィラ・ロボスの3声のミサ」をイキナリ「一人ずつ歌ってください」と言われました。嶋田先生は4つ目のイスに座っていたので、嶋田先生の前に三人のメンバーが歌う(歌わされる?)ことになります。生まれて初めて見る楽譜をイキナリ指揮者の前で一人で歌わなくてはならない。しかし3回聴くチャンスがありました。本当に、かけねなく真剣に、三人のメンバーが歌うのを聴いていました。そして自分の番が回ってきた時、ほぼ完璧に歌えたのですよ、嶋田先生は。嶋田先生が上手だったからではありません。真剣に聴いた賜物(たまもの)でした。
そのメロディーは35年ほど経った今でも頭から離れません。焼き付いてしまったのです。焼き付いてしまった「ヴィラ・ロボスの3声のミサ」の一部を証拠に歌って聴いてもらいました。練習でみんなに言い忘れましたが、覚えているのはそのフレーズだけです。5曲ほどあった他の部分はカラッキシ覚えていません。指揮者の前で歌った3分ほどのフレーズだけが鮮明に残っています。
以来、担任として教えた全てのクラスの子供たちに「集中の大切さと効果」について語り続けてきた30年でした。やればできるんです。できないのは集中力が無いからだということを言い続けてきました。
他の部分は全て忘れても、そのフレーズだけは35年経っても鮮明に焼き付いている。そういう聴き方ができるんです。そのレベルの聴き方をしろ…とは言いません。だから「聴いて1分以内なら」という前置きが付いています(笑)。
しかし、みんなの「合唱力」を高めるためにも「空」のレベルを上げるためにも、その「聴いて1分以内なら」という聴き方は重要です。そのことだけを狙った「いちごたちよ」でした。
最初から24小節目までを、全てのパートを歌って聴いてもらって、直後に再現してもらいました。次は25~36小節目。その次は39~50小節目。そこまでを全部、嶋田先生が直後に再現して歌ってもらいました。正確に歌えます。耳が育ってきています。
51小節目からはどうしたかと言うと、それは25小節目以降が1音高くなっただけなのでヒラガナさえ読めればOKでした。
聴いて歌う、そしてまた聴いて歌う。それだけの作業で全てのパートを全部歌うことができました。ハーモニーもきれいでした。

残った時間に「コタンの歌」を歌うことにしましたが、その瞬間に「カエルの子守歌」を歌うことに決めました。全く予定外だったのですがお願いしました。
予定外と言うのは、定期演奏会では歌わない予定の曲(4番と8番)だったからです。しかし嶋田先生には目論見(もくろみ・作戦)があるのです。それは東海メールクワイアーに「ねぇ、もう1曲だけ歌っておくれよ。8曲目も歌っておくれよぅ」と頼もうと思っているのです。できることならその後に「ねぇ、あと1曲だけ歌っておくれよ。4曲目も歌っておくれよぅ。全曲やってみようよぅ」と頼もうと思っているのです。嶋田先生的には、ある組曲を抜粋して(何曲か抜いて)歌うのは趣味ではなく、歌うからには全部やりたい…というのが本音なのです。
だから4曲目も8曲目も楽譜を調べて研究をしています。その研究を実験してみたくなった。モルモットにしてゴメンナサイ。ですけれども、ものすごく成果が上がりました。メンバーは初見の上に突然の話で戸惑いも多く、決して楽しい時間にはならなかったかもしれない。そこはゴメンナサイ。ですけれども、机の上でCDを聴きながら楽譜を確認する研究よりも何倍も何百倍も効果がありました。そうか、ここはこんな音になるのか…と生の声で聴くことができたことは大きかった。本当に感謝です。「猪譚」と「いちごたちよ」を効率的に歌ってくれて、時間に余裕を与えてくれた今日のメンバーに、大大大感謝です。
来週もよろしくね!

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