SORA NOTE

嶋田先生から空のみんなへ


第24回定期演奏会に向けての練習がスタート。「コタンの歌」について

【令和2年2月8日(土)】
今日から本格的に第24回定期演奏会(11月1日・ウイルあいち)に向けた練習が始動しました。すでに「小さな目」は楽譜を配って何度か練習を重ね、おおむね全曲を歌い初め、どんな曲がどのように並ぶかなどはメンバーの周知するところとなっています。
2月2日(日)の大中先生追悼コンサートの前日に「鮎の歌」と「コタンの歌」の楽譜を入手することができ、コンサート当日にメンバーに配布することができたことは、時間の短縮の上でもラッキーでした。
第24回定期演奏会は「湯山昭先生 米寿記念コンサート」と銘打ち、そのプログラムは
○「小さな目」
○「鮎の歌」
○「コタンの歌」
○アンコール「おはなしゆびさん」「あめふりくまのこ」「大漁」
という予定を立て、湯山先生にもお伝えしてあります。
「空ノート」の報告としては、今日は「コタンの歌」を紹介し、「船漕ぎ歌」と「マリモの歌」は全部のパートを全員で歌い通し、「臼搗き歌」はソプラノを歌って全曲を通す…というところまで漕ぎつけることができました。
ソプラノメンバーはソプラノパートを練習し、アルトメンバーはアルトパートを練習するという形はいっさいしない。今日からは、そもそもパートが決まっていない。全員で全てのパートを練習し、全員が音感を鍛えること目指します。だから今日は10回くらい
「今やっていることは『船漕ぎ歌』の練習ではありませんよ」「これは『マリモの歌』の練習じゃないからね」
と叫び続けました。では何の練習であったかと言うと、「合唱力を高める」トレーニングです。
P5の下の段を見てください。「ホーマイホー」という歌詞が4小節続きます。これが4回繰り返されます。この部分、完全平行になっていて、ソプラノとアルトは違う音のように見えますが(事実違う音ですが)実は高さが違うだけで同じ音です。ソプラノを半音ずつ下げて歌っていくと5回目にはアルトの音になります。逆にアルトの音を半音ずつ上げていくとソプラノの音になります。こういうことを知らずして音取りだけをやっていたら「合唱の力」は身に付きません。
P16とP20のメゾソプラノパートを見てください。♯ファと♯ソがブツカッています。このブツカリがいかに美しいか、これは片方だけの音取りをしていては味わえません。両方とも歌ってみて、それからみんなで不協和音を作ってみる…これをやることで初めて「不協和音の美しさ」を味わうことができます。
そんなこんな話を続けながら歌った「船漕ぎ歌」と「マリモの歌」は美しかった。生まれて初めて見る楽譜ですし参加者も多くはありませんから、声は小さくて細い感じです。ですが一番大切なことは正確な音程でハモらせることであり、少なくとも先生の耳にはキッチリと正確な音を捉えた響きが聞こえました。今日のメンバーは最高の大健闘でした。

「コタンの歌」。これは湯山先生の最高傑作です。2012年にウィーンで行われた演奏会でも歌われています。ベートーヴェンの代表作を1曲と言うなら「運命」でしょう。チャイコフスキーの代表作を1曲と言うなら「白鳥の湖」でしょう。メンデルスゾーンなら「結婚行進曲」でしょうね。
湯山昭の代表作を1曲と言うなら「コタンの歌」です。残念ながら「あめふりくまのこ」ではありません。ウソだと思ったらWikipediaでも何でも調べてみてください。これまでの「空」の演奏会プログラムの湯山先生プロフィールでも良いです。大中先生追悼コンサートのプログラムでも東海メールクワイアーのページに「コタンの歌」の名前が上がっています。
では、なぜ湯山先生に音楽監督まで依頼しながら、今まで「コタンの歌」を取り上げなかったかと言うと、ひとえに「コタンの歌」が混声合唱であるからです。混声合唱の曲を作曲者自らが女声合唱や男声合唱に編曲することは多くの事例があります。みんなの身近では大中先生で、「いぬのおまわりさん」は追悼コンサートで歌った混声合唱がオリジナルコーラスですが、みんなが持っているオレンジ楽譜には少年少女のための編曲が載っていて、これは大中先生自らがアレンジしてくださったものです。
しかし「コタンの歌」は男声合唱や女声合唱にアレンジすることは不可能です。あくまでも混声合唱。このように他の合唱形態にアレンジすることが不可能な曲はいくつかあり、新実徳英先生の混声合唱組曲「幼年連祈」などは日本中の女声合唱団や男声合唱団が「編曲してください」と作曲者に声を上げたのにもかかわらず、新実先生は絶対に編曲をしないのです。「なぜですか?」とタクシーの中で新実先生にお尋ねしたら、「女声合唱の音と男声合唱の音が両方とも必要であり、僕の頭の中では『幼年連祈』の音を男声あるいは女声だけに限定して作り直すことは不可能なのです」というお答えが返ってきました。「コタンの歌」に対する湯山先生のお答えも同じだと思います。
ゆえに合唱団「空」のメンバーとは「コタンの歌」抜きで生きていこうと思っていたのです。それで20年以上が過ぎ去りました。
しかし、今の「空」のメンバーの力は過去最高のレベルにあります。そして11月9日に東海メールクワイアーの都築会長と鈴木副会長が、みんなの「わたりどり」を聴いてくださいました。その後、大中先生の混声合唱を響かせる「空」の歌声を東海メールクワイアーのメンバー全員が聴いているわけです。これが大きかった。
「コタンの歌」を歌うために絶対に必要な男声合唱パートを、東海メールクワイアーが全員で受け持ってくださるということが1月12日の東海メール役員会で決議されました。
東海メールクワイアーには第5回定期演奏会で「ビリーブ」、第19回定期演奏会で「フォスター名曲集」に賛助出演していただいています。ですが第5回定期演奏会は少年少女合唱と男声合唱のステージは単独で、アンコール1曲だけの混声合同でした。第19回は完全に混声合唱ステージで5曲を歌いましたが、「メールが全員来ると「空」の声が消し飛んでしまう」と言って12人のメンバーだけにジョイントしてもらいました。
今の「空」なら消し飛ばされたりしない。むしろ東海メールクワイアーを吹っ飛ばすくらいの「力」があると思います。
今回の第24回定期演奏会は東海メールクワイアー全員とのジョイントです。嶋田先生は自信があるのです。今の「空」の力なら(もちろんこれからトレーニングを積み重ねていくことが前提ですが)東海メールクワイアー全員が来ても対抗できるだけの声を作ることが可能です。
そして「今しか無い」という時の采配もありました。湯山先生は9月に米寿(88才)を迎えられます。3年後とか5年後とか言ってノンビリと計画しているヒマはないのです。88才という年齢を考えれば、名古屋にお迎えすることができるのは時間的に限られてきます。
そんなわけで今年の第24回定期演奏会は「湯山先生米寿記念」「合唱団「空」創立25周年記念」「『コタンの歌』作曲50周年記念」というコンセプトで動き出しました。
嶋田先生としては、死ぬまで絶対に「空」とは歌えないだろうと思っていた「コタンの歌」の実現です。それも今や日本一のアマチュア男声合唱団と評される東海メールクワイアーを迎えてです。今日の練習はそのスタート。冒頭の2曲を1時間足らずで全員が全部のパートを歌い通して、さらに1曲をメロディーだけとは言え歌い通した効率に脱帽。本当に感謝しています。

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