SORA NOTE

嶋田先生から空のみんなへ


大中先生コンサート合同練習①

【12月21日(土)】
今日は午後から東海メールクワイアーをはじめとする大人の合唱団との合同リハーサルがあります。だから午前中の練習は、午後の合同リハーサルに備えた練習プラス「うたにつばさがあれば」「月のうさぎ」が目標でした。

男子メンバーに話を聞くと、どうやら混声合唱となる合同演奏はアルトではなくテノールでチャレンジしようという希望を持っているようです。全員で全てのパートを歌うという「空」独自の練習方法(これは練習ではなく一人一人の合唱力を高めるためのトレーニングです)は変わりませんから、いつもならソプラノとアルトだけですが今日はテノールを加えて、ソプラノ、アルト、テノールを全員で歌う(歌ってみる)という画期的な練習となりました。
日本に少年少女合唱団あまたある中で、テノール(アルトの下の音域)まで歌う(歌ってみる)などというトンデモナイ練習をしている合唱団は「空」だけだと思います。
普通の指導者なら、その子が歌う予定のパートをその子にいかに覚えてもらうか…に神経を集中します。嶋田先生は普通ではないので、その子が歌わないパートも全部体験してもらうことによってその子がまず力を付けることに神経を集中します。合唱力が育っていない子に「合唱をしろ」と言うのは無理な注文です。合唱をしてほしかったら、まずは合唱力を高めてあげようと考えるのが指導者です。野球をしてほしかったら、まずは投げる、走る、打つ、捕るという力を、子供たちが高めるようにしなくてはなりません。そういう練習を軽視してユニホームの取り合いをさせていたってダメなのです。それは時間のムダ、努力の浪費です。
テノールパートを歌ってみることによって得られる効果はたくさんあります。第一は低音を響かせる練習になることです。少年少女合唱団の場合、優秀なアルトを育てることは実は非常に難しく、それは作曲家の先生たちも分かっていて、だから日本の少年少女合唱の曲はピアノ伴奏付きの曲がとっても多いのです。ピアノ伴奏は音を支えることが大きな役割ですが、それは言葉を返せば音を支える必要があるということであり、その支えるべき音の根元は低音にあります。少年少女や女声合唱の場合はソプラノとアルトだけなので基本的には低音が足りない。
本当に低音が響き始めると「ピアノが不必要になる」とまでは言いませんが、少なくともピアノに頼らない「ハーモニーの力」が付きます。その力がある上にピアノが加われば鬼に金棒という話になるわけです。
第二は、あらかじめテノールを歌っておくことで、実際に男声の響きを聴いた時にテノールがよく聴こえるようになる。普通なら「おじさんたちが低い声で歌ってるゥ」くらいの子で終わりでしょう、子供の合唱団が男声合唱とジョイントする場合。でも実際に(上手でなくても良いから)自分の身体で歌っておけば、その音が必然的に聴こえるようになる。今日の午後の合同リハーサルで男声と合わせてみて、「テノールの音の動きが良く聴こえた」と思っている子がいたとしたら、それは相手の音を「聴く力」です。その力があることで合唱は何倍も何十倍も楽しくなるのです。ナットクしてくれたメンバーもいるのではないでしょうか。
さすがにテノールの下のバスまで歌ってみることは不可能です。それはメスライオンに「タテガミを生やせ」と言うに等しい無理難題です。ですがアルトよりも高い声をテノールが歌うことはよくあることで、今回の曲目では「じゃあね」にアルトとテノールが全く同じ音程を歌うフレーズも出てきますよね。「秋の女よ」ではP17の上段「古城の道を」でテノールがアルトより高い音を歌っています。
ようするに大切なのは「曲を歌えるようにする」ことよりも前に「合唱の力を高める」ことを考えるべきだということです。午前中の練習は、曲の歌い方について言及することはほとんどなく、ひたすら全てのパート(バスを除く)を実際に歌ってみて「聴く力を高める」ことに終始しました。
それでも30分の時間が余りました。すごい効率です。2時間弱で合同の混声合唱は終わってしまった。で、「月のうさぎ」と「うたにつばさがあれば」を1回通して歌うことができました。「あめとひまわり」は冒頭の部分のハーモニーを確認(かなりハイレベルな水準で)することができたことを報告しておきます。

午後、会場を高蔵小学校の体育館に移して、総勢200人の合同リハーサルです。期待していた男声メンバーの集まりが少なく、東海メールクワイアーの中嶌さんは「みんなにハッパをかけんとイカンわ」とカンカンに怒っていました。でも集まっていた男声メンバーは精鋭・強力な人たちで、なかなか美しいハーモニーをみんなに聞かせてくださいました。
驚いたのは女声合唱団の出席率で、ほぼ全員が集まったと思われる充実したシフトでした。
最初に「空」だけで「わたりどり」を歌って聴いていただきました。これは嶋田先生の作戦でありまして何日も前から決めていました。「空」だけで歌ったハーモニーを聴いてもらって、そのハーモニーを生かすように大人がフワッと乗っかってくれれば最高のスタートが切れます。案の定、聴いておられる大人たちの目つきが変わりました。音楽の流れを止めることなく大人が乗っかってきます。最高の響き、最高のスタートを切ることができました。「空」のメンバーに大拍手です。
「わたりどり」「海の若者」「秋の女よ」「草原の別れ」の4曲を、1パートずつ歌わせていきました。歌っていないパートのメンバーには「絶対に聴いていてください。そして聴きながら、自分のパートを頭の中で鳴らしていてください。そのように聴いてください」とお願いしました。
「空」のメンバーを含めて練習会場に集まった全員が、全てのパートを聴くことができました。最初はアヤフヤだったテノールやバスも2回目にはキチンと正しい音で歌えるようになる場面が何度もありました。相手のパートを「聴く力」がいかに大切か、そしてこのトレーニングが大人にも通用する(必要な)方法であることを「空」のメンバーに分かってもらうことができたと思います。
「空」のメンバーに分かってほしいことは、アヤフヤだったテノールやバスの男声が1回目にはアヤフヤでも2回目にはキチンと音をハメたことです。おじさんたちは仕事で忙しくて十分な事前練習ができなかった人もいるはずですが、1回目で「あぶない」と思った部分を2回目ではキッチリ修正する力を持っているのです。これが嶋田先生の言う「合唱力」です。
それからイメージの大切さ。これまで3週連続で「空ノート」に書いてきたイメージを大人に伝えました。みんな合唱を愛して何十年という方々です。うなずきながら嶋田先生の話を聞いてくださるメンバーがたくさんいて嬉しかったです。
「いぬのおまわりさん」と「サッちゃん」を楽しく歌った後、「じゃあね」のソロは大橋多美子先生。後ろで歌っておられたので、みんなは歌っている姿を見ることはできませんでしたが、何というデリケートな歌であったことか。さすがに東海地方屈指の名歌手です。嶋田先生は大橋先生のソロを殺さないように、合唱団の声の圧力をコントロールするので精一杯でした。ソロの「じゃあね」と直後のコーラスの「じゃあね」という掛け合いは究極の表現と言っても良く、デリケートな上にもデリケートに歌わなくてはならないことが判明しました。次回1月18日(土)に向けた課題ですね。

終了後、コンサートの実行委員会の打ち合わせに行ってきました。様々なことが決まりましたが「空」に関係する内容については役員会の各々の担当にお伝えします。
打ち合わせ終了後、東海メールクワイアーの都築会長と鈴木副会長から、思いもよらない言葉をいただきました。
「今日の女声パートは「空」の声しか聴こえんかった」
嶋田先生は思わず「えっ、そんなにウルサく歌っていましたか?」と聞きました。すると
「よく練習していて、よくトレーニングされているので、声がよく通るんだよ」
とのお答えが返ってきました。
女声合唱団の皆さんも精一杯の表現で歌っておられたことを断言できますが、その中で「空」の響きがよく聴こえたとつぶやいておられたことを、最大限の誇りと拍手をもって報告しておきます。
みんな、ありがとう。

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