SORA NOTE

嶋田先生から空のみんなへ


いかに不気味な、いやらしい、恨みを込めた、
激しく陰鬱な表現と声を作るか

今日は、すごい効率で練習が進みました。
まずは、発声練習という名目で(?)「鮎の歌」の5曲目の「鮎の歌」に取り組みました。発声練習というのは要するに眠った体を覚醒させ、喉の血管の血流を多くして、声を出しやすくするため、声のコントロールを自在にできるようにするための練習です。いわば、ウォーミングアップ。
高い声や低い声を出せるようにする、あるいは声の響きを良くするといったことは、ヴォイス・トレーニングというものであって、発声練習とは全く次元の異なるものです。
発声練習というのは、すごく簡単に言えば、要するに大声で歌えば良いわけです。小さい声では体が目覚めませんからダメです。
「空」の場合、この発声練習と音取りの練習とを、同時にこなしています。音取りをしながら大声で歌って、しかも今日は他のパートの音も全員が全部さらいましたから、和音の練習にもなっており、一石二鳥ではない一石三鳥の練習でした。
他のパートも全部さらったというのは、「鮎の歌」を8小節ごとのフレーズに分けて、全員で1回目はソプラノ、2回目はメゾソプラノ、3回目はアルトを歌い、間髪を入れずに4回目は自分のパートを歌うという方法です。つまり1フレーズを4回歌うことになり、そのうち2回は自分のパートを歌い、あとの2回は自分以外のパートを歌うことになります。
この方法、4倍の時間がかかるだろうと思うのはシロウトです。全部のパートを歌いながら自分のパートを理解するわけなので、自分のパートだけしか知らない(パート練習とか称して別の部屋で音を取ったりする)方法などよりも3倍の力が付きます。時間的な効率も大切ですが、実力が付くことの方がもっと大切です。
その証拠に、「鮎の歌」は本年度、初めての練習であった(つまり全員が初めて歌う機会であった)のにも関わらず、たったの50分で最初から最後まで通してしまうことができました。1回歌うのに5分かかる「鮎の歌」ですから、10回分の時間で、ほぼ完全に音を取ることができたわけです。力が付いてきた証拠です。
反省は、今日も二人来てくれた見学者(二人とも4年生)にとって、あまりにも目まぐるしく進む練習であったかな…と思っています。でも、二人とも、みんなの中に入って、初見にも関わらず、がんばって歌ってくれていました。期待しましょう。
次に「雲」。6月の愛知県合唱連盟合唱祭で歌う曲ですので、さらっておきたい曲です。冒頭の「おばけのようですね」から61小節目の「けものの雲」まで、いかに不気味な、いやらしい、恨みを込めた、激しく陰鬱な表現と声を作るか、そこに指示を集中させました。みんな、かなり理解してくれているようで、そうしようという意欲をビンビンと感じます。「空」はしかし、どういうわけか伝統的に最大の武器が柔らかく響く声なので、こういう表現は苦手です。でも、手ごたえを感じました。6月には、十分に間に合うと思います。
64小節目の「そこを今」からは、逆に「空」の十八番。いかに柔らかく美しく歌うかという部分です。戦死した兵隊や殺された人々が神に救済されて、天国への架け橋の虹を昇っていくわけです。これも、手ごたえを感じます。
感じますが、今の段階では粗削りです。本当に良くがんばっていますが粗削りです。これは、みんなの責任ではない。投入した時間があまりにも短いから、細かい部分の整理整頓ができていないのです。それを調整するのが指揮者の責任であるわけです。逆に言えば、これほど短い時間で、これほどの響きと表現に達する今の状態を、とても誇らかに思います。

後半は浜田先生が外せない仕事のために抜けたので、ピアノなしで「雨の遊園地」に取り組みました。半音(たとえばミとファ)や全音(たとえばドとレ)でぶつかる部分が多く、しかもそれが非常に効果的に作曲されています。バーンと歌い飛ばすだけなら、その不協和音については説明も実感も抜きに進めることもできますが、その不協和音の美しさを知っていて歌うのと知らないで歌うのとでは大きな開きが出てくると考えます。
しかし、かなり説明的な、理屈っぽい練習になりましたので、ツマラナイと感じた子がいたかと思います。(自分で指導していて理屈っぽいなと感じていました。深謝)
しかし、音取りは確かです。なので、思い切って各パートから一人ずつ選手を出して、三人で重唱するという練習に切り替えてみました。時々ハッとする美しい響きが聞こえてきて、良かったと思います。また、やりましょうね。
ただ、残り時間の関係で、全員に重唱する機会を与えることができなかったことも反省しています。

(1) 今日の練習は楽しかったですか?   3・67ポイント
(2) 今日、「自分は上手になった」と思ったり「すこし進歩した」と感じたりしたことがありましたか?   3・00ポイント

理屈っぽいな…と感じていたとおり、進歩の実感に問題がありました。もっと直接的に、歌そのもの表現そのものを通して、みんなにアプローチしていきたいと思います。

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