SORA NOTE

嶋田先生から空のみんなへ


フレーズを大切に

【令和3年10月30日(土)】
明日は新実先生をお迎えするという直前の土曜日。本来は明日は本番の予定でしたのでフェールマミは午前午後を予約してあったわけで、だから予定どおりの午前午後練習。
午前は9:30~12:00の2時間30分。午後は1:10~4:00までの3時間。合計5時間30分を歌い通しました。嶋田先生は午前中からヘロヘロで身体を休めながらでしたが、若いメンバーは頑張りとおしました。大感謝です。
歌った曲は「白いうた青いうた」を18曲+「やさしい魚」の5曲で合計23曲。平均すると1曲に約15分。たいしたものですね。すごく密度の濃い時間が流れました。

23曲に共通することは「フレーズを大切にする」ということです。
曲集「われもこう」にはV(ブレス・息つぎ)の記号がほとんどありません。「薔薇のゆくえ」「忘れ雪」「火の粉」「なぎさ道」には1カ所もVがなく、やっと5曲目の「とげのささやき」は1カ所だけ(35小節目の後)にあります。これは2番のスタートを分かりやすくするためのVです。
6曲目の「われもこう」にVは1カ所もなく、「就職」は33小節目の前と77小節目の前に2カ所だけVがあります。33小節目の「砂漠の木になりたい」が曲の山で、ここに最高のエネルギーを持っていくためのブレスであり、77小節目からは後奏なのでブレスが付いています。理由がハッキリしている。そして最後の「卒業」のVは73小節目の前の1カ所だけです。これもクレシェンドしてからのフォルテをエネルギッシュに保つためです。
8曲も載っている曲集の全体を通して見てもVは4つしかありません。おどろいたかぃ?
いったいどこでブレスすりゃいいのさ。
答えはカンタン。フレーズのまとまりごとにブレスするわけです。どの曲の、どの部分でブレスするのか、それをイチイチ確認して練習しても、そんなことを全部覚えられるはずがありません。だから法則性を理解すれば良いのです。曲集「われもこう」だけではなくて「ぼくは雲雀」も「やさしい魚」も全部に共通する法則性があります。

最初に歌った「薔薇のゆくえ」が分かりやすいので、楽譜を開いて確認してください。Vは1カ所もありません。
「フレーズを大切にする」ということは、カンタンに言えば8小節のまとまりを感じて歌う…ということです(もちろん部分的に例外はありますが)。
「薔薇は運命(さだめ)知り風と出かけた」これで8小節になります。そして「町も村もない石の荒れ野で」で8小節。「薔薇は形溶け歌になったよ」で8小節。音楽の流れも8小節で一区切りになっていることは「空」のメンバーならすぐに分かるはずです。このフレーズのまとまりごとにブレスをする。カンタンに言えばこうなります。
分かりやすく他の曲でも例をあげておきます。
「忘れ雪」は「あでやかに雪降り積む 楡の木は人の姿」で8小節の1フレーズ。
「火の粉」は「この世の片隅 焚火が弾けます」で8小節の1フレーズ。
「なぎさ道」は「濡れた訳 教えましょ 薄い虹が消える時」で8小節の1フレーズ。
どうですか?見事なくらい、言葉のまとまりと音楽の流れとが一致しているでしょ?
全部の曲を書いていたらみんなも読む気がなくなるでしょうから、あと3曲だけ。
「卒業」なら「紙飛行機 芝生で飛ばしたら 折りたたむ悲しみが開いた」で8小節の1フレーズ。
「ぼくは雲雀」なら「英語は苦手さ数学キライだ頭は帽子をのせるため」で8小節の1フレーズ。
「鳥が」なら「鳥が空を見上げるように花がつぼみをほどく」で8小節の1フレーズ。
ホントに見事に言葉のまとまりと音楽の流れとが一致していますね。
他の曲も全て、このフレーズを大切にすれば、自動的に8小節を一息で歌うことになります。これが基本。このことを知っているのと知らないのでは月とスッポン、天と地ほどの違いになります。

もちろんこれは原則でありまして、8小節を続けて歌うことは苦しいことです。無理して歌い続けると酸素が足りなくなってエクモを付けなきゃならなくなる(そりゃコロナの重症患者だよ)かもしれない。
どうしても苦しくなったら4小節目でカンニングブレスをしましょう。あるいは「うわっ、このまま続けると6小節目か7小節目あたりで息が切れてしまう」と思ったら4小節目でカンニングブレスをしましょう。

このような場合、30人のメンバーを4人くらいの7つのグループに分けて、Aグループは1小節目でブレス、Bグループは2小節目でブレス、以下Gグループは7小節目でブレスする…と決めるという方法があります。
しかし新実先生の音楽は明らかに8小節でまとまっており、これを1小節+7小節とか2小節+6小節などに分けてカンニングすることは有り得ません。そんなことをするとメロディーのまとまり(つまりフレーズ)が崩れてしまいます。
同時に谷川雁さんも見事なくらい8小節でまとまるように詩を作っておられます。3小節+5小節などでカンニングしたら「薔薇は運命(さだめ)」「知り風と出かけた」となって、これも有り得ません。
カンニングするのなら4小節+4小節で「薔薇は運命(さだめ)知り」「風と出かけた」にするべきです。ナットクしてもらえるかな?
まとめると
◯基本は8小節を歌い切る
◯苦しくなったら4小節+4小節でブレスする

となります。これは全ての曲に共通する大原則です。ウソだと思ったら楽譜を開いて「そうなっていない部分」を探してみてください。

あと、歌詞のイメージについて「嶋田先生のイメージ」を押し付けました。押し付けた…と書くのは、恒川先生の指摘にあったとおり、「そりゃぁ違うよ」というイメージがあるからです。「空」のメンバーも(いかに子どもとは言え)嶋田先生のイメージが全部正しいなどとは思っていないでしょう。
勉強不足を言い訳するようですが、嶋田先生みたいにオオゲサでゆがんだイメージでも良いので「自分なりのイメージ」を持っている子になってほしいのです。
これまでのソラノートにもいっぱい書きましたが、その嶋田先生の「ゆがんだイメージ」を土台にして、「そりゃぁ違うだろう」と思う部分をいっぱい発見して、その部分を自分なりに修正してください。その修正を発表する必要はありません。また多くのメンバーのイメージが一つの「絵」としてまとまる必要もありません。
大切なことは「自分のイメージ」を持っていることです。「自分のイメージ」を持っている子の音楽は本物になります。逆に「自分のイメージ」を持っていない子の音楽は、ただ命令されて歌っているだけの音楽になってしまいます。
なぜそれが言い切れるのかというとねぇ…

それはねぇ、嶋田先生は50年近く合唱を続けてきましたが、これまでに何度か、作曲家自身の指導と指揮によって、自分のイメージがガラガラと崩れさって全く新しいイメージが生まれ出る喜びと幸せを感じることがあったからです。
その「喜び」と「幸せ」を、みんなも同じように感じてくれるといいなぁ。明日がそんな日になってくれたらいいなぁ。と本気の本気で心の底から願っています。

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