SORA NOTE

嶋田先生から空のみんなへ


本番みたいな響き

【令和3年10月31日(日)】
「本当ですか。それにしてはよく歌えていましたね」
と新実先生はおっしゃいました。練習が終わって名古屋駅までお送りした時に、
「練習を再開してから「白いうた青いうた」に掛かりっきりで「やさしい魚」は再開直後の10月2日と昨日の30日に2回歌っただけなんですよぅ…」そう白状した時のことです。

やっと新実先生をお迎えすることができました。重なる演奏会延期や練習中断を乗り越えて、ここまで辿り着くことができたのはメンバーの努力とガンバリのおかげです。大感謝です。

9時58分。その新実先生がステージに上がられて開口一番
「では、「やさしい魚」から始めましょうか」
とおっしゃいました。
これには嶋田先生もビックリ!
ありゃりゃりゃ?予定では…たしか…。
どうしよう…。「予定はこうでしたよね?」と新実先生に言おうかなあ…
などと考えている間に「感傷的な唄」の前奏ピアノが始まってしまった。
えーぃ!こうなったら破れかぶれだぁ!と半分ヤケクソの覚悟を決めてみんなの歌声を聴いていました。
出てきた声は本当に「遠くから」「凍ったような」「不思議な感じで」歌われました。
「風が吹くから 生きよう そう思う前に もう足が駈け出していた」
この歌い出しにピッタリの表現でした。不安げで、不安定な、命が生まれる前の暗闇から響いてくる感じ…。
実はこの不安そうな不安定な声は、練習不足の「空」のメンバーが本当に不安に思っていて、同時に7拍子という変則の拍子に上手く乗り切れない不安定さの賜物(たまもの)でした。実際に10月の練習をやった嶋田先生は全て分かっていたのですが、結果的には「感傷的な唄」の歌い出しにピッタリの声でした(笑)。
何度か新実先生からの指導を受けて、指揮をよく見て出だしを合わせ、ピアノの音を聴いて出だしを合わせ、出だしのタイミングがそろってきます。
嶋田先生はアルトに入って少しでも助けようと思いましたが、男子メンバーのようなカウンターファルセットが上手く出せません。嶋田先生が助けに入ることで逆に「空」の響きが壊れてしまう。そう思ってすぐに止めました。
嶋田先生が入ると壊れる。そういう響きになってきました。ヘタクソな合唱団だったら嶋田先生が入ってガンガン歌っても大丈夫だったと思いますが、それをストップさせる繊細な響きが生まれていました。
特に「美しい歌だけが聞こえてくる」という部分のfは美しかった。直後の「そんな祈りが…」のpも本当に「そうあってほしい」と思っているような響きでした。
以下、午前中に「鳥が」までを歌い、午後からもう一度「鳥が」と「やさしい魚」。「天使」や「やさしい魚」は嶋田先生の練習でも通して歌ったことが数回しかなくて、本当にどうなることかと思っていましたが、よく指揮に集中して表現してくれました。
これはリモート練習の成果だと確信しています。音源を作ってシステムを作ってくれた恒川さんとHP担当のSさんに感謝しなくてはなりません。
そしてメンバーも、リモートの画面に入るように歌声データを送った人はもちろん、歌声データを送らなかった人も一度や二度は恒川さんの参考音源に合わせて練習をしてくれたことと思います。完成した画面ではなく、その「合わせて歌った自主練習」が成果を現した…ということです。
そうとしか考えられないような曲集「やさしい魚」の歌声でした。だって10月9日と10月16日には一回も練習しなくて歌ってないんだよ。
客席の後ろに行って聴いてみましたが、本番みたいなハーモニーでした。

午後2時。いよいよ「白いうた青いうた」に入ります。ここでも嶋田先生は何度かアルトに入っていっしょに歌おうとしましたが、自分の声がみんなの響きにマイナスになると判断して止めました。定期演奏会の本番で何度もアルトに入って歌ってきた嶋田先生が、練習なのに「入れなかった」ということです。そういう響きでした。
そのかわり、新実先生からの指示をいっぱいメモしました。総理大臣のノートじゃないけれど、このメモを次の練習から生かしていこうと思います。
しかし、そんなメモよりも、みんなの心の中に残っている音の方が役に立ちます。非常に貴重な経験でした。新実先生の具体的な言葉や細かい指示は覚えていられないでしょうが(そこはメモでカバーします)、みんなの心の中に残っている「響き」や「表現」は大きな財産であり、次の「新しい表現」を膨らませていく原動力になります。忘れないでいてください。

あと二つ。紹介しておきます。

新実先生と名古屋駅近くで夕食をしながら聞いたのですが、新実先生はピアノを習ったことはないそうです。
本人が言ってました。
「カンタンに言えば独学ですか?」と念を押したら
「そうです。独学。習ったことはありません」

それからラインにも書きましたが、みんなへのメッセージです。

今日はとても良い練習ができました。
君たちが僕の指導に的確に反応することが分かって、とても嬉しく思いました。
必ず素晴らしい演奏になる…
そのように確信しました。
本番は暗譜ですよ。
言葉の中身と、音楽の中身を、お客さんに伝えましょう。
           新実徳英

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