SORA NOTE

嶋田先生から空のみんなへ


「聴く力」を高める講座⑤

【令和2年4月11日(土)】
昭和28年(1953年)に「ヴァイオリンとピアノのためのソナチネ」を発表し、作曲家としての地位を確立した湯山先生は、その後しばらくは歌曲や器楽曲の分野でその地位を不動のものにしていきました。そして10年後の昭和38年(1963年)に最初の合唱作品を発表しました。それが小学生の詩による合唱組曲「小さな目」だったのです。その前年(1962年)には「あめふりくまのこ」「おはながわらった」「おはなしゆびさん」「山のワルツ」など童謡の分野で今に歌い継がれる名作を矢継ぎ早に生み出していた作曲家が、初めて挑む合唱作品として小学生の詩に目を向けたのは必然的な流れだったと言っても良く、その芸術の方向性と未来を決定付けることであったと思われます。
以後、「葡萄の歌」(1966年)、「愛の河」(1973年)など女声合唱の名作を生み出すとともに、「四国のこども歌」(1968年)、「川と少年」(1972年)、「鮎の歌」(1972年)、「駿河のうた」(1974年)など児童合唱の分野で次々と傑作を生み出してこられました。
同じく童謡・こどものうたという分野で不朽の名作を残された大中恩先生が、混声合唱や女声合唱に比べて児童合唱の作品が少ないのに対して(嶋田の知る限り「生まれて生きて」と「うたにつばさがあれば」くらいしか思い浮かびません)、湯山先生は20に近い児童合唱組曲を世に問われました。それらの作品は日本の少年少女合唱の歴史そのものと言っても良く、湯山作品なくして日本の少年少女合唱の発展は無かったと考えられます。
その記念すべき第1作目「小さな目」を湯山先生の米寿記念コンサートから外すわけにはいきません。
そのピアノ伴奏は、「雉」や「わさび田」に見られるような描写的な部分は多くなく、10曲全体を見渡しても第2曲目「ちゅうしゃ」の1~2小節目(明らかに心臓がドキドキしている音です)、P13の1小節目(注射の針が腕に刺さった音と気を失いそうになった音)、第4曲目「ふうりん」の3~4小節目(明らかに風の音です)、5~10小節目(明らかに風鈴の音です)、第7曲目「べんとう」の1~4小節目(明らかに工事現場の機械の音です)、5小節目以降(おそらくはベルトコンベヤーの音)などが挙げられるのみで、あとは全体的な曲の気分を決める役割を担っています。
全体的な曲の気分とは、「おうちの人」の可愛くて楽しい感じ、「おとうちゃん」の元気でワンパクな感じ、「ママへ」のお茶目で甘えた感じ、「手紙」の悪戯(いたずら)っぽくフザケた感じ…などなど。このように音楽全体に漂う雰囲気をピアノ伴奏から聴き取ってください。

合唱団「空」が「小さな目」に取り組む場合、作曲者公認の「空ルール」があります。それを共通理解しておきましょう。共通理解してCDを聴くと非常に効果的・効率的だと思います。

【おうちの人】
○P4下段の「おさとう」はソプラノとメゾソプラノを含めて全員がアルトから歌ってください。
○P5上段2小節の「からし」も全員で。確認ですがアルト下は楽譜通り「からしーーー、からし」です。
○P5中断「いもうとはだれにでも」も全員で。
○P6「わたしはいじわるだから」も全員で。「こしょう」も全員でソプラノ上は楽譜通り1回だけ、アルト下は8回「こしょう」と歌います。
○P7下段~P8の「からし からし からし いもうとはだれにでも」はアルトの子もメゾソプラノを歌います。
○P8上段の「はり」はソプラノも歌う。つまりソプラノは「はり はりつく おもち」となります。
○P8下段の「わたしは」も全員。つまりソプラノは楽譜通り、アルトは「わたしは わたしは わたしはいじわる」となります。
○最後の「こしょう」はメゾソプラノの子はアルトからファー♭ラーと歌います。

【ちゅうしゃ】
基本的にコーラスパートが休符になっている部分を全部全員で歌って互いに助け合います。つまり
○Bの部分。
アルトは「ちゅうしゃをすると えきが えきが(メゾソプラノの音)」
メゾソプラノは「ちゅうしゃをすると(アルトの音) ちゅうしゃをすると えきが」
ソプラノは「ちゅうしゃをすると(アルトの音)ちゅうしゃを(メゾソプラノの音)ちゅうしゃをするとえきが」
○Cの部分
ソプラノとメゾソプラノは最初の(アルトの)ドボドボを歌って「ドボドボと えきが」となって後は楽譜通り。
アルトはしっかりと4回「ドボドボと」をお願いします。
○P11下段2小節目「かおじゅうに」は全員で。ソプラノとメゾソプラノは2回「かおじゅうに」と歌うことになります。
○P12上段の「ちが」はアルトも歌う。つまりアルトは「かおじゅうに血が 血が」と歌うことになります。
●Dの部分は今回初めて「しん」を全員で。つまりメゾソプラノは「しんしんぞうが」、アルトは「しんしんしんぞうが」と歌うこととしましょう。
○Eの部分もソプラノは休まずにメゾソプラノを歌いましょう。

これらの作業は湯山先生に「このように歌います」と前回お伝えしました。そして●のように歌うことで互いに良く聴き合って歌うという重要な「合唱力」が伸びるはずです。

【おとうちゃん】
〇P16下段「みんな」はアルトは休まずメゾソプラノを歌います。
○P17上段「くにおちゃんが」はソプラノとメゾソプラノは休まずアルトを歌います。
○P17下段「すこし」はソプラノは休まずメゾソプラノを歌います。
○最後の「口をモグモグさせながら」はソロの予定ですが全員歌えるようにしましょう。

【ママへ】
○冒頭の「ママ」は全員で。アルトは楽譜通り。メゾソプラノは2回、ソプラノは3回「ママ」と歌います。
○「みずえと きょうちゃんと」はソロの予定ですが全員歌えるようにしましょう。
○「おへんじかいて」は全員で歌います。

【手紙】
※Bのソプラノ・メゾソプラノの「こまつくんから」をアルトが歌うのは止め。楽譜通りに歌います。同じくCの「くちが」も楽譜通り。
○P23下段の「ぼくは」は全員で歌います。つまりメゾソプラノは2回、ソプラノは3回「ぼくは」と歌います。
○Eの「歯は歯は」はアルトもメゾソプラノを歌います。

【ふうりん】
この曲は全てのパートが完全に楽譜通りです。

では続きは次回に。皆々様の万全の感染予防対策を祈ります。

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