SORA NOTE

嶋田先生から空のみんなへ


新しい未来に向けて

【11月10日(土)】
すばらしい成果をあげた第22回定期演奏会。あの感動の日から、まだ6日しか経っていないのですね。あのような「黄金の時間」を生み出すために、また地道な練習がスタートします。
朝、音楽プラザに到着して「アレ?」って思った嶋田先生は、今日の練習がフェールマミだと知って嬉々として自転車を走らせました。「練習場所を間違えていた」ということを反省するよりも、フェールマミのグランドピアノが使えることの方が嬉しかったからです。
印刷してきた「白いうた青いうた」の楽譜のセットも父母会に任せて(これもメンバーにやってもらおうと思っていました。だから楽譜のセットに20分はロスタイムが必要だと覚悟していました)、すぐに発声練習に入ることができました。これは大きかった。
グランドピアノのふたを開け、声でピアノを響かせる発声練習を開始。これまでに何度も経験しているメンバーもいれば、この不思議な発声練習を初めて経験するメンバーもいます。
この練習方法は湯山先生にもお伝えしてあります。「空」のことを高く評価してくださる湯山先生は、「ふだんの練習は、どのように行っているのですか?」と何度も嶋田先生に質問されました。このグランドピアノの弦を鳴らす発声練習のことを説明すると、
「それは面白い方法です」
と驚かれ、以下ように続けられました。
「嶋田さん、そのトレーニング方法だけでなく、あなたが持っている少年少女合唱の子供たちを育てるノウハウを、本に書いて出版したらどうですか?私が出版社に、あなたの原稿を紹介しますよ」
本に書くかどうかはともかくとして、湯山先生ナットク済みの「空」伝統の発声練習方法です。
何度も何度も言ったのは、「大きい声と響く声とは違う」ということです。合唱に「大きい声」は必要ありません。合唱には「響く声」が必要なのです。声の大きさは耳で確かめることがカンタンにできますが、声の響きは「そのように意識しないと」なかなか分かりません。その「意識」を持っていく方向の一つとして「ピアノを鳴らせるかどうか」があるわけです。
今日は、その初歩の初歩、第一段階のレベル1に留めておきました。ですからピアノを鳴らせる子もいましたが、かすかにしか鳴らせなかった子もいます。今日はレベル1を20分やっただけですから使った音は「高いレ」です。この音だけを使って「響く声かどうか」「ピアノを鳴らせるかどうか」をやったわけです。
ですが人間は、というか合唱団員は、その骨格も筋肉の付き方も、身長も体重も全て一人一人違います。だから、もっと高い音(例えば高いファ)ならピアノを十分に鳴らすことのできる子がいたでしょうし、もっと低い音(例えば普通のミ)なら違う結果が出るはずです。今日、レベル1で「高いレ」を使ったのは、その音がどのパートにも必ず出てくる音であり、その頻度も非常に高い音域だからに過ぎません。
これから当分、フェールマミでの練習が続きますから、少しづつ少しづつ説明していきます。そして響く声への意識を高めていきましょう。

なんてことをやっているうちに、楽譜のセットが完了しました。まずは楽譜を見ないで「盲導犬S」のメロディーを歌ってもらいます。これはどういうことかというと、辻井伸行さんになろう…ということです。
辻井伸行さんは光を知りません。知っているのは「闇の中の音の美しさ」です。だから、いっさい楽譜に頼ることなく、ベートーヴェンだろうとチャイコフスキーだろうと、全ての楽曲の音を耳だけで掴み取り、それで世界一流のピアニストとして君臨しているわけです。「それは天才の仕業」「私たちには関係ない世界」とは思ってほしくない。同じ人間なのです。そして、音楽を愛する心は、みんなと同じです。単純なメロディーライン1本くらい耳だけで掴み取れなくてどうする?少なくとも、そう思ってください。できるできないはトモカクとして、音楽に必要な力は「目からの情報」ではなく「耳からの情報」を処理する力であることは間違いのないところです。
「盲導犬S」。なんとロマンティックなメロディーでしょう。このメロディーにどんな詩が付けられているか。想像しながら何度も何度もメロディーを歌いました。
そして楽譜を開きます。
「なぜ町みえない いつ景色きえたの」と歌い出すのは盲導犬のSです。そして、ご主人様を「見上げる」Sの「首すじ」が「いとおしくふるえ」ます。ご主人様の「うごかない眼に」Sが「曲がり角をおしえる」のです。ところが5行目に、すごい世界が展開します。
ご主人様と盲導犬Sは生まれる前の前世では二人とも人間だったのです。そして親友でした。その二人が前世では「太古の砂漠で旅をした」のです。その絆は、生まれ変わった今となっても「かわらぬきずな こころの赤」として結ばれている。
うわぉ~、ロマンティックだぜ。金子みすゞも良いけれど、まったく異なる方向から「人間の本質」を問う、みすゞとは対極の世界。金子みすゞが右手なら谷川雁は左手。方向は違いますが言っていることは同じです。
みんなはどう感じてくれたのかな?

それから合唱の力として大切なのは、すこしぐらい長いメロディーでも聴いて一回で覚えるということです。覚える…というより感覚として掴む…と言った方が的確かもしれません。
「ライオンとお茶を」は9ページ18段に及ぶソプラノの旋律を嶋田先生が歌うのを1回聴いただけで、すぐに歌ってもらいました。できるできる。ほぼ正確に歌えます。同じことをメゾソプラノの旋律で繰り返し、アルトの旋律で繰り返し、次は何とハーモニーを作って歌います。しかも、全員をA・B・Cの3グループに分けて、どのグループもソプラノ・メゾソプラノ・アルトを1回づつ歌ってもらってハーモニーを作りました。この方法論も本に書いてみようかな。つまり、メンバー全員が全てのパートを知っているという大切さです。相手が(つまり他のパートの人が)どんなふうに歌っているのかを知らずに自分のパートだけを歌っているなんて、そんなの合唱じゃありません。
「ライオンとお茶を」、いかがでしたか?面白い音楽ですよね。

休憩の後は「鳥が」を歌いました。と言っても今日の「空ノート」は、今日配った初めて見る楽譜の話ばかりですから、学芸会や展覧会などで欠席を余儀なくされていたメンバーには何のことかサッパリ分からないでしょうね。ゴメンナサイ。
「鳥が」は嶋田先生の40年以上の合唱経験の中でも、全世界の子どもたちに最も知ってもらいたい曲です。この曲を知らずに、あるいはこの曲を歌うことなくして死んでしまうなんて(それはその人の好みであり自由ですが)もったいない。
メロディーの美しさから考えると古今東西のベストワンはシューベルトで、おそらくはメンデルスゾーンが第2位でしょう。湯山先生も間違いなくベストテンにランクインすると思います。あとはフォスター、ショパン、チャイコフスキー、そしてリチャード・ロジャースなどがベストテン候補となるでしょう(文責・嶋田)。
新実徳英先生はメッチャクチャ難しいメロディーか、ものすごく簡単で美しいメロディーか、その二つの世界をお持ちで中間はありません(そのメッチャクチャ難しい曲も、いずれCDを配って参考までに聴いてもらおうと思っています)。
その新実先生の美しいメロディーの中でも「鳥が」は最高ランクで、世界に問いかけても上位に入ることと思います。そのメロディーを歌った。いやぁ楽しかった。「ライオンとお茶を」でもそうですが、教えたことをすぐに実行してくれるメンバーに脱帽です。「鳥が」のメロディーを久しぶりに歌えて、嶋田先生は幸せでした。

次週、17日(土)は嶋田先生も展覧会で学校があり欠席です。恒川さんも同じく学校行事。小学生メンバーの何人かも学校があります。苦しい練習になることと思いますが、浜田先生と高倉先生にお願いをしておきました。「白いうた青いうた」の続きをお願いします。全部で10曲ありますが、とにかくメロディーラインが大切です。ハーモニーを作っても良いですが、メロディーラインを掴んでいない状態でハモっても時間のムダになります。新実先生の音楽はそういう世界なのです。
ベテランメンバーは、どうか浜田先生・高倉先生に協力して、助けてあげてください。よろしくお願いいたします。

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