SORA NOTE

嶋田先生から空のみんなへ


転調 「きよしこの夜」から「うなぎの子守唄」

今日は「転調」ということを考えて練習会場に向かっていました。転調とは、例えばハ長調をニ長調にすることで、湯山先生の曲には多く出てきます。「ハ長調をニ長調にすることで」なんて書いても、小学生に分かるコトバではありませんよね。言い方を変えれば、「1音高い音で歌う」ということです。別に「1音高く」に限った話ではなく、「半音高く」「1音低く」「半音低く」して歌うということも転調です。

いきなり長々と書いたけど、ようするに「音が分かっていないとできない芸当」です。「かえるの合唱」(小学校2年生の教科書)で言えば、「ドレミファミレド」と歌うところを1音上げると「レミ♯ファソ♯ファミレ」になります。と言うことは、「ド」から「レ」へ正確にジャンプする必要があります。

先週書きました。「ドからレの音を取るのは今の「空」のメンバーなら大丈夫だろう」と。しかし、実際に歌う中でそれをビシッと決めるのは簡単ではありません。それをやろうと思っていました。

ですが、あわてません。まずは「いぬのおまわりさん」と「バナナを食べる時のうた」です。「いぬのおまわりさん」は音程を、「バナナを食べる時のうた」はラテン音楽のリズムを注意しました。特に「いぬのおまわりさん」ですが、この曲は幼稚園の子が歌うように作られていると思われがちなのですが、実はプロの歌手が歌うことを想定して作られている…ということを言いました。

大中先生の特徴なのです。「いぬのおまわりさん」をはじめ、「おなかのへるうた」「サッちゃん」「ドロップスのうた」など、いかにも子どもが歌うために作曲されたようなイメージが日本中にあると思います。実はそうではなく、これらは全てプロの「歌のおねえさん」が歌うために作られた曲なのです。だから、テキトウに気楽に歌うことは幼稚園児でもできますが、キチッと音程を決めて聴く人が楽しめるように歌うことはプロの領域です。

ここが大中先生の素晴らしいところで、「いぬのおまわりさん」「おなかのへるうた」「サッちゃん」「ドロップスのうた」などの「こどものうた」は幼稚園児が歌う歌ではなく、幼稚園児が聴く歌なのです。だから作曲されて50年を経ても日本中で親しまれているのです。そして、これらの歌によってどれほどの子どもたちの心が豊かに育ったことか、その価値は計り知れません。

大中先生は、あるCDの作曲者の言葉として、次のように記されています。「私が一番好きなのは混声合唱で、二番目が男声合唱。次が女声合唱で、少年少女合唱にはあまり興味がありません」

その大中先生が指導され指揮をされた少年少女合唱団が日本に一つだけあります。それが合唱団「空」なのです。

現役のメンバーで大中先生の直接指導を受けた子はいませんが、大中先生の「空」に対する「思い」は伝えていきたい。大中先生の曲を歌う時は、楽しく生き生きと。そして音程です。

「うたにつばさがあれば」は、たいしたものだと思います。1~4曲目までを通しましたが、今日が3回目の練習とは思えない豊かな響きが生まれました。むしろ「いぬのおまわりさん」と「バナナを食べる時のうた」の方がよっぽど心配です(笑)。

ここまでで休憩。再開したのが11時。ここからが本題です。

「きよしこの夜」を歌います。ハ長調で書いてあります。右側のページのハミングが終わった後1音上げて、もう一度左側のメロディーに戻るように指示しました。つまり、ハ長調からニ長調への転調です。

右側のページの終結音はドミソドです。ここからラを取って「ソーラソーミー」ではなく「ラーシラー♯ファー」と歌いなさい…という指示でした。

すごく丁寧に書けば、ソプラノは「髙いド」から、メゾソプラノ上は「ソ」から、メゾソプラノしたは「ミ」から、アルトは「ド」から、それぞれ「ラ」の音を一瞬で取らなければならない。そういう指示です。

愉快でしたねぇ。これが一発で決まるのですから。できなければどうするか、いろいろと作戦を考えていたのですが、その作戦はムダになりました。考えていた作戦をムダにさせてくれることを本当に嬉しく思います。

というわけで、「きよしこの夜」の本番は3回歌います。1回目は楽譜どおりのハ長調。2回目は転調してニ長調です。3回目はニ長調のまま、全員でメロディーを歌って終わりです。カッコいいですね~。

ここで11時30分。ここからが本当の今日のねらいです。

湯山先生の「駿河のうた」から4曲目「うなぎの子守唄」です。この曲は1番から2番・3番と、半音ずつ転調していきます。この転調をやりたかったから、「きよしこの夜」を練習したのです。

驚いたことに、この転調が全て上手くいきました。しかも各パートが自分のパートの音を歌っている状態での転調です。

(実際に来年の第22回定期演奏会で歌うパートが、今のパートとは限りませんけれども)

嶋田先生と恒川さんと高倉さんで、ソプラノ・メゾソプラノ・アルトの各パートを全部歌って聞かせました。それを全員で1回ずつ歌って、それで自分のパートだけではなく、全部のパートを理解してハーモニーを作ることができました。

転調の力もさることながら、音取りの集中力の高さを実感することのできる時間でした。いやぁ、素晴らしい時間でしたねぇ。

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