SORA NOTE

嶋田先生から空のみんなへ


ふれあい合宿2日目
何かが伝わる,何かを伝えられる,何かを伝えようとする
そんな合唱団になってほしい

合宿2日目。午前中は「東北の讃歌」の続き。「南部うまっこ唄」からスタート。この曲は「勢い」が大事。テンポに遅れないようにして,躍動感をもって歌わなくてはなりません。歌詞に自信がないと瞬間の迷いが生じますから,躍動感っていう話にはなりません。そのためにも,何度も歌い込むことが大切です。

フォスターでもそうですが,嶋田先生はこんな時,「2回歌います。1回目は徹底的に楽譜を見て。ただ見るだけじゃなく,次は見ないで歌うぞっていう気持ちで見てください。そして2回目は本当に見ないで歌ってください。」と言います。そして,「明日になったら忘れてもいいから,今だけしっかり覚えてください。」とも言います。
今だけしっかり覚える…,これを「短期記憶」と言います。覚えたはずの漢字を忘れてしまうのは,それが短期記憶だからです。パソコンでいえば電源を切れば消えてしまう「メモリ」に相当します。トランプの神経衰弱も短期記憶のゲームです。これに対して長く覚えていられる記憶のことを「長期記憶」と呼んでいます。脳の保管庫に格納された状態であり,パソコンでいえばハードディスクに記録された状態に当たります。

試験勉強においては,短期記憶をいかにして長期記憶に「変換」するかがキモになります。そこで記憶を,より長く脳内に定着させる作業が必要になります。それが反復です。学んだことを何度も繰り返し,復習するわけです。脳は,強烈な印象があるものを「重要なもの」として,一気に長期記憶化します。しかし印象が薄いものは,何度も繰り返すことによって,脳に「重要なもの」であると認識させなければなりません。これこそ巷のあらゆる記憶術・暗記法が目指している「共通の目標」と言えます。

話がそれました。繰り返すこと,反復することは,とても重要です。合唱も勉強も同じですね。
しかし,「南部うまっこ唄」ばかり繰り返してもいられません。小休止をはさんで全6曲を通しました。これも,大きな大きな反復のひとつです。

午前中で嶋田先生はいったん名古屋に戻りました。ひと仕事かたづけてから夕食後に参加。午後は「うみねこの島」や「でこでこ三春」のソリスト決めと,楽しい交流レクレーションになったと聞いています。ホントは参加したかった…。

夕食後は「チコタン」です。前回も書きましたが,曲の世界に入り込んでいないと歌えません。この曲の主人公「ぼく」って,どんな男の子なんだろう。何才?何年生?成績は?スポーツの才能は?ハンサムなのかな?「空」のみんなは,どのくらい具体的なイメージを持っているんだろう…?想像しなくっちゃダメですよ。

ヒントは2曲目「プロポーズ」にあります。
「良い子になります。そうじもサボりません。ハナクソ飛ばしません。女の子も泣かしません。」ということは………。
悪い子なんですよ。もちろん犯罪の悪ではなく,いわゆるワルガキ。あばれんぼうの,きかんぼうです。そして,そうじはサボってばかり。授業中には話も聞かずにハナクソをほじり,休み時間には弱い者いじめ。女の子を泣かせっぱなし。そんな男の子。でも根は悪くない。明るくて元気いっぱいの,やんちゃな男の子です。
そういう男の子って,女の子の見ている前ではぜったいに涙を見せないものです。泣くのならトイレにかくれて声を出さずに泣く。その「ぼく」が,大粒の涙をポロポロ流している情景。しかも何万回泣いても,その原因は永久になくならない,その絶望。

そして,その涙と絶望が現実のものとなっている人が昨日も今日もそして明日もいる。交通事故死亡者数が年間4,113人(平成26年中)の日本です。単純計算で毎日11人,2時間に1人。
そういうことって,私たちには関係のないことなのでしょうか。
嶋田先生は,聞いてくださるお客さまに,何かが伝わる,何かを伝えられる,何かを伝えようとする,そんな合唱団になってほしいと思いますし,音楽の力って,まさにそこに尽きると思っているのです。

そんなことを語りかけているうちに,お風呂の時間となりました。

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