SORA NOTE

嶋田先生から空のみんなへ


「飛翔」を歌う機が熟しました

この日は大分県の別府で合唱・教育関係者の集まりがあり、それに参加するために練習が終わった瞬間に名古屋駅に直行。定期演奏会関連の話がいろいろあったようでしたが、失礼しましたこと、お詫び申しあげます。また、そのような事情で、この文章は日曜日に書いていますので、記載が遅くなったことも併せてお詫び申し上げます。

さて、この日は、組曲「蝶」の第2曲「飛翔」を一点集中で練習しました。嶋田先生としては珍しいことです。どんな指導者でも、東海メールに来るプロの指揮者でも、たった1曲に2時間を投入するという練習は、まず、ありえません。子供の場合は、なおさらのこと。つまり、歌う人の「興味」と「関心」が2時間もたない…ということです。どんなに美味しくても、たとえばメロンを、2時間ずっとメロンだけを食べ続けると、ようするに飽きてしまう。小学校の授業時間が「45分」を1単位と決められているのは、国語なら国語に集中できる「子供の気力の限界」が45分である…と、これは100年以上にわたる全ての教育関係者の経験値であるからなのです。

嶋田先生も、45分の授業の中で、ある時にはジョークを入れ、ある時は脱線し、いわゆる「授業のねらい」に子供が最後まで集中できるように様々な工夫を凝らします。その嶋田先生が、プロでもほとんどやらない一点集中を敢えて行ったのですから、そこには当然さまざまな「ねらい」と「意味」がありました。

第一に、みなさんが「蝶」という曲の楽譜とCDを入手し、聴いてみた時の第一印象が、おそらくは「飛翔」が最もむずかしいだろうな…という点にあり(つまり不安もそこにあり)、ために(これは嶋田先生の予想であり勝手な希望でもありますが)おそらくは、その後の半年間(つまり今まで)の間に、数回、多い人では10回以上、楽譜を見て「飛翔」を聴いてくれている子がいるはずだ…ということです。

第二に、そのように何回か「飛翔」を聴いてくれている子のチャレンジ精神が、「むずかしいだろうけど早く歌ってみたい」という段階まで高まってきて、その意欲に「まった」をかけるのが、そろそろ限界だろうと思われたからです。同時に、定期演奏会までに残された時間を逆算して、ここが「飛翔」に集中し、スタートさせる最善の時期だと判断しました。

第三に、これが最も重要なことですが、これまでの半年以上の間に、つまり、みんながCDの音としてでもいいから「飛翔」という曲に出会ってからの半年の間に、みんなの中に多くのイメージが生まれ、「こんなふうに歌うんじゃないかな」「こんなふうに歌いたいな」という思いが膨らみ、あるいは「指揮者は(嶋田先生は)どんなふうにこの曲を振るんだろう」などという興味が生まれ、早い話が、みんなの心の中で「飛翔」という曲が発酵してくる、その時期とタイミングを待っていたわけなのです。

これは非常に重要なことで、ある程度の難易度がある曲の場合、歌う団員の中にイメージも思いも何もない状態でテクニックだけを注入しようとすると、いわゆる消化不良を起こします。つまり、指揮者の命令通りに「歌わされる」という「合唱するロボット」を育てることになる。消化不良という言い方を分かりやすく言い換えると、離乳食が必要な赤ちゃん(つまり「飛翔」を聴いたことのない団員)に、いきなりトンカツを食べさせる(つまりいきなり「飛翔」を歌えと命ずる)とどうなるか、これは、その赤ちゃんの(つまり団員の)生死に関わるレベルの問題なのです。

結論から申し上げれば、この日の練習は、非常に上手くいったと言えると思います。まず、嶋田先生が「これが最低条件」と設定していた「曲を最初から最後まで通すこと」が、この日の練習時間の間に達成できたということです。「できれば時間を余らせて、他の曲もやりたいですが」とは練習の最初に言いましたが、その必要は感じられませんでした。結果、最後に「灰色の雨」を1回通しはしましたが…。それから、歌うみなさんの曲に対する興味と関心が最後まで持続できたこと。これは「飛翔」という曲の課題が多いということもありますが、よく集中して練習できたと思います。これは前述したように「この曲を歌えるようになりたい」「この曲をクリアしたい」という団員の気力が前提にあったことが重要ですから、別に先生の手柄ではありません。

「合唱の神様」と尊敬された合唱指揮者の福永陽一郎先生は、「アマチュアには時間がない。そこを何とかするのがプロだ」という有名な言葉を遺し、嶋田先生にも多くを教えてくださいましたが、その福永先生の練習に近い練習ができたことを感謝します。これは、大崎先生・河合先生・松永先生・服部先生の鍵盤ハーモニカの助力も大きく、これなしには事は運びませんでした。感謝申し上げます。

次週は、童謡を練習します。8/17のコンサートを成功させなければなりません。しかし、楽譜は全部もってきてください。楽譜がない状態で、隣の人の楽譜をのぞき込んでいる…ということはしないでくださいね。

いよいよ8月に入ります。合唱団「空」のみなさんの、ますますの健闘を祈ります。

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