SORA NOTE

嶋田先生から空のみんなへ


表現への予告

【令和2年7月25日(土)】
新型肺炎の感染者が増えてきて心配ですね。しかし今日の中日新聞朝刊の1面によると、名古屋市中区のクラブの「密閉」「密集」は音楽プラザの中リハーサル室の別室(会議室?)に20人が入ってマスクを外して踊りまくるみたいな状況です。話半分としても、そのような状況では感染が広がるのもアタリマエだわ…と思います。
「空」の場合、中リハーサル室いっぱいに20席のイスしか並べず、マスクをしてアルコール消毒をしてですから、練習をしていて感染することはないと思います。
ストレスがたまるのは大人も子どもも同じなのに、何で今、密集クラブに行って踊らなきゃいけないんだろう?自覚が足りない大人たちの猛省(もうせい 猛烈に反省すること)を求めます。

さて、今日は「合唱力を高める」ことは普段通りですが、その上に「表現する」という扉を開けようと思っていました。8月9月10月と、これまでに高めてきた「合唱力」を活用して「表現力」を磨く…。そういう時期に入っていきます。

具体的には合唱組曲「鮎の歌」から「雉」と「わさび田」です。
「わさび田」は非常によくハモります。感心しますし、今日のメンバーをまずはホメておきます。
しかし、ハモるだけならコンピュータにだってできます。人間の表現力は、そのハモるという技術の上に初めて発揮されます。
「湧水は こんこんと湧いて わさび田を流れる」この冒頭の歌詞の中に、ローマ字なら「WA]と発音する部分が4回あります。すなわち「湧水は」の「わ」と「は」、「こんこんと湧いて」の「わ」、そして「わさび田を」の「わ」です。
これ全て、発音はビミョーに違います。分かりやすく書くとですね、会場のお客さんには「わきーみずーはー こんこんとわいてー わさびだをながれるー」と届くわけなんです。これを「湧水は こんこんと湧いて わさび田を流れる」と聴かせなければならない。「湧水は こんこんと湧いて」と受け止めるか「脇見ずは 来ん来ん トワイ(ライト)手」と受け取るか、これはお客様の責任ではない。歌う合唱団の責任であり実力です。
この文章を読みながらスグにできることは、自分で「湧水は」と小さな声で言ってみることです。言ってみてください。言ってみれば「湧水」の「わ」と「湧水は」の「は」では口の形がビミョーに変わることが分かると思います。
これをキチンと作っていくのです。それが「表現」というものです。
P12~P13の「苗を別ける 手をさす針は 水の針」と「手の甲に 虹 虹 虹がはしる」も声と歌い方を変えるように言いました。なぜならば「苗を別ける 手をさす針は 水の針」は情景の説明であり、「手の甲に 虹 虹 虹がはしる」は自分が発見した感動であるからです。このあたりの共感を、ぜひ会場のお客様に伝わるように表現を磨きたいですね。
これらの磨き上げは「空」のメンバー全員で磨き上げるものですから、今日はその予告編です。8月からはこのような練習になりますよ。だから今日のメンバーは「あぁ、そうなのか。ならば今、できる限りの表現でチャレンジしてみよう」と思ってください…と言いました。

恒川先生、高倉先生にお願いして、高校生メンバーを別室(会議室?)に移動させ、そちらは「コタンの歌」のソロの練習と担当者設定に回ってもらいました。いろいろと考えたのですが、やはり「コタンの歌」は大人の曲であり、少年少女としての合唱団「空」がチャレンジするのは良く言えば前代未聞の快挙、悪く言えば背伸びをした冒険です。
嶋田先生としては、藤井聡太七段の最年少記録タイトル獲得ではありませんが、これまでの日本の合唱界で誰もやったことのない「挑戦」を試みたかった。絶対的に魅力があって価値のある湯山先生の代表作なのですから、ぜひともみんなに歌ってほしい。これは25年間思い続けてきたことです。ですが、大人の曲だから「みんなが大人になるまで待とう」と思っても、みんなが嶋田先生に付き合ってくれるのは子どもである間だけなのですから実現できません。
25年間その迷いがあって、「今年のメンバーならできる、いや今年しかできない」という決断がありました。
しかし大人の曲です。これらのソロを小学生の声でカバーするのは、歌う小学生は嬉しいかも知れないけれども、音楽的・芸術的な観点から考えるとふさわしくない。小学生には小学生の声の魅力があるんです。
で、高校生にお願いすることにしたわけです。
というわけで、中リハーサル室には小中学生が残りました。小中学生だけで「雉」の表現です。小中メンバーに言ったことは、やはり「わさび田」と同じような声の変化です。
「山芋 あけび」から始まる1番には、「山芋」にmfが付いています。ところが「栗 ぶな うるし」から始まる2番の「栗」はmpです。中間部の後「あきしばの かげ」から始まる3番の「あきしば」は再びmf。
ところが1番と2番の「木々の葉をくぐり」「風下にまわれ」はmfなのですが、3番の「音もなく雉よ」はスービットpなんですね。
これらの表現を、単に声の大きさだけでコントロールしているだけでは不十分なんです。
つまり、1番は猟犬と雉との距離が100m、2番では50m、3番では5mなんです。殺人鬼に追われている時の、その殺人鬼と自分との距離がだんだん縮まってくる恐怖。こいつを表現したい。
そう分かってもらって「今日は出来る限りの歌い方をしてください」と言いました。本格的な磨き上げは8月からです。

後半は「小さな目」。ただし今日はソロの練習です。ソロのパートを一人で歌うとどうなるか。実験というかチャレンジです。結果は上々、とてもキレイで楽しいことが分かりました。
「小さな目」には「おうちの人」「おとうちゃん」「ママへ」「手紙」「ふうりん」「おかあちゃんの手」と6曲にソロがあり、この担当者を決めることはカンタンではありません。ですが曲の性質上、小学生か中学生に担当してもらおうと思っています。
それは例年通り合宿の1日目に決めることができたら良いですね。

最近、新実徳英先生からメールをいただくことが多くなりました。新実先生は「空」を大変に高く評価してくださっていて、来年の第25回定期演奏会に強い意欲と関心をお持ちです。
今年から来年にかけてコロナは心配ですが合唱団「空」の未来は明るいです。みんなの力を結集して楽しく頑張っていきましょう。

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