SORA NOTE

嶋田先生から空のみんなへ


「月のうさぎ」の表現と和太鼓事件

【令和元年10月19日(土)】
全国に大きな災害をもたらした台風19号の影響で練習を中止せざるを得なかった「空」です。ために全員が2週間ぶりの練習となり、しかも演奏会まで3週間ということを考えると、今日は何が何でも全曲を通しておきたいと思いました。それ以上に、これまで指示していなかった最終的な表現についてもアプローチする必要があり、先生の中での優先順位は後者が優先でした。だから結論を記せば、第1ステージと第2ステージと「まためぐる春に」を歌うに止まりましたが、しかし素晴らしい練習ができて大満足だったことを報告しておきます。
まずは「月のうさぎ」。冒頭のアルトの「むかし」は煙のようなボヤけた声で。「昔」という歌詞の意味を伝えるのはソプラノとメゾソプラノに任せて、物語の展開を予感させる不安感を出しましょう。
「狐と猿と兎とは…」は全てのパートが明るい声で。「それぞれ食べ物探しに出かけた」は自由なブレスを使って合唱団全体がノンブレスで歌っているように。
「焚火の中に身を投げて…」は全身全霊のフォルティシモで。思い切り暗い声でのフォルティシモです。
このような指示を的確に実現してくれるメンバーに感謝です。そして、とっておきの表現に言及します。
「兎の優しい心を愛でて 月の世界へ送りました」は全力フォルテの上の全力フォルテで。体中の心と力を最高に振り絞った強い声のフォルティシモが必要です。それを何度も練習しました。なかなか熱のこもったフォルティシモが出るではありませんか。「行けるかな」という先生の不安が「行けるかも」という希望に変わります。で、お願いをしました。
「月と良寛」つまり「月のうさぎ」が作曲されて59年、まさに日本中で歌い尽くされてきた名曲です。以前にも書きましたが、大中先生が指揮をされている演奏を含めて、嶋田先生が聴いた「月のうさぎ」は録音も含めれば20を超えます。その全ての演奏が「月の世界へ送りました」は全力フォルテなのです。大中先生が記した表現記号もfです。「月のうさぎ」という曲は、この部分をどのようなフォルテにするのかが眼目となっていて、「月のうさぎ」を知っているお客様は当然そこに興味を持って聴いてくださるはずです。
しかし嶋田先生は違和感を覚えます。たしかに「焚火の中に身を投げて…」は熱く燃えさかる声、火の粉が舞い上がるような真っ赤な声で歌うフォルテになります。一方「月の世界へ…」は群青色(ぐんじょういろ)の空に白く輝く月へと兎の魂が昇っていく、いわば青い声、凍り付くような冷たい表現、青く冷たく凍り付いたようなフォルテ。つまり肉体のフォルティシモではなく精神のフォルティシモです。これは昨日や今日、思いついた表現ではなく、平成8年の愛知県合唱連盟合唱祭で「空」を指揮して以来23年間温め続けていた表現です。
この表現を実現するためには、心も体も「焚火の中に…」と同じレベルの燃え上がる全力ポジションを保っておいて、なおかつキーンと張り詰めたファルセット(裏声)にする必要がある。音量計という機械で測れば小さい音になります。ですがその小さい声は限りなく緊張したフォルティシモなんです。
フォルテとかピアノとかいう表現記号は「音や声の強さや弱さ」なんです。6年生の教科書に書いてあるとおりです。つまり「音や声の大きさや小ささ」ではない。「月のうさぎ」の「月の世界へ…」の部分は限りなく強くした声が限りなく小さい声で表現されるべきです。
正直、できるだろうか…と思っていました。ですが、かなり上手い。驚きました。「行けるかな」と思っていた不安が「行けるかも」という希望に変わりました。むろん全員での共通理解ではないので不安は残ります。何しろ59年間、作曲者も含めて誰もやったことのない表現です。このノートを読んでくれた欠席者は、ぜひともイメージを膨らませておいてくださいね。

「うたにつばさがあれば」も細かく練習しました。「白いうた青いうた」も細かく練習しましたが、「月のうさぎ」ほど詳しく記す必要はありません。みんな、手慣れた表現で、かなりのレベルです。今日集まったメンバーはイメージに関する反応が鋭く、詩の世界を十分に膨らませて歌おうとしてくれました。感謝です。
一点だけ具体例をあげておきます。たとえば「薔薇のゆくえ」ですが、これは「バラの花」をイメージしていてはダメだということを言いました。「薔薇」とは「自分」「私」という意味であり、そうイメージしてくださいと。「運命(さだめ)知り」とは「自分の命は永遠ではない、自分は必ず死ぬという運命を知って」という意味です。つまり最初の部分は「私は、必ず死ぬという自分の運命を知って、お母さんと人生を歩み出した」という意味になります。以下は敢えて書きませんから、あなたの感性を振り絞ってイメージを膨らませてみてくださいね。
以後の予定を公表しておきます。よろしくお願いいたします。
来週26日(土) 今日できなかった「イルカの翼」と「海と祭りと花の歌」
再来週11月2日(土) 「月のうさぎ」と「うたにつばさがあれば」と「白いうた青いうた」最終
11月3日(日) 湯山先生をお迎えして「イルカの翼」と「海と祭りと花の歌」
11月9日(土) 湯山先生をお迎えして全曲
11月10日(日) 本番

午後、ウィルあいちで演奏会の打ち合わせがありました。そこで大変なことが分かりました。
ウィルホールは和太鼓禁止なのだそうです。和太鼓は、大太鼓や小太鼓やティンパニと違って独特の空気振動を持っており、だからかどうかは知りませんが使用規定に「和太鼓禁止」と明文化されているそうです。
下の4F会議室に響く可能性があるとのこと。「その会議室の使用者を教えろ。15時ごろの3分間だけ5階のホールで鳴らして良いか独自に交渉する」と食い下がりましたが、会議室は珠算(ソロバン)の検定試験に使うとのこと。ちょっと無理ですね。
それで急遽、大太鼓と小太鼓とチャンチキを使用する許可を申請しておいてもらいました。大太鼓と小太鼓は思い切り皮を張って締め上げて裏に雑巾をかませ、マレット(頭がフワフワしたバチ)ではなく、スティック(木の棒)で叩けば、似て非なるものではありますが似た音を出すことは可能です。チャンチキは使用OKです。
帰宅後すぐに湯山先生に電話をし、和太鼓使用不可を報告し、代案を相談しました。結果は締め上げた大太鼓と小太鼓でOKです。
あとは大須太鼓保存会の皆さんが「大太鼓と小太鼓でOK」と言ってくださるかどうかです。引き受けてくださることを祈っています。また、大太鼓と小太鼓の調達に頭を悩ませますが、みなさま知恵を貸してください。

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