SORA NOTE

嶋田先生から空のみんなへ


期せずして「親子で歌うコンサート」

【令和元年7月20日(土)】
久しぶりに豊明老人福祉施設を訪れた「慰問コンサート」は堀内先生の記録によれば今回で20回目。最初の訪問は平成12年だったそうです。その年に生まれた子は19才になっているわけですから、「空」の福祉活動も歴史を刻んだものです。
その第1回目から(それ以前の豊明に行くようになる前の他の老人ホームでのコンサートも含めて)ずっと伝統になっていることは、コンサート当日の朝に集まったメンバーが1回だけ練習をして午後の本番に臨む…という方法です。合唱団創立の当時は、2週間あるいは3週間前からある程度の練習をしていたのですが、当日に参加できないメンバーにとってはムダな練習ということになります。
本当は、どんな曲を歌ってもトレーニングになりますから「ムダ」にはなりません。ですが、本番に参加できない子が可哀想だという思いがありました。
様々な紆余曲折と試行錯誤を経て、現在の「当日に集まったメンバーが当日だけ練習をして午後の本番に臨む」という方法が「老人ホーム慰問コンサート」の定番になりました。同時に「文部省唱歌」を中心にプログラムを組むという方針も、今は揺るぎのないものです。
使う楽譜は小学校の音楽の教科書をそのまま…という方針も定番なのですが、実は今回は少し迷いがありました。それは昨年11月の第22回定期演奏会で歌った「文部省唱歌」です。
萩原英彦、若松正司、越部信義といった作曲家の名編曲を歌ったそのステージは、湯山先生から絶賛をいただき(ご自分の作品のステージよりもホメてくださいました)、メンバーの貴重な体験となり財産となりました。
その後の老人ホーム慰問コンサートでは、これらの編曲を使って何度か歌いました。しかし、さすがに定期演奏会から9ヶ月を経て、その後に入団してくれたメンバーが何人もいる中で、過去のステージを再現することはできません。何よりも、新メンバーに何のアプローチをすることもなく萩原英彦の編曲を要求することは、どう考えても教育的ではありません。
ゆえに迷いを捨て去り、教科書バージョンにもどすことにしたのです。今後の老人ホーム慰問コンサートでも同様のバージョンを使うことと思いますので、今日のプログラムを記録として残しておくこととします。
富士山(3年生) 教科書
春の小川(3年生) 教科書
さくらさくら(4年生) 教科書+嶋田バージョン
おぼろ月夜(6年生) 教科書
茶つみ(3年生) 教科書
こいのぼり(5年生) 教科書
われは海の子(6年生) 教科書
夕やけこやけ(2年生) 若松正司編曲
もみじ(4年生) 教科書
冬げしき(5年生) 教科書
ふるさと(6年生) 教科書
このうち、「さくら」と「夕やけこやけ」のみ、工夫したバージョンを残しましたが、この編曲がいつまで歌えるかは不透明です。何しろ当日以外は一切マッタク練習しないで歌うわけですから。しかし、この二つのバージョンは、先輩の声から声へと受け継がれていく愛唱バージョンとなる値打ちはあると思います。できる限り引き伸ばしましょう。
これら11曲の練習に投入した時間は90分。11時に休憩に入りました。1曲につき9分弱というスピードです。相変わらず音の理解は速いこと速いこと。しかし、何とまあ柔らかくて美しい声でしょう。「夕やけこやけ」や「おぼろ月夜」などにはピッタリの声なのですが、「ふじ山」や「こいのぼり」ではもっと元気に歌ってほしい。極め付けは「われは海の子」で、この曲を柔らかく美しく歌うことは、例えて言えば「ザルそばをソースで食べる」ことに匹敵します。あるいは「アイスクリームに醤油をかけて食べる」と言っても良い。
ザルそばもアイスクリームも醤油もソースもオイシイものです。しかし、その組み合わせ方によってはマズくて食えないものが出来上がる。オイシイ+オイシイ=マズい こういう式が成立してしまう。今日の練習で一番時間を投入したことは、この問題でした。
みんなは精一杯、嶋田先生の要求に応えようとしてくれました。この成果を「ちょうちん囃し」と「雪はりんりん」との違いに応用してくれることを願っています。

11時10分からは「海と祭りと花の歌」から「まためぐる春に」を整理しました。同じフレーズが形を変えて繰り返されていることの確認です。少しずつ形を変えて繰り返されていて、しかも出てくる順番が不規則ですから迷いが生まれます。だから、どの部分とどの部分が同じフレーズなのか整理することが重要です。
ずいぶんと久しぶりに歌ったのですが、非常に効率よく最後まで歌い切ることができたことを報告しておきます。

しかし大したものです。以前の「空」では、午前中の練習を老人ホーム慰問コンサートで歌うことのみに投入していました。今日は11時までにそれを終了させ、後半の50分を「まためぐる春に」に投入しているわけです。メンバーの集中力がゼンゼン違います。このことによって、午前中は参加できるけれども午後の本番には参加できない…という何人かのメンバーを救うことができました。本当に良かったと思います。

豊明老人保健施設に到着した後に何をやったかと言うと、何と「文部省唱歌」の練習ではなく「白いうた青いうた」の練習でした。待ち時間の間に「壁きえた」「ともだちおばけ」「無名」「盲導犬S」「薔薇のゆくえ」「あしたうまれる」をさらうことができました。しかもその響きたるや正確無比で、ことのほか美しいハーモニーが響き、新実先生の世界に没入することができた嶋田先生でした。あと30分時間があれば全曲を通せそうな勢いでした。
ありがとう。本当に感謝です。

慰問コンサート本番では引率の母親たちに楽譜を渡し、強制的に臨時団員として歌ってもらいました。期せずして「親子で歌うコンサート」ともなり、温かい雰囲気でした。
今このノートを書いているのは日付が改まった夜中です。今ごろ、みんなの歌声を聴いてくれたお年寄りたちは夢を見ておられることでしょう。お母さんと歩いた故郷の情景や、子供のころに見た美しい夕焼けの夢を…。
そのような夢を演出することができたとしたならば、それはみなさんの力です。何億円出しても買えない「懐かしい夢」。みなさんの今日の活動には、そのような意義がありました。大感謝です。ありがとうございました。

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