SORA NOTE

嶋田先生から空のみんなへ


泣きたくなるほど心配しています

【10月13日(土)】
今日は前回の「空ノート」に記したとおりの曲目を練習しました。
まずは「向日葵の歌」のラスト3曲。
「向日葵」はこの組曲のタイトルとなっていることからも分かりますが、組曲全体の中心となる曲です。いわば大黒柱。1998年、第2回定期演奏会で初めて湯山先生からご指導いただいた時、アンコールの最後で湯山先生が採り上げられた曲です。その時は「あめふりくまのこ」を湯山先生、「くも」を嶋田、最後に「向日葵」を湯山先生という流れでした。全て湯山先生の提案でした。
当時は50名のメンバーがいましたが、何というムズカシイ曲であることか…と嶋田先生を含めた全員が思っていて、この1曲だけに合宿の丸一日を投入した記憶があります。
その「向日葵」。20年後の今の「空」は、メンバーの人数だけを見れば約半分かも知れませんが、一人一人の「合唱力」は当時よりもはるかに優れていて、音程は正確、声量は豊かで歌詞の発音も明瞭です。
冒頭、「お天道様の車の」まではリズムを生かして弾んで歌います。「輪」だけフワッ~と膨らむような声で。これは今回初めて工夫する表現で嶋田先生のお気に入り。嶋田先生だって成長するもんね。20年の試行錯誤を経た表現です。
「金のきれいな車の」も同じ。最後の「輪」だけ膨らませる。再現部の「今も黄金の車の」と「輪」も同じ。その次の「ラララ ララララ ララララ」と「ラ」も同じ。
このように文字で書くと「ラ」というカタカナが12個並んでいるだけで、メンバー以外の人には何のことだか決して分かりますまい。
ようするに「ラララ」というのは感動しすぎてもう言葉もしゃべれなくなって、思いがいっぱいに膨らんだ時の「ウタ」なのです。
この「ラララ」は金子みすゞの詩の中にはもちろん無く、作曲家の創造です。湯山先生はこの部分に「ラララ」を入れた。その意図をメンバーは受け取らなければなりません。何しろ指揮するのは作曲家ご自身です。でも、その受け取りは、十分にできていると思いました。ありがとう。
「木」は主語を大切に。「お花」「実」「その実」「葉」「それから芽」「花」という流れ。日本語の「何がどうした」の「何が」をハッキリと聴く人に伝えるのです。
逆に考えると答えは明確です。もし、これらの主語が客席にハッキリと伝わらなかったら…?どう思いますか?
その合唱団は、その曲を歌ったことになるのでしょうか。
一生懸命に練習して、お客様もたくさん来てくれて、さて結果は主語がゼンゼン伝わりませんでした…などという展開はタワケもタワケ、これ以上ないバカバカしさですよね。
歌詞の発音が良くなかったのではありません。むしろ非常にクリアに発音されています。その明瞭度は東海メールクワイアーよりも上です。先生は両方やっているのだから分かります。「空」の方がハッキリしていて上手です。
もっと上を目指そうということです。客席にピシャっと全部伝わる表現。どの曲でも同じですが「木」は特にそれが大切です。
「砂の王国」も結局は歌詞の発音です。しかし「木」とは方法が少し違う。
冒頭の「砂のお国の」の「の」の母音は「オ」です。ところが次の「王様です」の「王様」の最初も母音が「オ」です。つまり同じ母音が2回連続する。これをハッキリ歌わないと「砂のお国の~う様です」と伝わります。
同じことが「野原と川を」「思うとおりに」でも言えます。「おとぎ話の」「王様だって」でも言えます。
これらが「野原と川を~もうとおりに」とか「おとぎ話の~う様だって」と伝わったとしたら、そりゃあギャグ漫画の世界です。金子みすゞの世界がギャグ漫画の世界に落ちるか落ちないかは、メンバーの集中力と発音にかかっています。
このことも、下手だったから書いたのではありません。今日の歌声は上手でした。上手だからとか下手だからとかではなく、このことが大切だから書いたのです。それから、今日いなかったメンバーに今日の練習のポイントを伝えるために書きました。
嶋田先生は心配しています。おそらく今夜はうなされることでしょう。こうして「空ノート」で伝えようとしても、欠席者に全てが伝わることは期待できません。何人かの子が連続して欠席しています。その理由が嶋田先生の所まで届いていません。吐き気がするぐらい心配です。胸の中に重苦しい痛みと不安を感じます。あぁ、お願いだ。君の力が必要なのです。あなたがいない演奏会なんて考えられません。

続いて「文部省唱歌集」。今日は全てを一通り歌いました。「夕やけこやけ」の2年生の教科書はテンポで歌わないように。言葉を大切にして歌いましょう。コーラスに入って、2番の最後で夜になります。小鳥が夢を見ます。その表現はmpとありますが、むしろフォルテで歌いましょう。「空にはキラキラ金の星」もユックリにはしません。1番のハミングにもどった時、そのハミングは満天の星空をつくるハミングになるように。みんなで力を合わせましょう。続く「小鳥が夢を…」は今度こそピアニシモで。そして最後の「空にはキラキラ金の星」は思い切りリットをかけます。
「春の小川」は4小節をまとめて1フレーズに。この基本は十分に守られています。そして3小節目の頭にフレーズの頂点を作ることも上手い。
3年生の教科書では1番が「姿やさしく」になっていますが楽譜は「においめでたく」になっています。どちらが原典かと言うと楽譜です。教科書は3年生の子が理解できる言葉に置き換えられています。ですが、イメージは同じです。「におい」とは便所の匂いとか腐った匂いとかではなく「ムード」「雰囲気」という意味です。また「めでたく」とは「すばらしく」という意味ですから、「ムードは素晴らしく」ということとなり、すなわち「姿やさしく」と同じことになります。
ソロの子に拍手。カッコ良かったよ。
「茶つみ」の3年生楽譜。授業では全員が手拍子を打ったことでしょう。生き生きと元気よく歌うことに変わりはありませんが、手拍子は忘れましょう。ノンビリと歌いたいです。ポッカポカの日差しの中の茶畑で、おばあさんが茶を摘みながら歌うのどかな情景です。
「富士山」は良かった。4小節のまとまりを意識してスケールの大きな表現ができています。
「さくらさくら」は4年生の楽譜の「はなざかり」でクラスターを作ることとします。クラスターとは多くの音が重なるという意味で、ようするに4月21日のスプリングコンサートで歌った表現を再現します。ミ、ファ、ラ、シの音が重なった日本和音は実に美しいです。期待しています。
コーラスに入ると全員が素晴らしく健闘しているのですが、音楽が巨大なのでメンバーが欠けている状態では上手くいきません。特に3番の「みわたすかぎり」「かすみかくもか」のつながりが聞こえない。全員が揃ったら確認したい部分です。
「もみじ」と「冬景色」は、とてもステキでした。「さくら」を歌った直後に「もみじ」の4小節ノンブレスを守ることは大変だということが分かりましたので、2小節ごとに息継ぎをするのはやむを得ないでしょう。しかし、そうならないように、本番では「さくら」が終わった後、汗を拭くフリをして、間を長くとるようにします。
むしろ6年生教科書の「おぼろ月夜」の方が集中力を必要としますね。客席のお客様にホッと一息を感じてもらうために組み入れた流れですが、斉唱の方が合唱よりも気が抜けない。基本は4小節ごとに終わりをリットします。2番の終わり「さながらかすめる」で思い切りフェルマータをかけるので確認してください。
「ふるさと」は上手です。最後のP38の下段は「忘れがたきふるさと」と歌いますから確認を。その時は「ふるさと」でフェルマータをかけます。

これだけの練習が1時間30分で終了しました。たいしたものですね。

休憩の後は「サウンド・オヴ・ミュージック」です。
気付いていた子もいると思いますが4曲目の「サウンドオブミュージック」は2小節目からのピアノ伴奏をカットしました。ピアノが入るのはP7下段の星空の音からにします。
メンバーに言ったことは、このステージで真剣に表現するのは4曲目「サウンドオブミュージック」と終曲「すべての山に登れ」だけだということです。あとの曲は気楽に元気よく、楽しく面白く歌えば良い。グチャグチャのデタラメで良いという意味ではありません。ですが、音程やハーモニーよりも、気楽で元気に楽しく面白く…の方が大切になる場合があります。ハーモニーを意識するあまりにエネルギーを失ってはならない。そういう音楽がミュージカルなのです。
劇団四季の会場に行けばすぐに分かりますが、お客さんが求めているものは表現でもハーモニーでもなく、「楽しさ」なんです。聴いているだけで楽しくなる音楽、ワクワクする音楽。そういう音楽があるんです。ですが、劇団四季のメンバーはワクワク感を出すためにハーモニーをないがしろにはしません。ハーモニーも歌詞も音程もキッチリやっています。しかし、その上にあるものが楽しさでありワクワク感だということを、四季のメンバーは理解しています。
「空」は合唱団であって劇団ではありません。しかしミュージカルに取り組む以上、そこに楽しさとワクワク感を醸し出すことができなければ歌う意味はありません。
で、今日のメンバーに言ったことは、間違いや失敗を恐れないこと。「アッ、しまった」と思ったらメロディーを歌えば良い。黙って反省している間に音楽はドンドン進行していきます。アッと思ったらメロディーを歌って、集中して周りの音を聴きながら、分かったところで自分のパートに戻れば良いのです。
どの曲もケッコウ楽しく歌えています。修正したのは英語の歌い方というかイメージです。たとえば「ミュージック」と歌う時、「ミュージッークーーー」と短く歌うのではなく、「ミューージーーッーク」と長く歌いましょう。
これは紙面に書いて伝えられることではないので、前日と当日のリハーサルで確認します。集中して聞いてくださいね。
「すべての山に登れ」は音楽が巨大なので全てのメンバーが揃わないと最終の確認ができません。この曲ばかりは指揮者が上手に振れば合唱団が生き返るという音楽ではなく、指揮者なんかいなくても良いから、練習を積み上げてきたメンバーが揃って作り上げる「主体性の音楽」なのです。

次回は湯山先生の直前練習。「ねむれないおおかみ」と「向日葵の歌」と「アンコール」に集中します。そして27日・28日と湯山先生の1度だけのリハーサル。そして3日がゲネプロ、4日が本番です。
みんなの集中力に期待しています。

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