SORA NOTE

嶋田先生から空のみんなへ


「全てのパートを全員で歌ってからハーモニーを作る」について

【7月21日(土)】
夏休みに入りました。連日厚い日が続きますから健康管理に十分な注意をお願いします。一週間に一度の貴重な練習日に発熱…では悲しいですから。かく言う嶋田先生はまだ体調が十分ではなく、咳が続いていて申し訳なかったです。
さて、今日はフェールマミが会場でしたから、入団希望の子が来てくれたら、例のグランドピアノを鳴らす「魔法の練習」をしてビックリしてもらおうと思っていました。ですが彼女たちの姿はありませんでした。
集まったメンバーは既に何度かこのトレーニングを受けている子たちで、さらにレベルを上げてこのトレーニングを施すか、あるいは曲の表現を深めるか、一瞬迷いました。9時30分から約1分間、嶋田先生が何もしないで考えていたのは、このためです。
で、曲の表現を深める練習を選びました。それは、先々週の最後に「ひとりぼっちの羊飼い」を歌い、先週の最後に「すべての山に登れ」を歌ったものの、それらは最後の15~20分であり、いずれも中途半端に終わっていたからです。今日の練習でキチンと表現を固めておけば、それは先週と先々週の中途半端な時間を「有効な時間」に変革させることにつながる…との考えでした。
で、「発声練習です。デタラメでも良いからトニカク声をシッカリ出してください」と前置きしておいて、「ひとりぼっちの羊飼い」のメロディーを歌い始めました。冒頭からオクターブの跳躍音で、この上もなく手強い音楽です。
ですが、出てきた声は力強い響きで、高音も低音もシッカリ響いています。ちょっと驚きでした。今日の練習で嶋田先生は一度も「きれいな声だなぁ」と言わなかったでしょう。「しかし弱い」とも「ドラ声でも良いからもっと強く」とも一度も言いませんでした。これが嶋田先生の驚きを証明しています。
およそ発声練習というものは「ドードレーレミーミファーファ…」などと、低い音から少しずつ高い音へと上げていくのが常道であり、「空」でもよくその方法は使います。ですが今日は、いきなり1オクターブの跳躍音が出てくる曲を、しかもその曲のメロディー全体を通して歌うという方法でした。かなりアラっぽい方法です。でも、かなり有効な時間となりました。
「ひとりぼっちの羊飼い」はP47~48やP50~51のような、あるパートがずっと黙っているという部分を排除し、基本的には全員で歌います。P53のEはⅡとⅢのパートが同じですからアルトの子が歌います。Ⅰのパートが二つに分かれていますから上をソプラノ、下をメゾソプラノの子でカバーすることとします。
P54のFはメゾソプラノ下とアルトの子が下のパートを歌いますが、ここは休符無しで上と下を全部歌ってください。
P59の終結部は全員で歌います。
全体を通して、けっこうスイスのヨーデルっぽい響きになってきたことを報告しておきます。
「すべての山に登れ」も全てのパートを全員で歌い、最初から最後まで通してハーモニーを作ることができました。しかも、日本語で歌ってから次は英語で歌うという離れ業。
この「全てのパートを全員で歌ってからハーモニーを作る」という練習方法ですが、東海メールクワイアーでは絶対にできません。この方法を強行したら、おそらく退団者が続出する事態になることと思います。
なぜかと言うと、東海メールクワイアーは平均年齢が高く、しかも合唱経験は何十年と持っている(嶋田先生の合唱経験は12才~58才で46年だ)ので、みんな「もう自分はこれ以上上手にはならない」と分かっているのです。おじいさんやおばあさんが腕立て伏せや腹筋をして体を鍛えないのと同じ。年寄りは「もう自分の体は鍛えても丈夫にならない」と分かっているのです。
「空」のメンバーは違う。やればやるほど上手くなります。鍛えれば鍛えるほどテクニックが上がります。
子供っていいなあ。今以上の自分になれる未来がある。嶋田先生を含めた東海メールクワイアーや世の中の年寄りにも未来はありますが、その未来は今以上の強化された自分になるという未来ではありません。
断っておきますが、東海メールクワイアーの場合、今以上の自分になれるように鍛え上げるという練習はしませんが、そのかわり、今の自分が持っている力を全部出し切ろうという練習をします。自分の声を磨くのではなく、自分の声を相手に合わせるということに全力を注ぐわけです。
「筋肉ムキムキ爺い」になるのではなく「みんなで一緒に歩もう爺い」を目指すのが東海メールクワイアーの練習です。
「空」のメンバーは「筋肉ムキムキ爺い」じゃなかった「筋肉ムキムキ少年少女」になろうとしてくれなくては困ります。鍛えられた結果、発展進歩した未来があるのですから。同時に東海メールクワイアーがやっている「みんなで一緒に歩もう爺い」じゃなかった「みんなで一緒に歩もう少年少女」になってほしい。だから「全てのパートを全員で歌ってからハーモニーを作る」という練習方法になるわけなんです。
相手の音の動きを知っていること、相手のパートを自分の身体が知っていることは、実に実に実に実に重要なことなのです。
またまた断っておきますが、東海メールクワイアーはあるパートが歌う時に全員が一緒に歌うことはありません。つまりテノールが歌う時にバリトンやバスの人は黙っている。「空」のようには歌いません。しかし聴いています。テノールの高い声をバリトンやバスの(低い声の)人たちは、全力集中で聴いています。自分以外のパートを理解することは、一緒に歌わなくてもできることなのです。
またまた話が横道に逸れました。「すべての山に登れ」もナカナカのハーモニーを作ることができました。しかもソプラノの子は低いパートも歌って自分を叩き上げ、アルトの子は高いパートも歌って自分を磨き上げ、すごい密度の濃い時間です。こういうことができるのは子供のうちだけですよ。ある意味で、みんながウラヤマシイと感じる嶋田先生でした。

話はここで終わりにしたいんですけれども、今日の練習はまだ続きがあります。「すべての山に登れ」が終わった後、「大遊び」と称して、どんなにグチャグチャになっても良いから「ドレミの歌」「ひとりぼっちの羊飼い」「エーデルワイス」「さようなら ごきげんよう」「すべての山に登れ」の後半5曲を通してしまおう…ということにしました。連続する曲の関連性を知ることも大切なことですから。
これが全部通ってしまうところが楽しいですね。もちろん初めて歌う曲があってドギマギしていた子もいるとは思いますが、全員がウワーっと船を漕いでいる中に身を任せて、ボンヤリとでも良いから全体を掴む…というのも重要なのですよ。
まだ続きがあります。11時50分に浜田先生が退場した後、「グレゴリオ聖歌」と「朝の讃美歌」と「ハレルヤ」を一通り歌いました。ピアノがなければピアノの要らないアカペラを歌う。無駄な時間は一切ありません。
「朝の讃美歌」は男の子二人の成長で、終結部の重低音「ミ」が聴こえるようになり、なかなかのハーモニーを作ることができたことを報告しておきます。
今日も子供たちから生きる力を得ることができた嶋田先生でした。ありがとう。

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