SORA NOTE

嶋田先生から空のみんなへ


音程

【2月10日(土)】
今日は計画していたわけではありませんが、音程に特化した練習となりました。計画していたことは「文部省唱歌集」を全部歌っておこうというものです。で、「春の小川」から開始したのですが音程が決まりません。
3年生の教科書に載っている曲だからカンタンだろうなどという考えは大間違いです。そりゃあ、ただ歌うだけなら、この上もなくカンタンです。しかし、キッチリ音程を決めて歌うことはカンタンではありません。4小節目の「いくよ」の「よ」、つまりミの音が低いのです。
とは言え、それはメンバーがサボっているとか集中力が無いとかいうのが原因ではありません。「ドレミファソラシドー」と歌うことはカンタンだと思うでしょうが、実はそうではない。特に「ミ」と「シ」がムズカシイのは嶋田先生の経験則です。なぜですか?と聞かれても答えられないのですが、特に「ミ」の音は鬼門です。
そこで「春の小川」をドレミの階名で歌うことにしました。テンポもリズムも全部外して「ミー、ソー、ラー、ソー、ミー、ソー、ドー、ドー」と確認していきます。これまでに何度も書いてきましたが、「ド」の音を聴いて「ミ」や「ファ」や「ソ」の音を出すというトレーニングが実に重大です。このトレーニングは実は必ず「ド」の音が起点になるわけではありません。「ミ」を聴いて「ソ」を出す、「ソ」を聴いて「ラ」を出すなど、これ全て理屈は同じです。
メンバーは、この上もない集中力で耳を研ぎ澄まし、音程に気を付けて歌いました。音感を磨くための基礎となる時間でした。
ところが「茶つみ」に入っても同じ現象が起こります。「なつもちかづく」の「ち」や「はちじゅうはちや」の「う」がト長調の「ミ」にあたります。そこが低い。
何度も何度も繰り返してトレーニングしました。
この2曲に共通する表現は、3段目の1拍目に頂点を持っていく…ということです。「春の小川」なら「いろうつくしく」の「い」、「茶つみ」なら「ちゃつみじゃないか」の「ちゃ」ですね。そこをフォルティシモで歌いたい。なぜなら音楽の構造がそうなっているからです。
「富士山」に入ると、またまた音程の問題が露呈します。やはり「ミ」の音が低い。すなわち「あたまをくもの」の「く」や「みおろして」の「み」などです。またしても階名で歌って音程に対する集中力を高める訓練を続けることとなりました。
この音程に関する話は、1/100音低くても許さない…という極めてレベルの高い話で、だから音叉を使って確認しました。なぜなら音楽プラザのピアノも嶋田先生の鍵盤ハーモニカもそのレベルでは狂っており、狂った楽器の音を頼りにしていてはメンバーの音感も狂ってしまうからです。
「ソーソラーソーミードレミー、レーソソーファミレー」などと繰り返すうちに、少しずつ少しずつ音程が正確になっていくことは、嶋田先生にとって幸せな時間でした。子どもたちが伸びていく瞬間に立ち会うことは教師として至福の瞬間なのです。みなさん、ありがとう。
「さくら」は謡曲の歌い方。授業では絶対にやらないことです。前回も書きましたが、ブレスの前はフェルマータになるという歌い方。作詩作曲者の欄に「日本古謡」とありますから、古謡中の古謡、謡曲中の謡曲です。
では「謡曲」とは何かと言うと、みなさんにとって一番分かりやすいのは相撲の行司や呼び出しです。「ひが~し~、はくほう~、はくほう~~」と呼び出す時、この「~」の部分をどのくらい伸ばすか。それはその場の雰囲気や気分によるものであり、拍やテンポの音楽ではありません。変なふうに伸ばすよりもサッサと「東、白鵬、白鵬」と呼び出せば良いのに…とは誰も思わないでしょう。そのビミョーな伸ばし方には日本で古来から受け継がれてきた独特の味わいがあります。「さくら」についても同じこと。小学校の授業では絶対にやらないと思いますが、「空」にしかできない謡曲の「さくら」を表現していきましょう。
「とんび」に入ると、またしても音程の問題が露呈します。やったことは前述のとおりです。ここでは練習では言わなかったことを記しておきます。楽譜を見てください。階名で読むと「ファ」と「シ」が1回も出てきません。これは日本音楽の独特な特徴です。ベートーヴェンやモーツァルトなどは「ドレミファソラシド」を基本としており、このような西洋音楽には決して見られないものです。日本古来の音階とは「ドレミソラド」であり「ファ」と「シ」が抜けています。このことが、歌謡曲やニューミュージックに慣れ親しんでいる子どもたちの一般的な感覚とズレを生じさせているのかもしれません。
「もみじ」も「こいのぼり」も音程に集中するトレーニングとなりました。これまでの話を要約すれば、小学校の教科書に載っている曲でも正確に歌うことはムズカシイということです。カンタンだと思ってはいけない。実は嶋田先生も自信がありません。おそらくプロでも難しいでしょう。曲がシンプルにできているだけにゴマカシが効かないのです。
今日のトレーニングは明日になったら元にもどってしまうことは十分に有り得ます。元に戻ってしまっていたら、また鍛えれば良いのです。今日の練習は、みんなが「教科書って意外と大変なんだな」と思って帰ってくれたとしたら大成功。よく頑張ってくれました。

最後にインフルエンザに罹っているメンバーの早い快復と、受験生のメンバーの鋭意健闘をお祈りいたします。がんばってくださいね。

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