SORA NOTE

嶋田先生から空のみんなへ


「空」の表現

【9月30日(土)】
この日は一部の小中学校で運動会あるいは体育大会があり(名古屋市全部の小中学校の運動会日程を実は先生は持っています)、どうしても練習に参加できない子がいましたが、それは仕方のないことです。

先週の練習で湯山先生に指摘された点や、先生が「危ない」と思った点を補足修整しておこうと思っていました。
ですが、まずはアンコールです。なにしろ楽譜を手渡したのが先週なので、少しでも不安を取り除いて置く必要があります。ところが歌ってみると、あまり不安を感じません。「山のワルツ」も「おはなしゆびさん」も「あめふりくまのこ」も手の内に入った歌声で、音楽が自然に流れます。いつものことですが「もう少し元気が良くて荒っぽい方が良いかな」とも思いましたが、メンバーの中にある程度の「理想表現」が出来上がっていて、自分ならこう歌いたい…という主体的な「思い」があることを感じました。

湯山先生と話したことは、「今回のアンコールは思い切りメジャーな曲で、お客さんが一人残らず知っている曲にしましょう」ということです。ひょっとしたら、アンコールが一番盛り上がるかもしれませんね(笑)。

さて、その後「うなぎの子守唄」です。時間をかけたのはP41の33小節目のハーモニーを整えることでした。「小さい小さい うなぎ」のハーモニーです。P44の65小節目も「まだまだ小さい うなぎ」も同じです。楽譜を見るならP48の「大人になるって つらい」の部分の方がハ長調ですから分かりやすいでしょうね。
P48を見ればわかりますが、アルトの音がファ、ソプラノの音がミです。アルトの音を基準(つまりヘ長調の感覚)にすると、アルトがド、ソプラノはシになります。ミとファあるいはドとシなどという音の組み合わせは非常に仲が悪いもので、早い話がハモりません。ぶつかり合った不安定な音になります。でも、メンバーはもう分かっていることと思いますが、その不安定な音こそが「大人になるって つらい」という部分には必要なのですよね。

耳が良い子であればあるほど、アルトのファ(P48の3番)を少し下げてミにしようとします。これは合唱人間の本能。もしもアルトがミになったら全体のハーモニーはアルトがミ、メゾソプラノがラ、ソプラノもミになって、気持ちの良いことこの上もないハーモニーになります。耳が良ければ良いほどそうなる。もし、もう少し耳の悪い(つまりハーモニー感覚がニブイ)子であるならば、鍵盤ハーモニカで叩いた音を忠実に覚えて、その音を出すことでしょう。相手の音がどうであろうと自分が覚えた音を出す…ということです。その方が早く、この「ファ・ラ・ミ」のハーモニーを作ることができるのかも知れません。
ですが、それは相手に構わず自分を押し通すということで、ムチでピシピシ叩いて音を教え込み、ひたすら自分が命令されたとおりの音を出せるようにする練習となります。

一方「空」のアルトの子はソプラノの音を聞いている。聞こえているんです。聞こえているからソプラノに合わせようとする。協調しようとしてしまうんです。だからなかなか正確にいかない…。少し時間をかけました。
できあがったハーモニーが同じものだとします。どっちがレベルが高いでしょうか。言うまでもなく、相手の音を聞きながらファとミをぶつける方が本物の合唱です。ムチでしごかれてソプラノはひたすらミを出し、アルトはひたすらファをだそうとする…そんなの合唱じゃありません。
時間をかけただけあって、かなり精度が上がりました。この「ぶつける力」は他の曲の他の部分にも応用できます。その部分を整えるのではなく、そういう力を身に付けることが大切です。

休憩の後は「加賀の子ども歌」に時間を投入しました。まずは欠席者のための共通理解事項を記します。
P43の2段目。「いささの」という言葉が分かれて歌われますが、メゾソプラノもアルトも全部ソプラノから歌ってください。つまりソプラノは楽譜どおり。メゾソプラノは「いさ いささの」となり、アルトは「いさ いさ いささの」と歌うことになります。
「いささ」とは小魚の名前で「かしらぼ」とは「親分」「おかしら」という意味ですから、「いさいさいささの」と歌うアルトは「メダ メダ メダカ」と歌うことと同じになり、少し意味合いが変になりますが、それよりも歌詞がハッキリと客席に伝わることを重視するための処理です。
この処理はあと2か所。P44の43小節目。アルトの「おひとよし」をメゾソプラノも歌ってください。
同じページの49小節目、アルトの「おふたつ」もメゾソプラノが助けることにします。

このようなことができるのも、最初の音取りの段階で、時間はかかっても全員で全部のパートを歌って練習をした成果です。「そのように歌ってください」と言えば「はい、分かりました」で歌えてしまう。うれしいことですね。
あと、これは嶋田先生の問題ですが、P45~46にかけての64~68小節目のテンポ設定を変更します。つまりテンポが速くなります。
みなさんに配布してあるCDは地元・金沢放送児童合唱団の演奏ですが、指揮者の山瀬先生のテンポは少し速すぎる部分があります。特に終曲「北陸づくし」はCDのように歌ったら、客席に音の突風が一瞬に過ぎ去ったような感じで、聴いている人々はあっけにとられて終了、「何だか訳がわからないうちに、何だかムズカシイ曲が終わった」という印象しか与えないと思います。もう少し、コトバの語感を生かして、何を言っているのか伝わるような演奏にしたいです。
もはやCDは、参考になるだけで、「空」の表現は「空」独自の表現として完成されつつあります。それも、うれしいことですね。

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