SORA NOTE

嶋田先生から空のみんなへ


発声と音の理解

みなさんの新しい学校生活は、どのようにスタートしたのでしょうか?新しい学校、新しい担任の先生、そして新しい友達…。みなさんの学校生活が楽しく充実したものになりますように、切に祈っています。
さて、「空」の生活はというと、とにかく今は声作り。そして音に対する理解をいかに高めるか…です。声が無ければどんな曲を歌うにしても自分を生かすことができません。また、音に対する理解が無ければ、ただ歌わされているだけで、自分の表現を十分に発揮することはできません。
というわけで、まずは発声練習。ですが「空」は一週間に一度の2時間30分しか練習できませんから、いわゆる中学校でよく使う「犬のおなかがハハハハハ~」とか「あくびが出るよ、アアアア~」などという練習はしません。使うのは6月の合唱祭で歌う「空と樹海と湖と」です。
授業でも同じですが、「ねらい」を示すことが大切です。この場合の「ねらい」とは、①高い声や低い声が出せるようになること ②息継ぎが上手になること ③ロングトーン(長く伸ばす音)が少しでも長くなるこいと などです。
つまり「空と樹海と湖と」を歌うと言っても、強弱や言葉の処理などは一切関係なし。全部フォルティシモで歌い飛ばします。それをソプラノもメゾソプラノもアルトも全部のパートを歌いました。とにかく声を出す。そこが大切です。
しかし先生の中では、もう一つの「ねらい」がありました。それは「自分には、どのパートが一番向いているのだろうか」と考えてくれる子、判断してくれる子を育てることです。
普通の児童合唱団なら「やりたいパートはどこですか?」で終わるところでしょう。「空」の場合は、もちろん「やりたいパート」も重視しますけれども、もっと重視することは「自分に向いているパート」です。もちろん小学生や中学生は合唱の経験値が十分ではありませんから、その判断に正確さが欠けることはあるかもしれません。そこは嶋田先生が最終的に確認をします。
いかに響く声を出すか、いかに全力で歌うか、そんな要求をしながら「空と樹海と湖と」の3パートを全部全員で歌い通しました。良い響きだったと思います。
そして、全員が「空と樹海と湖と」の音を、ざっくりとですが把握してくれたことも大きいですね。パートが決まったら、本格的な表現の練習をしましょう。6月の合唱祭が楽しみです。
この練習をしながら、倍音の話もしました。これは想定外で、倍音まで指導する予定はなかったのですが、すごく良く鳴っていたので思わず「聞こえるか?」と聞いてしまいました。以前に比べると、多くの子が「聞こえる」「聞こえるような気がする」と手を上げてくれるようになりました。倍音については、別に時間をかけて指導する予定です。

後半は「かたつむり」と「証城寺のたぬき囃子」を使って、二つのパートが同時に頭の中で鳴るトレーニングです。相手のパートの動きを完全に理解して自分のパートを歌うという力ですね。
嶋田先生は小学校6年生の時に合唱を始めて、以来40年以上も歌い続けていますから分かるのです。相手の動きを完全に分かっていて自分のパートを歌うことの楽しさを。
これが分かっていないと、ただひたすら自分のパートの音だけを練習して、他のパートのことは一切知らない…という子が育つことになります。他のパートが間違えようが音が下がろうが、とにかく自分の音を正確に歌おうとする、そんな子が育ちます。
相手の音が下がったら自分のパートも音を下げて合わせるのが合唱です。それはイケナイことではない。先日の東海メールクワイアーの演奏会でも、どこかのパートの音が下がって、他のパートがそれに合わせて音を下げ、全体としては曲が終わった時に半音下がっていた…という曲がありましたが、ソーツ先生は何もおっしゃいませんでした。世界的な指揮者が問題にしないのです。
ソーツ先生が問題にするのは、全体としてハモらないことです。音が上がろうが下がろうが、全体として全員が合わせてハモっていれば良し…というのが合唱です。他のパートに狂いが生じている時に、自分のパートがひたすら正確に歌ったら、結果的にはハモりません。変な言葉ですが、友達に狂いが生じた時に自分も同じように狂って合わせてあげられれば、二人とも調和していることとなり、結果として友達が狂ったことにはならないのです。他の奴らがどうなろうとオレは自分の道を行く…なんて言う人には合唱はできません。
相手の動きを完全に分かっていて自分のパートを歌うことの楽しさを味わうためには、二つあるいは三つのパートの音が同時に頭の中で鳴っていることが必要です。
で、「でんでんむしむし かたつむり」というメロディーと「しょしょしょじょじ しょじょじのにわは」というメロディーをいっぺんに歌ってもらった。非常に面白かったですね。そして、みなさんの中に大きな戸惑いがあることはすぐに分かりましたから、また新しい作戦を考えてきます。
しかし、その後に「禁じられた遊び」や「空がこんなに青いとは」を使って、2小節ごとに他のパートに飛び移るという練習をしたところ、けっこう上手くできました。もうすでに、みなさんの中では「二つのパートの音が同時に頭の中で鳴る」という力が高まりつつあるように思いました。
ですが、その力を証明するためには「証城寺とカタツムリ」を歌って見せる必要があります。またゲーム感覚で、お一人お一人に歌っていただきましょう(笑)。

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