SORA NOTE

嶋田先生から空のみんなへ


これまで多くの合唱団が「鮎の歌」を歌ってくれましたが、
「鮎の歌」は合唱団「空」が一番です

湯山先生をお迎えする10月30日(日)を翌日に控えた29日(土)の練習は、「名旋律集」からスタートしました。集まったメンバーのパート人数バランスが悪く、ユニゾンの多い「名旋律集」を歌っている間にメンバーが集まるかと思ったのです。

「夢を描いて」と「プレゼントマイラブ」の2曲は、音楽が潜在的に持っているリズム感について指摘しました。その時の表現は、まるで湖の水面のように静かになっていて、それはそれで極めて美しいのですが躍動感がありません。

縄跳びの縄は、同じスピードで回転しているように見えますが、地面に着地する時にはピシッと、頭の上を通過する時にはフワッと回っています。それが、縄跳びという種目が潜在的に持っているリズムです。

全く同じことが音楽にも言えます。リズムが湖の水面のように止まっていてはいけない。「弾むリズム」というのはそういう感覚を言うのです。

「赤い風船とんだ」は音程と歌詞の発音です。♭ひとつのヘ長調は、ラの音が低くなりがちで、これは小学校4年生の「もみじ」(文部省唱歌)にも言えます。小学校の授業ではかすかな音程の違いなど問題になりませんが、「空」のレベルでは大問題です。何度も何度も繰り返して修正しました。

歌詞の発音は、どんな曲でも同じですが、ノンベンダラリと歌っていては違う意味の言葉に聞こえてしまいます。P5の「花屋さんが見てた」の「は」がハッキリしないから、「穴屋さんが見てた」と聞こえます。「ペンキ屋さんが見てた」の「ぺ」がハッキリしないから、「便器屋さんが見てた」と聞こえてしまいます。これは、注意をしたら一発で修正できました。さすがです。

後半は「鮎の歌」の「わさび田」と「いちごたちよ」のハーモニーの修正です。ピアノも抜き、歌詞もなしで、母音だけでテンポもゆっくりにして、ハーモニーを確認していきます。ここで大切なことは、表現を磨くことは一切忘れて、ひたすらハーモニーの中に自分の声が溶け合うということです。だから、ホンのちょっとした音程の違いでも妥協せず、正確な響きを要求しました。かなりプロフェッショナルな練習になりましたが、勢いに任せて不正確な音程で歌っていた部分が、かなり修正できました。修正できればハーモニーが美しくなります。歌っている皆さんも、気持ちが良かったのではないかと思います。

さて、そのようにして湯山先生をお迎えした10月30日(日)ですが、先生が到着される前の1時間が貴重でした。この1時間を、前日と全く同じように「わさび田」と「いちごたちよ」のハーモニーの修正に投入しました。入ってこられた湯山先生は開口一番、「ハーモニーに透明感が出てきましたね」とおっしゃいました。身が震えるほど嬉しかったです。

「名旋律集」から始まった湯山先生のリハーサルは素晴らしいものでした。いただいた指摘は


「夢をえがいて」は♩≒112よりホンの少し速めに。
「赤い風船とんだ」は終結部の「母さん」の「か」をハッキリ。
「矢車草」は13小節目をキチンとPにして16小節目のクレシェンドをハッキリ。
「夕やけのうた」は言葉をハッキリ。16小節目と38小節目はピアノにテヌートがあり、ここをたっぷりと弾きますから、結果コーラスはゆっくりになります。

といったものでした。

「かもめの歌」では「きみは鳥・きみは花」にソプラノの旋律をハッキリという指摘がありましたが、これは3人欠けている状態でどうこう言っても仕方がありませんから、気にすることはありません。

「かもめの歌」は言葉をハッキリという指摘がありました。主旋律が全部のパートに移動していきますから、これは各パートで集中し注意していきましょう。

「雲」は絶賛です。冒頭の「おばけの」の「お」を強めにしてハッキリという指摘がありました。

午後になり、「四国の子ども歌」です。これは新しい指摘は全く無く、ひたすら何度も繰り返して歌う時間となりました。3回も繰り返して歌った曲もあり、その全てが絶妙な表現となり、すごく良かったと思います。

ですが、ソプラノの音程に問題があります。このレベルになると、ホンのちょっとした音程が耳につきます。修正できるように次回に取り組みます。

休憩の後「鮎の歌」です。唯一、指摘を受けたのは「猪譚」の終結部。「あらじしだー」を叫ぶ部分です。言葉をハッキリさせるために、楽譜通りの16分音符に固執することなく8分音符で歌うことになりました。ですが、それでもハッキリしないということで、4分音符でも良いというお言葉をいただきました。

これは次回の練習で確認します。作曲者ご自身が「そうしても良い」と言われているので、楽譜に固執する必要はありません。

作曲家の中には、いったん作曲したら絶対に変えないという先生がおられます。ですが、石井勧先生はドンドン変える方でした。東海メールとのリハーサルの最中に絶対的代表作「枯木と太陽の歌」で「こうしましょう」と言って、その数か月後にカワイ出版の正式楽譜が修正されていました。三木稔先生は「こうしたら良いと思ったことをドンドン言ってください。楽譜を直しますから」と東海メールに面と向かっておっしゃいました。

ストラヴィンスキーはオーケストラとのリハーサル中に、ドンドン楽譜を書き直しておられたことは、NHK交響楽団の中でも有名な話です。

湯山先生も、良いと思ったことは躊躇なく実行される方です。実際に十数年前の「空」の練習で「ゆりがさいてる」という曲を練習されている時に、ヘ長調だった曲を「もう少し高い声で歌いたいですね」と言われて、数か月後に増刷された楽譜がト長調になっていたということがあります。今、カワイから出版されている楽譜は、「空」とのリハーサルで修正された楽譜なのです。

というわけで、ここは次回、歌舞伎役者のセリフのようにします。「鮎の歌」の最新バージョンが全国に先駆けて「空」で表現されるのです。やりましょう。

そして、全曲が終わった後、湯山先生の口から出てきた言葉は

「素晴らしいです。今まで多くの合唱団が『鮎の歌』を歌ってきましたが、『鮎の歌』は合唱団「空」が一番です。」

というものでした。

嶋田先生も自分のことを「鮎の歌」指揮回数日本一だと思っていますが、まさか湯山先生からこのような言葉をいただけるとは想像もしていませんでした。そして、この言葉は嶋田先生に対してではなく、合唱団「空」に対していただいた言葉なのです。みなさんは「鮎の歌」に関しては、歴史上の日本一なのですよ。

こうなったら、みんなの総力を結集して、歴史に残る演奏をしなくてはなりません。みんな、よろしくお願いします。力を貸してください。

こんな熱い思いを感じさせてくれる「空」の子どもたちに、嶋田先生は感謝の言葉もありません。

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