SORA NOTE

嶋田先生から空のみんなへ


ドの音は262回、ラの音なら440回ノドを震わせる
機械じゃないので不可能ってもんです。でも、、、

この日も「陽が昇る」の確認からスタートしました。耳で音楽をとらえて歌うことを深めたいのですが,新しいメンバーも多いので,楽譜を配ることにしました。楽譜を見ないで耳だけで歌う…というのは,ものすごく力が付くのですけれども,しかし時間がかかります。5月24日が本番だということを考えると,力を付けることよりも,その曲を覚えることを優先させなくてはなりません。
先生の小学校にも合唱部があり,その合唱部を指導している若い先生から「どのような練習をすると良いのですか?」と質問を受けます。
いちばん大切だ…と言うことは「耳を育てること」です。ドならド,レならレの音を聞いて,その音を完全な音程で声を出すこと。聞いた音をそのまま再現するだけなのですが,みなさんが思うほど簡単なことではありません。
人間のノドは左右ふたつの骨からできていて,その骨がぶつかり合うことで声となります。スズムシのハネと同じです。たとえばドレミファのドは,ノドの骨が1秒間に262回ぶつかり合うことでドの声となります。これが261回ぶつかると,その音はもはやドではなく,少し低い声になります。先生が時々,「音が低いです」「音が違います」と指摘するのは,このことです。
逆に263回ぶつかると少し高い音になります。やりすぎて294回ぶつけると,高い音になってレになるのです。ミなら330回,ラなら440回,ノドの骨をぶつければ良いわけですね。
何を言っているのか分からん人は,ノドに手を当てて「あー」と声を出してごらんなさい。ノドが震えていることが分かるはずです。その震える回数をピッタリ523回にすれば,高いドの声になるというわけです。参考までに表をのせておきます。

では,ラの音を出そうと思って,自分のノドを1秒間にピッタリ440回震えるようにコントロールできる人はいるのでしょうか?
そんな人間が,この世にいるはずがありません。そりゃ不可能ってもんです。不可能ですが,音とか声の高さというものは,そういうものなんです。「ラの音を出そう」と思って声を出すってことは,「1秒間に440回ノドを振るわせよう」と思って声を出すってことなんです。それが430回だとか450回だったら,音が違うということになります。
どんな優秀な歌手でも,どんな天才でも,みんな適当に声を出しているんです。機械じゃない,人間なのですから,適当にやるしかありません。ですが,その「適当」にやった結果が,ラの音なら440回に近ければ近いほど良い…ということになるのです。
先生が「音をよく聞いて」と言うのはそういう意味で,「耳を育てる」とはそういう意味なのです。これは時間がかかるよなあ。
というわけで,そんなことを考えるより,目の前にある目標をクリアすることの方が優先されることもあるのです。ちなみに新しく配った楽譜は,ちょっと合いの手を入れるだけですから,楽譜さえ見ていれば簡単にできてしまいました。
新しいメンバーも,ただいま休団中というメンバーも,楽譜さえあればOKという世界ですから,一人でも多くのメンバーの参加を望みます。「出られない予定だったけど,ちょっと無理すれば出られそう。やっぱり出ることにしたいです」などという子がいたら嬉しいですね。

後半は「雨の遊園地」と「雲」。6月の愛知県合唱連盟合唱祭が終わったら,他の曲に全力投球しましょうね。ということは,この2曲は合唱祭の後は当分やらないということになります。
この日の「雨の遊園地」は,もの悲しい雰囲気で少し暗い感じがしました。ある意味で,歌詞に対する共感が膨らみ,みんなが抱くイメージが豊かになってきた証拠…とも分析できます。
「ねずみ色の雨の中,一人ぼっちの子スズメと,一人ぼっちの女の子」とあり,「光る滴に涙が光る」と詩が続けば,悲しく沈んだ気持ちを歌いたくなりますよね。
一人ぼっちという言葉を,お父さんもお母さんもいない…という状況だと仮定してみましょう。そうであったとしても,この涙は,その身の上を悲しむ涙ではないと思うのです。
両親を亡くした悲しみの涙なのではなく,子スズメが「あなたもそうなのね」と女の子を思いやって流す涙なのだと思います。同時に女の子も,子スズメに対して「あなたもそうなのね」と思いやって涙を流します。お互いが,お互いの身の上を思いやって涙を流している。なんと美しい情景でしょうか。
言葉の表面上の意味にだまされてはいけません。涙だから悲しく,一人ぼっちだから寂しく歌うというのでは,あまりにも表面的な歌になってしまいます。
本当に相手の気持ちが分かる,相手の立場に真実の共感をもつ。人間として最も美しい心の動きを,詩は歌っています。しつこいくらいに「あたたかく」「明るく」と指示を出したのは,そういう意味からでした。
「雲」は,かなり激しい,劇的な表現が生み出されつつあります。湯山先生をあっと言わせるような,思い切り激しい演奏がしたいですね。できる予感がします。

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