SORA NOTE

嶋田先生から空のみんなへ


合唱とは
「一人一人が自分を磨き、自分を透明にする」作業
「くもり」のない透き通った音を出すための努力を

2月24日(水)は名古屋ビジュアルアーツ専門学校での「小さな世界」CD録音、ごくろうさまでした。15人が集まり、短い時間の中で7テイクの録音をとりました。嶋田先生的には、4テイク目、6テイク目、7テイク目が良かったと思います。
録音というものは、お客様の耳が相手ではなく、機械が相手ですから、何回でもやり直しができます。7テイクをとったのですから、そのテイクを全部使えば、15名×7テイクで105人が歌っているように仕上げることも可能です。嶋田先生的には、4,6,7のテイクを重ねて、45人で歌っている状態で仕上げてほしいと思っていますが、そこはビジュアルアーツの製作方針もあるでしょうから、何とも言えません。楽しみに待ちましょう。
この日、面白かったことは、「世界はせまい」「世界は同じ」という歌詞が「背か胃はせまい」「背か胃は同じ」と聞こえないように指示を出し、みなさんがその指示を守ろうと奮闘努力をしていた様子でした。
今回この曲を歌うことで、ひらがなを読むだけの歌い方をしていると、歌詞が全く別の意味に聞こえてしまう…ということを腹の底から実感してくれた子が多いのではないかと思っています。

さて、27日は、小学生の見学者があるかもしれないという情報を得ていたので、「夢をえがいて」という曲を印刷して持って行きました。1番を歌うと26小節あるのですが、耳の力が高まっていますから、嶋田先生が1~2回歌って聞かせるだけで全部歌えるようになります。あとは2番3番と歌詞を変えるだけです。
本当に、耳の力って大切だなあと思います。その力を育てる練習に力を入れてよかったなあ…とも。聴く力のない人が歌う練習を100時間やっても、それは1秒の効果もないということを、みなさんも理解してくれているようです。
音を取ることは2~3分で終了し、次は伸びやかな声を作ることです。これは終結部の「わいてくる」という部分を使いました。♭ラから高いソまで上昇する音型です。これを一人一人が歌う。高いソは声がひっくり返ってしまうこともあり、安定した声を出すことは容易ではありません。しかしこれは、息のスピードを速くすることでクリアできます。一人一人にそのことを手を変え品を変え説明していきました。
この終結部は対旋律があり、同じ♭ラから始まって高いミまで上昇する音型です。これも一人一人。そうして、高いソは危ないけど高いミなら安定して出せる子を発見していきます。もちろん自分自身でも分かるはずです。大切なことは「どこまでの音域が出せるか」ではなく「どの音域を安定して出すことができるか」なのです。その安定して出せる音域が高い部分にあればソプラノを担当し、低い部分にあればアルトを担当するということになるわけです。個性を生かすということは、そういうことなのです。
で、「高いソまでいく旋律」と「高いミまでいく対旋律」を一対一でハモらせるということをやりました。これは聞いていても、けっこう楽しかったですよ、先生も。
音を取る耳の力、伸びやかな声を作る…ときて、最後は「歌い方」です。「小さな世界」と同じように、何も考えないで平仮名歌いをしているとマズイ部分があります。それは「うたっていれば、うたっていれば」と歌う部分です。ヘタをすると「歌って入れ歯、歌って入れ歯」と聞こえるわけ。その原因は「いれば」の「い」が3拍目にあること。3拍目は基本的に強拍ですから、どうしても「い」が固くなる。結果「入れ歯」と聞こえることになり、歌い手はそこをカバーする技を身に付けなければなりません。
「空」にとっては日常茶飯事の練習ですが、第20回演奏会で歌う曲は数多くあり、いろいろなケースが出てきますから、それを一つ一つ潰していくことは根気のいる作業です。

そんな練習を見学者には見てもらいましたが、どうだったのかな。入ってくださると良いですね。

その他は「四国の子ども歌」から「終曲~子守歌」の主旋律を歌いました。P50終結部の「ねんねする」の部分を3声に分かれてハーモニーを作りました。
そして「葡萄と風と赤とんぼ」を使い、音程を正確にするトレーニングです。
合唱というものは「一人一人が自分を磨き」、「自分を透明にする」作業だ…というのは関西合唱連盟の元理事長で、東海メールクワイアー指揮者の須賀敬一先生の言葉です。「透明になった団員」が50名か60名か重なる。本当に透き通ったガラスなら、何枚重なっても向こうの景色を見通すことができますが、少しでもくもりがあるガラスが重なったら向こうの景色は見えなくなります。一人にとってはわずかな「くもり」でも、たくさん重なれば見えなくなるほどの「くもり」になる。だから一人一人が「自分を磨き、透き通らせる」そういう努力をするのだ…という須賀先生の教えです。
一流の人は言うことが違います。今度の6月、その須賀先生の指揮で東海メールクワイアーは演奏会をします。須賀先生の指導を、子ども向けに焼き直し翻訳して「空」のみんなに伝えるのが嶋田先生の使命だと思っています。

(1) 今日の練習は楽しかったですか?   3・9ポイント
(2) 今日、「自分は上手になった」と思ったり「すこし進歩した」と感じたりしたことがありましたか?   3・58ポイント

今回はじめて、質問(2)で3.5ポイントを超えることができました。
一人一人に目を向けて、「自分を磨こう」としている子の支援をいかに楽しく的確なものにしていくか、来週も考えます。

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