SORA NOTE

嶋田先生から空のみんなへ


合唱団「空」の練習は1回1回が生き物です

今日もスタジオ・アイでの練習。期末テスト、学年末テストの時期ではありますが、大勢のメンバーが集まっての練習は熱を帯びていました。先週はアートピア音楽祭を何とか乗り切ることができたので、今日は「うなぎの子守唄」に取り組む予定でした。

組曲「駿河のうた」は、あまり少人数では歌えませんので、人数によっては他の曲を…と考えていましたが、先生が頭の中で考えてきた練習を十全に(まさに考えてきたとおりに)させてくれたのは集まってくれたメンバーのおかげです。一人一人に感謝。

濱田先生には申し訳ありませんが、合唱団「空」の練習は1回1回が生き物です。嶋田先生も「今回はどんな練習をしようかな」と一応はいろいろ考えて練習会場に来るのですが、毎回、その日に会場に入ってから「やる曲」と「練習内容」を決めています。予定はあくまでも予定であって、その日の人数や集まったメンバーの顔ぶれを見て、そのメンバーの力量を高めるのに最もふさわしく、最も楽しめそうな「内容」を瞬間的に決定しています。だから、事前に濱田先生に「やる曲」と「練習内容」を伝えることは実質上不可能なのです。その意味で、嶋田先生が事前に考えてきた予定のとおりに練習が進められることは滅多にありません。今日は、本当に「予定どおり」で、嶋田先生も十分に音楽を楽しむことができました。ありがとう。

「うなぎの子守唄」は名曲です。「いのち」の大切さ、「時間」の大切さを教えてくれます。歌詞の前半を読むだけならば、食っちゃ寝・食っちゃ寝しているウナギが太って、やがて養殖場から出荷されていくという、それだけの話です。ですが、そのウナギに毎日毎日エサをあげ、まるで自分の子供のように慈しみをもって育てている「人間」がいるのです。まさにその人にとっては、ウナギは自分の分身であり子供です。

親というものは、自分の子供を、まさに愛情をもって育てています。みなさんも育てられている。そして、みなさんも、やがて結婚するにちがいない。その結婚式の日、みなさんが「その家の子」として家を出る瞬間、結婚式場に向かうという一歩、家を出る一歩は、お父さんやお母さんにとって、自分の娘が「自分の娘でなくなる瞬間」です。その瞬間、お父さんやお母さんの心の中には、「夜明けの虹が出るだろう」と歌うのです。人間の成長、成長することによって必ず起こる「別れ」。その「別れ」は受け入れなければならない「別れ」であり、その「寂しさ」乗り越えなければならない「寂しさ」なのです。その「いのち」と「時間」の大切さを湯山先生の音楽にのせて歌う時、「うなぎの子守唄」を歌う時に、嶋田先生の心の中には常に熱い思いがあふれます。

練習はまず、曲の終結部のハーモニーをつくります。「う~、な~、ぎ~」というハーモニー。そして「おまえの見る夢どんな夢、ねむれ、ねむれ、うなぎ」というコーダの部分。父さんや母さんが、明日は娘の結婚式という夜に、娘の寝顔を見ながら「娘の見る夢どんな夢」と歌う部分です。その時、娘が生まれた時から幼稚園の入園式や小学校の卒業式まで、あらゆる思い出が走馬燈のように繰り広げられることでしょう。「売られていく日」とは「出発の日」であり「旅立ちの日」という意味です。音楽全体の終点がどうなるのか、まず味わってもらっておいてから、冒頭の練習に入るのが嶋田流の練習方法。「太平洋の海原の、どこかで生まれたウナギの子」という歌い出し。時々音がぶつかる不協和音が使われていますが、和音の勉強をここ数ヶ月重ねてきていますからスムーズに音取りが進みます。

練習をしながら思ったのですが、全員が初見であるはずのこの曲を、すでに「知っている」メンバーが多い。これは間違いないように感じました。ある程度CDが聴き込まれている、その手応えを確かに感じました。それは、もちろん全員ではなく、1回も聴いていない子ももちろんいます。聴いたことがある子か無い子か、そのくらいのことは長年の経験からすぐに分かります。まあ、しかし、そのことはどうでもよろしい。多くの子が聴いてくれていることは確かなことです。それがとても嬉しいことですし、そもそも「駿河のうた」も「鮎の歌」も、歌うことも楽しいですが聴いて楽しめる音楽です。

さて、1番を取ってしまえば、練習は終わりです。なぜかというと、2番は半音上がって歌詞が変わるだけだからです。3番は?同様に半音上がるだけの話。これぞ湯山先生特有の「転調の魔術」です。転調による音楽の魅力的な展開にかけては、湯山先生は魔術師であり天才的です。ただし、ピアニストにとっては大変なことであり、濱田先生も今日は本当にご苦労様でございました。

というわけで、6分30秒かかる大曲が、1時間そこそこで音取り完了です。いやー、我ながら、上手くいったなあ。繰り返しますが、この効率の良さは嶋田先生の手柄ではなく、今日集まったメンバーの力量の高まりと集中力の賜であるということを記しておきます。

今日は、お客様がありました。堀田由香さん。嶋田先生が初めて担任した時の2年生です。翌年つくった合唱部では3年生から入部を認めたので、3年生から4年間、嶋田先生の指揮で歌ったメンバーです。5年生の時に「鮎の歌」全曲を歌い、6年生で「駿河のうた」全曲を歌って卒業していきました。その子が33才になって、ジュニアを連れて遊びにきてくれました。嶋田先生の心は、21年前に「夜明けの虹が出るだろう」という思いで送り出した子が帰ってきてくれたような、そんな思いでした。

さて、11時40分となり、1回だけ「雉」「わさび田」「いちごたちよ」「鮎の歌」を歌いました。アートピア音楽祭での3曲に「いちごたちよ」が加わっていますが、この曲もかなりの水準で歌えるようになってきました。この「雉」「わさび田」「鮎の歌」については、「夏の合宿までもう練習はしない、みなさんの心の中で発酵させておいてください。」と宣言しました。が、この宣言は取り消し撤回しておきます。なぜかというと、今、受験のために冬眠中で、春になったら戻ってくるメンバーに失礼だからです。この「合宿まで発酵させておいて宣言」は、例年、6月の合唱連盟合唱祭で歌った曲について出されてきたものです。例年6月に出していたその宣言を、2月の時点で出せる(そのように歌える曲がある)ということは大きな意味がありますね。というわけで、ちょっと口がすべりました。まだ取り組んでいない「猪譚」を含めて、3月以降も合唱組曲「鮎の歌」へのチャレンジは続けます。

最後の5分、「イルカの翼」と「ねむれないおおかみ」を歌ってみました。楽譜のタイトルになっている曲をプログラムの中から外すことはありえないと思ったからです。これも練習することなく、ただ1回歌ってみただけなのですが、けっこう上手に歌えました。

2月21日は、とても中身の濃い、充実した練習ができたと思っています。

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