SORA NOTE

嶋田先生から空のみんなへ


ハーモニーの乱れも、なんとか「ごまかしきる」力

この日は午後から夕方にかけて、ハロウイン・コンサートに出演するため、「エーデルワイス」と「パフ」から。両方とも、本来の調性から1音下げて、スロー・テンポでスタートします。

「エーデルワイス」などは先週音を取っただけで、どんな表現にするのかをみんなに伝えるのは今日が初めて。「パフ」も先週の日曜日に中田先生が帰られた後、5分くらい練習しただけ。つまり、両曲ともに、嶋田先生のアナリーゼを伝えるのは、ほとんど本番当日になってしまったということになります。

スロー・テンポから徐々にテンポを上げていく、ピアニシモから徐々にフォルテシモに上げていく、低い音から徐々に高い音(調性)に上げていく。これは、J・A・ロッシーニがよく使った「クレッシェンド技法」と呼ばれるもので、彼の作品は「ウイリアム・テル序曲」にしても「セビリアの理髪師序曲」にしても「セミラーミデ序曲」にしても、みんな終盤にいくほど盛り上がるようになっています。この技法は、たった1回きりの出会いというか、1回だけのお客さんを興奮させるのにはもってこいで、ためにロッシーニは、歌劇「ウイリアム・テル」以外にはそれほどたいした作品がないにもかかわらず、当時のヨーロッパではベートーヴェンよりも人気があった。

後世の我々の耳からすれば、作品の密度や完成度では100パーセント、ベートーヴェンに軍配があがるでしょうが、生前はロッシーニの方が人気があった。だから、あの渡辺貞夫さんも、愛・地球博で、後半になるほど盛り上がっていく演出をしています。

これ、コンサート演出のイロハ。

①問題は、合唱団「空」に、半音ずつ音を上げていく…という技術が備わっているか、という…でしたが、これは見事に備わっていましたのでOK。というか、備わっていることは嶋田先生の確信であって、その確信がなければ、こんなアイデアを出しはしない。

②次に、指を上にピッピッと上げると「半音上がりますよ」というサイン。これも練習では上手くいきました。

③最後に、歌詞の問題ですが、嶋田先生が指を1本だせばヴォーカリーゼ(すなわちハミングやラララ)、2本出せば歌詞を歌う。これもOKで、「エーデルワイス」の1番くらいの歌詞ならみんな覚えています。あとは指の数。で、星ヶ丘テラスに乗り込んで行って、主催者・司会者と最終打合せの結果、「小さい秋みつけた」「さわると秋がさびしがる」「雪の降るまちを」「さくら」そして「エーデルワイス」「パフ」というプログラムが決まりました。

午後の1回目。すべて上手くいきましたが、「エーデルワイス」にハーモニーの乱れが生じ、ヒヤヒヤしましたね。それでも破綻なく、なんとか「ごまかしきる」のは東海メールクワイアーと同じで、すばらしい力です。(ほめているのか、けなしているのか、微妙な言葉ですね)

夕方、2回目の本番に向かうと、会場は1回目の3倍くらい入っていて、ほぼ満席の状態。200人くらいいたのではないかな。中には、1回目を聴いて、「もう一度聴きたい」と残ってくださったお客様もいて、まさに「お客様は神様です」ってな感じ。問題が起こったのは「エーデルワイス」でした。②の約束、すなわち、指を上にピッピッと上げると「半音上がりますよ」というサインを出していないのにもかかわらず、勝手にドンドン半音上がっていってしまう。最初から1音下げてはあるものの、あまり音を上げすぎると、アルトも苦しいし、ソプラノも歌詞を歌いにくくなります。かなりアセりましたが、何とか上手くまとめました。

「パフ」で、客席から手拍子を引き出すという演出も上手くいきました。このコンサートに出演してくれた30数名の団員と、父母会の方々に厚く感謝申し上げます。主催者には「何か、また面白いことがあったら、合唱団「空」をよろしく。」と言っておきました。

最後に、嶋田先生も忘れていたことをクイズにします。

①北海道から東京、名古屋、福岡までの「ビッグ・カメラ」店内で流れているCMソング「ビ~ッグ、ビッグ、ビッグ、ビッグ・カメラ」は、合唱団「空」が歌っている。イエスかノーか。

②合唱団「空」は、世界的サクソフォーン奏者、ジャズ演奏家の渡辺貞夫と共演したことがある。イエスかノーか。

③嶋田先生が、生まれてから最初に覚えたメロデイーは「雪の降るまちを」である。イエスかノーか。答は全て「イエス」です。

今度の演奏会、赤ん坊だった嶋田先生に「雪の降るまちを」を口笛で吹いてくれた父、80才になる父親が聴きにきてくれます。

あと2週間、合唱団「空」のみなさんの、鋭意なる努力に期待します。先生も、がんばります。

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