SORA NOTE

嶋田先生から空のみんなへ


「努力と成果とはヤジロベエのように釣り合っている」を
体験してほしい

「マリちゃんの歩いた夢」から練習開始。

①「田うえ」は1回通しただけ。先週の音取りを、正確に覚えていてくれるのに感心します。人数は多いとは言えないのが悩みですが、現有メンバーの力は確実なものとなりつつあります。

②「雪の花」は2小節ずつハモらせながら音取り。最小限の時間で、効率よく進めることができました。

③「テレビ」も音取り。これは楽しい歌ですから元気よく。フランク永井…と言っても、子供たちは知らない。日高君の健闘に感謝。フランク永井の「歌」は男の子で歌いたいので、他のメンバーの参加を待ってます。音取り2曲が、あっと言う間に終わってしまい、とても嬉しかった。

「Viljandi Karjapoiss」も2回目の練習ですが、きれいにハモります。覚えてしまえば難しい曲ではありません。互いの音をよく聴きあって、ハーモニーを構築するトレーニングをするのに打って付けの曲です。この日はテンポを楽譜の指定どおりにして、曲のイメージも膨らむようにしていきました。

「ほしとたんぽぽ」は前半の「つゆ」「こだまでしょうか」「みんなをすきに」「き」「わたしとことりとすずと」を練習しました。「いけない」と思ったら止めようと思っていましたが、何回か止まることはありましたが、ほとんど「やりなおし」を要求することはありませんでした。

休憩後、「よみがえる光」は後半のテンポ設定の練習。それと平行して、やわらかいハーモニーではなく、強い声・固い声でダイナミックな表現を作るトレーニングを行いました。今の「空」は「やわらかさ」はピカイチですが、劇的な(ドラマチックな)声やパンチ力のある声に乏しいからです。考えてみると、「空」の長所を伸ばすためには「ほしとたんぽぽ」や「Viljandi Karjapoiss」などは、とてもよい教材で、「空」の弱点をクリアするために「よみがえる光」はとてもよい教材だと言うことができます。この声の訓練は、思っていた以上に成果をあげ、集まったメンバーの声が(今日一日だけのことかもしれませんが)確かに変わりました。「今日一日だけかもしれない進歩」を「いつでもできる確かな実力」としていくために、来週以降も同じ練習を重ねていこうと思いました。

午後、パートリーダーの恒川さん、野々垣さんから相談を受け、先生のセカンドハウスで2時間半ほど話をしました。相談の内容をカンタンに言えば、「難しい曲の時に、小学生のメンバーが苦しんでいるようだけれども、どうしたらよいだろうか」というものでした。自分のことだけではなく、周囲のことや全体のことに目を配り、気遣ってくれていることに感謝を禁じ得ません。

根源的な課題として、小学生と高校・大学生とが同じ練習をし、同じ曲に取り組むということに無理があります。「蝶」などという曲は、相当に訓練された大人の女声合唱団でも辟易するくらいの内容がありますから、鍛えられた「空」の高校生でも、今は大変だと思う。ましてや小学生たちは、もっと大変でしょう。

この課題について、作曲家の新実徳英先生は、嶋田先生に何度もアドバイスをくださっています。『合唱団「空」は、ジュニアチーム(小学生~中学1年)とシニアチーム(中学2年生~大学生)の2部編成にするべきですよ』と。去年の6月にお目にかかった時も『「空」のみんなは元気ですか?ジュニアとシニアに分けましたか?』と言われました。今のところ嶋田先生は、新実先生のせっかくのアドバイスを無視していることになるわけです。嶋田先生だって、名古屋少年少女をはじめ、NHK東京児童合唱団、フォーラム21少年少女など、多くの合唱団がジュニアとシニアに分かれていることくらい、百も承知、千も承知です。

では、どうして、そうしないかと言うと、理由は2つある。理由の1つ目は、合唱団「空」の存在理由というか、嶋田先生の教育方針というものが、「合唱が上手な子を育てる」ことではなく、「努力すれば(練習すれば)必ず進歩する(きっといいことがある)ということを、身をもって体験し知っている子を育てる」ことにある…ということです。この方針を実現するために、野球やサッカーのチームを作ってもよかったのです。ですが、嶋田先生は、たまたま合唱が得意であり好きであったから、合唱団というチームをつくって、「努力と成果とはヤジロベエのように釣り合っている」ということを合唱という手段を使って体験してもらっているわけです。したがって、小学生は確かに声も小さいし耳も十分には育ってないかも知れませんが、高校生・大学生といっしょになって歌うことで、様々なことをマネし、様々な失敗を重ねながら「ああ、練習すると(定期演奏会という)こんな素晴らしい一日を過ごすことができるんだ」ということを経験していく。

大切なことは、5~6年もすると、その小学生も高校生になる…ということなんです。そして今、ヨチヨチ歩きをしている子が、5~6年後には新入団員としてメンバーになる。その繰り返し。

合唱団「空」のねらいが、純粋に合唱の上手い子を育て、コンクールで日本一になろうとするものであるならば、年齢を問わずに「上手な子コース」と「まだ下手な子コース」などというものに分けて、「へたくそコース」はそれなりのトレーニングを重ね、コンクールには「上手な子」で参加する…ということになるでしょう。しかし、それって教育か?今の世の中、「勝ち組」「負け組」だとか、格差社会などと言われているけれど、本当の「世の中」って、赤ちゃんもいれば年寄りもいる、身体に障害をもつ方々もいればオリンピック選手もいる。みんなまぜこぜなんです。それで、「全ての人が幸せになれるように」というのが世の中です。

と、いうわけで、合唱団「空」は、ただひとつ「音楽が好きだ歌が大好きだ」という共通点をもった子が、低学年もいる高学年もいる、中学生も高校生も大学生だっている、みんなで一つの目標をもってがんばろう、そして大学生が結婚をしようかってな時には小学生が高校生になり、当時赤ちゃんだった子を新入団員として支えていく。いろんな子のまぜこぜ。世の中の縮図です。それを「よし」とする合唱団。なぜなら、ねらいが「教育」であり「人間としての真実」つまり「努力と成果の関連性」を体験するチームだからです。

では、いわゆる「年齢の低いメンバー」「小学生の子」に、嶋田先生が何を要求するかというと、「みんなと同じ方向に綱を引け」ということです。綱引きというものは、力の強い子もいれば力の弱い子もいる。やってはいけないことは、綱にぶら下がることです。綱にぶら下がる子が一人でもいると、その後ろの子たちの「引く力」は、「ぶら下がっている子を上に持ち上げる」ということに使用されてしまいます。つまり、必ず負ける。綱引きは、いかにして綱を一直線にして同じ方向に引くか…という勝負であり、どんなに力の弱い子であっても、その「一直線の同じ方向」を守っている限り、必ずチームのプラスになる。その「小さなプラスがいかに多いか」が、綱引きのポイントです。そして、どんなに力の強い子でも、ずれた角度で引いている限り、チームのマイナスになっている。

「空」の空間では、小学生に限らず、中学生でも高校生でも、どんなに小さい声でもいいし、時には(わざとでなければ)間違ってもいい。どんなに小さな声でもいいから、みんなと同じ音程にしようとする「気持ち」があるかどうか、みんなと同じ発音を作ろうとする「気持ち」があるかどうか、これを集中して見ています。それをやってくれているかぎり、あるいは十分でなくてもやろうとしている姿勢があるかぎり、嶋田先生は嬉しいのです。そしてパートリーダーには、その活動を側面から支援してくれるようにお願いしました。

理由の2つ目は、ジュニアとシニアに分けるだけの人数が、合唱団「空」にはいないのですよ、新実徳英先生。決して、新実先生のアドバイスを無視しているわけではないのです。「無い袖は振れない」だけなのですよ。それに、音楽プラザには部屋がふたつない。さらに、ジュニアとシニアを分けて指導する、指導スタッフがいない。新実先生、ごめんなさい。今のところ、そういうわけなのです。まあ、メンバーが70人くらいになったら、ひとつ考えてみましょう。合唱団「空」には、新実先生の曲を歌いたがっている子も多いようなので、近い将来、もう一度、ご指導いただけますように、よろしくお願い申しあげます。

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