SORA NOTE

嶋田先生から空のみんなへ


「聴き合う」とは「互いの弱点を補強し合う」ということ

【令和元年5月18日(土)】
今日は久しぶりのフェールマミでの練習です。恒川先生・高倉先生が友達の結婚式などの用事で欠席と分かっていましたが、朝に浜田先生から体調不良との連絡がありました。浜田先生、どうかお大事になさってくださいませ。
というわけで一人での指導となった嶋田先生ですが、集まったメンバーはかなり多い。フェールマミにはグランドピアノがありますから、声でグランドピアノを鳴らす(いわば声の響きを意識する)練習に30分くらい投入しようと予定していたのですが、浜田先生の不在を逆用して、このトレーニングに1時間をかけました。初体験の子も何人かいたので貴重な時間となりました。開始早々に「頭が痛い」と言っていた体調不良の子には少しハードな練習だったかもしれません。ごめんなさい。
合唱に必要なのは「大きな声」でもなければ「大きな口」でもありません。「響く声」が必要なのです。では「大きな声」と「響く声」とは何が違うのかというと、人間の耳の鼓膜を刺激するエネルギーが大きいのが「大きな声」だとするならば、何かを共鳴させて同じ音を発生させるエネルギーが大きいのが「響く声」とでも言えるかな。
つまり、人間の耳には気持ち良く感じる大音響も気持ち悪く感じる大雑音も全て「大きな音」ですが、小太鼓の響き線を鳴らしたりピアノの弦を鳴らしたりすることができるのは、音の「大きさ」ではなくて「響き」なんですね。
このことを最も手っ取り早く実感できるのが、声でピアノの弦を鳴らそうとするトレーニングです。フェールマミに来た時は必ず行います。みんな少しづつ鳴らすことができますが、その鳴り方は一人一人違います。「もっと鳴らせるようになりたい」と思ってくださいね。できれば「嶋田先生よりも鳴らせるようになりたい」と思ってください。嶋田先生はもう年ですから、これ以上ウマくなることはありません。あとは衰えていく一方です。
このトレーニングというか「声の響き」は年齢には関係ありません。高校生が必ず小学生よりも響くかというと、そうではない。高校生が小学生より響くとするならば、それは経験値が多いか少ないかの違いです。「響くようになりたい」と思っていた時間の長さと言っても良い。今日、初めて体験したメンバーは、次の機会には「もっと鳴らせるように」チャレンジしてくださいね。小学生だって響く子はメチャメチャ響くんですから。

今日はピアノの開放弦だけではなく、一気に単音だけ鳴らす段階まで持っていきました。使った音は♭レです。この段階は「声が響くこと」と同時に「音程の正確さ」が求められます。どんなに「響く声」を出しても音程が外れているとピアノは鳴らない。押さえている弦が♭レならば、その音を正確に出さない限り絶対にならないのです。嶋田先生の経験値では1/10音違っていたらもう鳴らないと思います。
だからこれはムズカシイ。本気になって音を聴き、本気になって声を響かせなくてはならない。今日が初体験のメンバーは「こういう世界もあるのか」「音とか声って、ただ出せば良いってもんじゃないんだな」と思って帰ってくれたのなら、嶋田先生は満足です。
予想どおり、十分に鳴らせることができた子は一人もいません。ですけれどもね、4人とか7人とかで力を合わせたら鳴らすことができましたね。
Aさんも鳴らなかった、Bさんも鳴らなかった、Cさんも鳴らなかった、Dさんも鳴らなかった。ハイ残念でした…じゃないんです。その鳴らなかったAさんBさんCさんDさんが協力したら鳴ったでしょう。
これは算数の世界ではありえないことです。×+×+×+×は×に決まっています。ところが合唱では×+×+×+×が〇になるんです。なぜかと言うとですね、
Aさんは右手にケガをしているから鳴らなかった、Bさんは左手にケガをしているから鳴らなかった、Cさんは右足にケガをしているから鳴らなかった、Dさんは左足にケガをしているから鳴らなかった、その4人が力を合わせたら、互いが互いのケガの部分を補い合ってチームとしてケガの無い状態を作ることができる…というわけなのです。
ピアノが十分に鳴らない原因は一人一人ビミョーに違います。ケガをしている部分が違うんです。だから自分が「右手が痛い」と思った時に他の3人は「右手はゼンゼン痛くない」と思っていたら、自分の弱点を友達がカバーしてくれたことになる。逆に友達が「足が痛い」と思っていた時に自分が痛いのは手ですから足はゼンゼン痛くなくて、結果として友達をカバーしていたことになる。
今日は個人個人が単音を十分に鳴らすことはできませんでしたが、逆に「みんなで声を合わせれば鳴らすことができる」ことを証明する時間となりました。4人とか5人で声を合わせたら自分だけでは鳴らせなかったピアノが鳴りました。これは今日のメンバーが全員経験したことであり、ピアノが鳴ったことは全員が証人となる事実です。

だからね、
「聴く」ことが大事なんですよ。お互いがお互いの声を聴き合うこと。これは大事なことなのですが、ただ「よく聴き合って」と言われるだけではナットクできない部分を納得してもらえたかな…と思います。「聴き合う」とは「互いの弱点を補強し合う」ということなのです。

「響き」トレーニングの後は「雪はりんりん」。休憩の後は「夕やけのうた」を使って、ハーモニーを作る練習をしました。表現を練り上げるとか、言葉をハッキリさせるとか、どこで速くなるとか遅くなるとかいう話はいっさい無視して、ゆっくり目のテンポでとにかくハーモニーを作ることを重視しました。驚いたことに「夕やけのうた」は全員が全部のパートを歌ってからハーモニーを作ることを全ての部分で成功させることができました。「雪はりんりん」では終結部の「雪がふる」のハーモニーを繰り返して練り上げました。仇討を終えて天国へ昇っていく蘇我兄弟、その身体から魂がはなれて天へと昇華していく情景をハーモニーとして作ることができました。すごくキレイでした。

今日はピアノ伴奏にいっさい頼ることなく、ひたすら人間の声だけで「声の響き」と「音程」「ハーモニー」を高める練習に終始しました。倍音もバンバン鳴り響いていました。「聞こえる?」と言ったら何人かが「聞こえます」と手を上げてくれました。
音声物理学みたいな説明もしましたが、みんなが実際にナットクできる場面もあって、貴重な時間になったことと思います。がんばってくれたメンバーに感謝です。

来週は多くの小学校で運動会があります。再来週は嶋田先生が自分の学校の運動会で参加できません。しかしその次の週が愛知県合唱連盟合唱祭の本番です。
全てのスタッフと全てのメンバーの協力をお願いします。がんばって乗り切りましょう。

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