SORA NOTE

嶋田先生から空のみんなへ


平成最後の練習 「雪はりんりん」に期待が膨らみます

【平成31年4月27日(土)】
今日も集まったメンバーに「雪はりんりん」への自信を付けてもらおうと思っていました。新しいメンバーのためにも、毎回しっかりと歌っておくことは重要なことです。
しかし、音取りばかりでは面白くありません。曲の世界をとらえ、その世界へのイメージを膨らませ、共感を高めていく…その作業にも取り組む必要があります。イメージも共感もなく、歌詞を音符に乗せて歌うだけならば、それはコンピュータにも可能なことだからです。
1番と2番は同じメロディー。ここまでは現代、21世紀の私たちの庭に咲いている梅の花に雪が降り積もっていく情景です。「それにしても蘇我では何年ぶりの雪でしょう」から意識が変わっていきます。梅の花から「伝わるものは凛々と恥を知ること凛々しいこと」と歌い、「遠い日の遠い世界よ」で800年前の事件へと思いを馳せていきます。
800年前の事件とは曽我兄弟の仇討ちのことです。それは一族の所領争い(土地の奪い合い)がもとで、父親を工藤祐経の家来に殺された兄弟が、18年もの間様々な苦難に耐えて仇討ちを果たしたものです。
この事件は建久4年(1193)5月28日のことで、教科書にも出てくる源頼朝が多くの武将を招き、富士山の裾野で大規模な巻狩りを行った時に起こりました。その夜、曽我十郎祐成・五郎時致の兄弟が、野営地(キャンプ場)に設けられていた宿所を襲い、頼朝に招かれて巻狩りに参加していた工藤祐経を殺害するという事件を起こしたのです。
兄の祐成はその場で討ち取られ、弟の時致は捕らえられて、その後に処刑されました。
事件のいきさつは、「曽我物語」として脚色され広く普及し、後世には「曽我物」として歌舞伎や能などの題材として好んで取り上げられ、日本三大仇討ちの一つとして、知られています。
この兄弟の覚悟を謡うのが「ただ一度の若い日を」から始まる謡曲の部分です。この直前、58小節目の「降る雪に」のハーモニーで、21世紀に生きる「私」が「蘇我兄弟」に変身した感じを出しましょう…と言いました。変身する…と言うより、「蘇我兄弟」の魂が「私」に乗り移った…と言う方が良いかも知れません。
そして謡曲の最後、80小節目のデクレッシェンドで、「私」の身体から「蘇我兄弟」の魂が抜けていき、フッと我に返った「私」が「あれ?夢を見ていたのかなぁ?」と思う感じを出したいです。その「あれ?」って思う瞬間を、82小節目のピアノの出だしに持って行きたいな…と思います。
そこから始まる4番は、1番や2番と違って、庭の情景を歌うものではなく、800年の時を隔てた「蘇我兄弟」の心を知った「私」を表現しましょう。「実らない梅」とは「大人になれなかった蘇我兄弟」という意味であり、「早咲きのその香りに」とは「早く死んでいった蘇我兄弟の心に」という意味です。
終結部、102小節目からの「雪が降る」のハーモニーは印象的に歌いたい。「私」の中から遊離していった(抜け出していった)「蘇我兄弟」の魂が花びらに包まれて天へ帰っていく…そんな印象を会場で聴いてくださる人たちに伝えることができればと思います。

このような要求を出しまくったわけですが、今日、今この瞬間に集まったメンバーでできる表現としては精一杯の、そして最大限の努力をしてくれたと思います。特に終結部の「雪が降る」のハーモニーはなかなか良かった。嶋田先生が夢に見ているハーモニーに近い。フルメンバーが集まって思い切りピアニシモで歌ったら、すごいハーモニーが生まれるのではないかと期待が膨らみました。湯山先生が指揮してくだされば、きっと鳥肌が立つくらいの感動的な響きになることでしょう。

休憩の後は「まためぐる春に」を歌いましたが、嶋田先生の研究不足もあってなかなか大変でした。音楽が巨大なので、一筋縄ではいきません。全部を歌い通すことができなかったことを深くお詫びいたします。でも、メンバーはよく頑張ってくれました。ありがとう。
今日も中学1年生の女の子が見学に来てくれて、いっしょに歌ってくれました。「雪はりんりん」のハーモニーをどう思ってくれたのかな。後半の練習は先生の力不足でしたが、よく歌ってくれたことに感謝します。良かったら、ぜひ仲間になってくださいね。待ってます。

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