SORA NOTE

嶋田先生から空のみんなへ


「こう歌いたい」という歌い手の主体性

【平成31年3月2日(土)】
この日は午後から茶屋ヶ坂の老人施設での慰問コンサートが予定されていましたから、プログラムにする「文部省唱歌集」を一通り歌おうと思っていました。同時に、前日の連絡メールで見学に来てくれる子がいると知らされていましたから、元気の出る、誰でも知っている、楽しい曲を発声練習に使おうと思っていました。
となると、誰がどう考えても「ドレミの歌」以外にありません。「ドレミの歌」と「エーデルワイス」は「文部省唱歌集」の後のアンコールで歌う予定でしたので、ちょうど良かった。
とは言え、「ドレミの歌」も「エーデルワイス」も2カ月以上も歌っておらず、それが少し心配でした。
ところが「文部省唱歌集」を含めて、この2曲はメンバーの中でレパートリー(いつでもどこでも歌える曲)として確立しているようで、音程もハーモニーも強弱表現も文句なしです。何よりも11月の演奏会の時点では(当たり前の話ですが)嶋田先生が取り決めた表現を実現するために集中していた神経が、今では「こう歌いたい」という歌い手の主体性となって膨らんでいて、「みんなで作り上げる表現」となっていることを断言できます。
だから確認したことは「ソロの部分は全員で」とか「ソロの部分のハーモニーは省略」とか「この部分を繰り返してユックリ歌って終了」などのことだけでした。言わば即席で「3月2日バージョン」を取り決めて本番に集まるメンバーが共通理解した…ということになります。
これは実にカッコイイ、そして痛快な話でありまして、忘れたことを思い出すとか歌えなくなっている部分を鍛え直すなどということが全く無い。みんなの中に発酵している「音楽」をまとめるだけ。いやぁ、楽しかったですねぇ。
休憩の後は、やはり楽しい曲が良かろうと思ったので、先週やり残していた「鳥が」を歌うこととしました。3月いっぱいは曲を仕上げることを目標とせず、メンバーの「合唱力」と「感覚」を磨くことを目標としていますので、いつものように全員で全部のパートを歌いました。人数が多くはないので好きなパートを歌ってハーモニーを作る時には部分部分で薄い声になることがありますが、それは人数のバランスの問題であって一人一人の力の問題ではない。むしろ個々の合唱力は確実に高まりつつあります。
言ったことは、この曲は鳥と花が出てきて「鳥は花のように美しくありたい」「花は鳥のように力強くありたい」と思っている話ではない…ということです。出てくる主人公は「花」だけです。「花」がどのようにつぼみをほどき、「花」がどのように繁り、「花」がどのように咲くか、その目標として「鳥の姿」がある。主人公は「花」です。
いつも言うことですが「花」はフラワーではありません。「人間」のことです。歌うメンバー、つまり「空」のみんなであり「自分自身」ということです。
鳥が
空を見上げるように
私が つぼみを ほどく
というイメージですね。そして「空」のメンバーはなれるでしょうか。あるいは嶋田先生にはできるでしょうか。
鳥が
歌うように
私自身が におう(みんなを幸せにする)
そのように生きることが。
だから最後の最後に、「人間は(私は)言葉で、鳥のように飛び、花のように咲く」と決意が爆発する。1段目から4段目まで行間に隠れていた「人」つまり「私自身」という言葉が、たった1回だけ現れて(現れざるを得なくなって)爆発するのです。
嶋田先生はなれるかなぁ。みんなは、できますか?

続けて、湯山先生の童謡から「イルカの翼」と「ヨット」と「夕やけのうた」を歌いました。いずれも初めて歌う子がいる曲で、あまり取り上げてこなかった曲です。シンプルで時間的には短い構造ですが、さすがに作曲されてから50年以上たっても色あせない。名曲です。
歌詞について詳しく話す時間はありませんでしたが、それは次の機会に譲りたいと思います。

午後は茶屋ヶ坂に移動して老人施設での慰問コンサート。南山大学や名古屋市立北高校、名古屋混声合唱団などが訪問している施設だと聞いてビックリ。そんなトップクラスの合唱団ではありませんよ、と担当者に言いましたが、「大丈夫ですよ、みなさん歌が大好きな人たちばかりですから」とのこと。
しかし、施設の会場は「空」の人数にピッタリで、しかも程よい響きで歌いやすかった。そして、きれいにハモりましたね~。最初に書いた「こう歌うんだ」という団員の思いが感じられる演奏でした。
大人数でないことが逆にアンサンブルを明確にして、室内コーラス的な心地よさを聴く方々に届けることができた…と思います。
嶋田先生の立ち位置は会場の一番後ろだったので、お年寄りたちの反応や表情などは分かりませんでしたが、涙を流して聴いておられた方もいたのかな?司会の所員さんは、そう言っておられましたけれども…。
聴いてくださった方々の反応は、しかしメンバーが一番よく分かっていることでしょうから、それで十分だと思います。
それにしても「文部省唱歌集」は「空」の武器、新しいレパートリーになりました。定期演奏会や愛知県合唱連盟合唱祭に向けての練習を進める中で、その定着に向けての努力も重ねていくことが大切だな…と思っている嶋田先生です。

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