SORA NOTE

嶋田先生から空のみんなへ


文部省唱歌集とハチャメチャな歌い方

【9月8日(土)】
今日は何から練習しようかなあ…と考えながら練習会場に向かうのはいつものことです。湯山先生の曲ならこの曲をこのように、「サウンド・オヴ・ミュージック」の曲ならあの曲をあのように…と考えるのですが、その考察はほとんどの場合ムダに終わります。なぜなら、必要な練習は嶋田先生の頭の中にあるのではなく、その日この時に集まったメンバーの中にあるからです。
つまりメンバーのニーズ(求めるもの)が大切であって先生のそれではない。音楽プラザのドアを開いて初めて何をどう練習するのかが決まります。で、「文部省唱歌集」の練習から始めることにしました。よくよく考えると合宿以来「文部省唱歌集」は歌っていません。だから結果的に、集まってくれた全てのメンバーにとって有効な時間となりました。
「ふるさと」は1番「忘れがたきふるさと」2番「思い出ずるふるさと」3番「水は清きふるさと」をフォルテで歌ってください。特にソプラノは2番と3番でオブリガートを歌った直後ですから気を抜くことなくシッカリと歌いましょう。3番を歌った後で「忘れがたきふるさと」と繰り返すことは以前にも報告したとおりです。
「冬景色」は以前、3番の「それと分かじ野辺の里」でリットとフェルマータをかけるように言いましたが(書きましたが)、メンバーに不必要な緊張を強いるので止めます。自然にユックリになっていって終結します。
「紅葉」は4小節ごとのフレーズですからブレス(息継ぎ)の位置に気を付けて。つまり「秋の夕日に輝る山もみじ」をブレスしないで一息で歌うように心がけましょう。これは「富士山」でも同じことが言えます。
「さくらさくら」はmfとmp、fとppの対比をハッキリと歌いましょう。1番の終わりのメゾソプラノ「見に行かん」は楽譜にはアッチェレ(だんだん速く)の記号がありますが逆にリタルダンド(だんだん遅く)して緊張感を高めます。P17の2段目4小節目と3段目4小節目にあるレファラの和音は凄み(すごみ)のある声で。直後の4分休符も凄みのある休みにしましょう。
休符つまり声を出さない部分で凄みのある表現って???どうやって歌うの???と聞かれそうですが、それは次の機会に説明します。
3番はメロディーラインをハッキリと歌いたい。P18のソプラノは良いとして、メゾソプラノ「見わたすかぎり」アルト「霞か雲か」メゾソプラノ「匂いぞ出ずる」は全力フォルテで振り絞って歌いましょう。ソプラノが決然としたフォルテでムズカシいオブリガートを歌っているので、メロディーラインが埋没してしまわないように。
理由は嶋田先生の責任なのですが、嶋田先生のハートはどう楽譜を読み込んでも、姉の安寿(あんじゅ)を殺された弟の厨子王(ずしおう)が白装束(切腹する時に着る着物・お葬式で死んだ人に着せる白い着物)に身を固めて仇仇討(あだうち)に出かける時の舞(まい)をイメージしてしまうのです。厨子王が持つ刀は銀色に冷たく光って、その頭上にはらはらと舞い落ちる桜色の花びら。
ですから今日は、「みんなでお花見に行って、おにぎりでも食べながら、あぁきれいだね…というイメージではなく」とお願いしました。
ハーモニーは本当にキレイです。あとは声の表現力です。
「富士山」は前に述べたとおり、2小節ごとに息をしない。4小節のまとまりを大切にしましょう。それから、全部、3小節目の頭に頂点が来るようにとも指示しました。理由は「何なにを」「どうした」の日本語の構成です。「ごはんを」「食べた」とか「歌を」「うたった」と話す時、大切なのは「どうした」の部分。「食べた」「歌った」をハッキリ言わないと相手に伝わりません。「富士山」はほとんど3小節目に「どうした」の部分がはめられています。楽譜を確認してくださいませ。
「春の小川」でも全く同じことが言えます。だから4小節を一つのまとまりにして3小節目の頭を強くすることは同じです。これは「色美しく」「日向で泳ぎ」「小川の歌を」のハーモニーでも明らかですね。
「春の小川はサラサラ流る」の「サラサラ流る」はメゾソプラノ上のメンバーに負担をかけてしまいますが、「ララソファミドレミ」ではなく「ドドシソドレミ」と歌ってください。バランスの問題です。
「夕やけこやけ」は美しく歌えました。メンバーの中に「こう歌うんだ」というイメージが確立しています。

休憩の後、「サウンド・オヴ・ミュージック」の終結部の変更点を確認しました。素晴らしくキレイです。一番最後のハミングは嶋田先生が書いたド♭ミ♭ラドの和音ではなく、( )を付けたミ♭ラド♭ミの和音で行きます。この変更を確認して音にするのは30秒で終わりました。
「私のお気に入り」と「ひとりぼっちの羊飼い」は、これから破壊する方向に練習を持っていきます。つまり音は取れている。その音を正確に忠実に歌声にしようとするのは(そう歌ってくれて本当にありがとう)きわめて大切なことですが、それにプラスアルファしたワクワク感がほしい。今日の歌声は、音を正確に声にしてハーモニーを決めようとする気持ちがアリアリで、聴いていてマジメすぎる。この2曲は「ドレミの歌」と同じようにワクワク感が大切なので、極端に言えば音を外してもいいからハチャメチャな元気さとエネルギーがほしいのです。
まぁ、しかし、このようなことは音が取れていて初めて言えることです。音が取れていないのにハチャメチャ歌いをしたら、悲劇的な本当のハチャメチャになります。
みなさんの場合は音は取れている。だからいつでも正確なハーモニーに戻すことができる。その実力がある人だけが、わざと音を外してハチャメチャな歌い方をする。これは楽しいですよ。聴いている人たちは。
合唱団「空」は歴史的に「そろえる」「美しく歌う」という方向が大好きなので、「ドレミの歌」を含めたこの3曲に関しては「いかにして面白く歌うか」を基本にしていきたいと思います。
来週もよろしくお願いします。

情報です。
元ウィーン少年合唱団の指揮者であられたアグネス・グロスマン先生が再来年(2020年)の6月に来日されるのが決定しました。東海メールクワイアーの定期演奏会のための単独招聘です。定期演奏会は日曜日で前日の土曜日の午前中は空いているはずですので、また「合唱団「空」に来てください」とお願いをします。
合唱団「空」の成長ぶりを聴いていただき、ウェルナーの「野ばら」あたりを指揮していただきたいな…と思っています。

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