SORA NOTE

嶋田先生から空のみんなへ


文部省唱歌集の楽譜を作成・配布

【8月4日(土)】
定期演奏会のための「文部省唱歌集」の楽譜を配布しました。
4月のチャリティーコンサートで歌った楽譜をそのまま定期演奏会でも…という選択肢はモチロンありました。しかし、4月のものは全て小学校の教科書です。今回は定期演奏会。
それに、教科書そのもの…とは言っても、チャリティーコンサートでは繰り返しや移調、リコーダーの挿入など、さまざまな工夫をしました。しかし、その後に訪問した老人ホーム慰問コンサートでは、その工夫を全部は歌いませんでした(特に「さくら」において)。
つまり、聴いてくださる相手によって、こちらの表現は変化する…ということです。老人ホームのお年寄り、スプリングコンサートのお客様、定期演奏会のお客様。これ全て、「空」の表現に対してのニーズ(求めるもの)が違います。
それから、「空」のメンバーの方も、4月と11月とでは「力」が違う。受験生抜きで2月~3月に取り組む練習と、定期演奏会に向けて8月~9月に取り組む練習の内容が同じであるはずは決してなく、同時にメンバーの中に高まっている「気力」と「表現力」も決定的に違います。
それなのに、同じ楽譜を使い、同じ表現で良しとしていてはダメだと、嶋田先生は思います。
もう一つの問題は、教科書の楽譜の調性です。教科書は、音楽がキライな子もスキな子も、音楽が苦手な子も得意な子も、全ての小学生が取り組むために作られており、結論を言えば「音が低い」のです。これは「春の小川」や「富士山」を歌えば「空」のメンバーなら身体がナットクするはずです。授業の展開によっては歌うだけでなく楽器でも演奏できるように、ハ長調やヘ長調が多いのも教科書の特徴で、これは学校の小学生にとっては有効でも合唱団にとっては足かせになります。とにかく音が低い。
5月、6月、7月と練習に取り組む中でずっと考えていました。「空」のメンバーに進歩がなく、技能の向上も気力の充実も見られないのであれば、4月のチャリティーコンサートで歌った表現をそのまま11月にも繰り返すという「安全パイ」を取る必要があったからです。今、このタイミングで楽譜の刷新と配布に踏み切ったということは、嶋田先生の中に「行ける!」という決断があったからに他なりません。
冒頭の「夕やけこやけ」は2年生の教材です。4月にこの曲を入れなかった理由は唯一、若松正司の素晴らしい編曲が間に合わなかったからです。この編曲は非常によく出来ていて、嶋田先生が持っている5~6種類の楽譜の中でも最高のアレンジです。
「春の小川」「富士山」「もみじ」「冬景色」「ふるさと」は萩原英彦による編曲で、和音の進行やピアノ伴奏の構成など本格的なものです。本格的とは言っても、ムダに超絶技巧を要求することもなく、原曲を生かした自然な音の流れになっています。何よりも、ホ長調(春の小川・富士山)ト長調(もみじ・冬景色・ふるさと)と、歌いやすくハモりやすい調性が選択されているのがオイシクて嬉しいです。
それに萩原英彦は湯山先生の弟弟子にあたる池内友次郎門下で、湯山先生と共通するフランス音楽を基調とする部分があり、何よりも湯山先生ともご懇意で湯山先生も喜んでくださることと思います。
「さくらさくら」の編曲は越部信義。このアレンジは混声合唱を含めたあらゆる編曲の中で(混声合唱には武満徹の名編曲があります)嶋田先生が最高と判断するものです。この編曲も4月に歌いたかったのですが、4月の時点でのメンバーの力量を考えて敢えて避けていました。4月に歌った編曲は今だから白状しますが、「今の段階ではこのくらいがギリギリの限界だろう」という判断のもとにカタカナで書きこんだリコーダー合奏用の編曲です。
越部信義の編曲は素晴らしい。嶋田先生がついに抜き放った「伝家の宝刀」です。
ここに敢えて「茶つみ」と「おぼろ月夜」だけは教科書そのものを挿入し、プログラム構成に変化と聴く人が感じる休息感を残しました。

さあ、そういうわけで、この楽譜をみんなが初見でどう歌ってくれるのか、楽しみで楽しみで、ワクワクして心が躍って、ギャーンと自転車をこいで練習場に向かいました。
集まったメンバーは決して多くはありませんでした。夏休み中で小学校の部活もなく…と思っていましたが、そうだよなぁ、家族旅行がありますねぇ(笑笑笑)。出かけられる時には大いに出かけてくださいませ。「空」の活動だけが人生じゃないもんね。
でも、予定通り「夕やけこやけ」と「さくらさくら」を歌いました。
驚いたことに、この2曲が通ってしまいました。実はこの日、名古屋市体育館で港区PTAバレーボール大会があり、嶋田先生は8時20分からの開会式を見届けて音楽プラザに急行したのです。自分の学校の試合は11時10分からでしたので10時50分まで音楽プラザにいられる、その時間でどれだけ歌えるか…と思っていました。
9時30分からみんなで楽譜をホチキス止めして実際の開始は40分ごろからでした。1時間10分です。「夕やけこやけ」と「さくらさくら」が初見で通ってしまうとは、さすがに予想していませんでした。
思うに、今の「空」のメンバーには合唱の基礎的な力が高まりつつあり、音を取るとか和音を掴むなどの点においては大人の合唱団を超える力があります。「さくらさくら」には楽譜を見た感じでは難しいと思われる部分もありますが、30秒くらいで歌えるようになってしまう。そんな力が確かにあります。
合唱は、そりゃぁ人数が多いに越したことはないのですけれども、もっと大切なことはメンバー一人一人が生きているか、確かに歌っているかということです。一人一人が確かに歌っていなければ生まれないハーモニーが中リハーサル室に響きました。快心の手ごたえを感じて音楽プラザを後にしたことを報告しておきます。本当に嬉しかった。ありがとう。

その後は恒川さん、高倉さん、浜田先生の協力で「富士山」に取り組んだとのこと。全員でメロディーを歌ってから、各パートの音を全員で歌っていったとのことですが、やはり音はすぐに捉えることができて美しくハーモニーを作ることができた…と報告を受けました。
次回の練習を楽しみにしています。

Comments are closed.