SORA NOTE

嶋田先生から空のみんなへ


「ドレミの歌」は難しい

【5月19日(土)】
今日と来週は多くの小学校で運動会があります。今日、どこの学校で運動会が行われるか、嶋田先生の立場は全市の一覧表が手に入りますので分かっています。かく言う嶋田先生も来週26日は自分の学校の運動会で「空」の練習には参加できません。それに地域の行事に参加するというメールも入っていて、来週を含めて「空」にとっては参加メンバーが少なくなる苦しい2週間です。
その苦しさを、いかに楽しさに変換するか。これが指導者の腕の見せ所です。今日はピアノの弦を鳴らす例の練習をグレードアップして行いました。
ピアノのペダルを踏んで全開放弦にすると、クシャミをしたってオナラをしたって、実はピアノの弦は共鳴します。全ての音に共鳴するわけです。ただし、クシャミやオナラや怒鳴り声ではギャ~ンという鳴り方しかしません。響きのある声で共鳴させると、録音したように本人と同じ声みたいに響きます。
ここまでは先週までのノートに書いたとおりで、いわばレベル1。今日はレベル2を行いました。
レベル2ではペダルを踏みません。つまり開放弦にはしない。どうするかというとレならレ、ミならミを4オクターブ、4つの鍵盤だけを指で押さえます。開放弦にすると全ての高さの音にピアノは反応しますが、ミの音の鍵盤だけを押さえたピアノは、ミの高さの音(声)にしか反応しません。これは物理的には当然のことで、半音違っていてはモチロン、1/100音違っていても鳴らない。だからメンバーは先生が押さえる鍵盤の音を真剣に聴いて、その音を集中して声にしなければならないわけなんです。でないとピアノは鳴ってくれませんから。
これは取り組むメンバーにとって、すごく緊張する瞬間だと思います。ホンの少し音の高さが違うだけで鳴るか鳴らないかが分かれる。結果が全てです。嶋田先生だったら(人間だったら)「惜しかったね、もう少しだよ」とフォローしてくれる場面ですが、ピアノは機械ですから惜しくてももう少しでも1/100音違っていたら無反応で知らん顔。誰の助けも借りずに、自分の耳と声だけでピアノと対峙しなくてはならない。
結果は小学生を含めて全員が微かではありますがピアノを鳴らすことができました。
この練習のねらいは「音を聴こうとする気持ち」と「その音を出そうとする気持ち」になる…ということです。歌を歌うということは楽しくてカンタンなことですが、バラバラ歌っているだけでいくら練習したって上手くなりません。バラバラ歌いは道端か便所でだってできます。本当の歌(って何ですかって聞かれそうですが、ここでは聴く人を感動させることのできる歌と定義します)を歌うためには音を聴かなければだめだ。そして聴いた音を完全に正確に声にしなければ、しようとしなければ、本当の歌にはなりません。その気持ちを育てたい。
これが「ピアノ共鳴レベル2」です。まがりなりにも全員が微かにホンの少しですが鳴らせることができたので、正直ホッとしています。

30分以上の時間をかけて共鳴のトレーニングを行った後、6月9日(土)の愛知県合唱連盟合唱祭で歌う「エーデルワイス」と「ドレミの歌」の練習をしました。
合唱連盟合唱祭は9日のCブロックの4番目。13時20分スタートのブロックです。当日は音楽プラザでの練習を早めに切り上げて会場の稲沢市民会館に移動しますが、その段取りは後日の連絡を待ってください。
特に「ドレミの歌」なんですが、これはムズカシイです。幼稚園の子が(先ほど使った言葉を再使用すれば)道端でバラバラ歌いをするだけなら、これほどカンタンな曲はありません。しかも歌っていても聴いていても楽しい音楽です。
その「楽しさ」が大きすぎるために「本当にキチンと歌おう」という気持ちが埋没してしまいます。あるいは「自分はキチンと歌えている」と錯覚してしまう。カラオケの音程得点盤で100点を出しにくいナンバー1ではないでしょうか。
練習したのは「ドミミ ミソソ レファファ ラシシ」の部分です。そして次の「ソードーラーファーミードーレー」のフレーズ。「ドミミ ミソソ」の部分はメンバーに1音ずつ担当する音を決めて、映画のようにその音だけを狙って出す練習をしました。しましたらメチャメチャになりました。爆笑しました。「見てろ、よく聴け」と言って嶋田先生が見本を示そうと思いましたがメチャメチャになりました。超爆笑しました。
その音を狙う、狙った音を正確に出すって、実は本当にムズカシイのです。今日のメンバーはそのことを理解して帰ったはずです。
映画では、いともカンタンにこの部分を歌っています。市場で買い物をして馬車に乗っている場面です。
映画の中の子供たちは、もちろん倍率の高いオーディションに勝ち残った優秀な歌唱力を持った子供たちであるはずです。しかし、映画を作製する場合は、先に場面を撮影して、後から歌声を録音してハメ込むという方法が一般的です。「サウンド・オヴ・ミュージック」の場合は、先にオーケストラ伴奏で歌を録音しておいて、場面を撮影する時にはその録音を聞きながら口パクで歌っている…という方法を取ったかもしれません。
いずれにしても、映画の中の動きと音声は、演技と歌は全て別々に撮影され録音されたものが合成されているものです。ジュリー・アンドリュースがいかに天才と言えど、あれだけの演技と歌唱を同時に行うのは不可能です。トラップ大佐を演じているのはクリストファー・プラマーという名優ですが、「エーデルワイス」をはじめとするトラップ大佐が歌う全ての歌は、実は別人のプロ歌手が歌っていることは、嶋田先生が持っているサウンド・トラック盤に明記されています。
ミュージカルの舞台上演でも、難しい歌はあらかじめ録音しておいた音を客席に流して、舞台の役者は口パクで演技に集中する…ってのはよくある話です。
そういうことは映画や舞台上演の場合は当たり前の話でインチキでも何でもありません。映画や舞台をプロヂュースする側から言えば、その完成度が全てであって、聴いているお客さんが耳にする音が役者本人の声であるかどうかはどうでも良い話なのです。
合唱団の場合、これらの操作はいっさいできません。ステージの上で本人たちがどう歌ったか、これが全てです。
ですから今日は、「ドミミ ミソソ」の部分を映画の役者どおりに歌う練習をしましたけれども、映画のとおりに歌えるようにしようと思っていたわけではありません。
分かってもらいたかったのは、映画や舞台のイメージを合唱で再現することはカンタンではない。かなりムズカシイということです。それを分かってもらいたかった。「歌って楽しい」とか「自分はキチンと歌えている」などと思った瞬間に、幼稚園のバラバラ歌いレベルになります。真剣に向き合いましょう。
で、嶋田先生もズッコケて歌えなかった爆笑場面に戻るのですが、あの場面がキチンと歌えたら、これはものずごい歌唱力です。ちょっとやそこらの合唱マニアの大人では無理でしょう。「ドレミの歌」はムズカシイです。

残った時間は「向日葵」と「木」。全員が上下のパートをキッチリ音取りして、ハーモニーをつくることができました。

今日も中身の濃い練習をすることができました。

次回は嶋田先生は運動会です。同じように運動会で来られない小学生がたくさんいます。恒川先生・高倉先生・浜田先生にお願いしておきましたが、老人ホーム慰問コンサートで歌う「文部省唱歌集」の練習が中心になることと思います。「サウンド・オヴ・ミュージック」も「向日葵の歌」も「ねむれないおおかみ」も楽譜は全部持ってきてくださいね。

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