SORA NOTE

嶋田先生から空のみんなへ


「駿河のうた」と磁石の話

【10月14日(土)】 そろそろ中学生・高校生は中間テストかな…。何の役にも立ちませんが心から応援しています。

もしも時間が無限にあったなら、みんなに国語や算数、理科などの授業をしてみたいものです。高校生の数学の極限値(きょくげんち)とか3次関数(さんじかんすう)などの内容は完璧に忘れましたが、小学校の3年生の理科の内容を高校生や大学生に楽しく授業する自信はあります。

例えば「磁石を使って遊ぼう」という単元(教科書は「じしゃくをつかってあそぼう」です)があります。この単元は

① 磁石は鉄を引き付ける

② 磁石にはN極とS曲がある

③ NとN、SとS(同じ極)は反発し、NとS(違う極)は引き付け合う

④ N極は北を向く

この4つを理解してしまえば合格で、教師はこの4つのポイントを手を変え品を変えして問題を考えてテストを作るわけなのです。 じゃあ、次の問題を考えてみましょう。

①-1 磁石はなぜ鉄しか引き付けないのか

①-2 鉄以外で磁石が引き付ける金属はあるのか

①-3 なぜ金や銀や銅は磁石に付かないのか

②-1 N極のN、S極のSは、どういう意味か

③-1 なぜ同じ極は反発し、違う極は引き付けるのか

④-1 なぜN極は北を向くのか

これを全部答えられる子はいないでしょうね。先生たちだって、これに答えられる人は少ないと思います。ですが上の問題は、3年生の子が真顔で「先生、どうしてですか?」と質問してもおかしくない内容であり、その時に「さぁ~?なぜでしょうね~。」とは言いたくないから、マジで調べるわけなんです。 でも、3年生の子に上の問題を教えたりはしない。教科書にありませんから。

でもね、上の問題を全て納得して授業をするか、知らずに授業するのかでは、教師としての授業力は全くレベルが違ってくるし、授業の面白さもダンゼン変わってくると思うのです。 嶋田先生は、恒川さんや高倉さんや浜田先生が「へぇ~!!!」と目を見張る3年生の磁石の授業をする自信があります。

授業でも合唱でも同じですが、バッハやベートーヴェンやシューベルト、バルトークやコダーイ、そして大中恩先生や池辺晋一郎先生などがどんな曲を書いているか、そういうことを知っていて「駿河のうた」を歌うわけなんです。

あっと、長大な脱線になってしまった。ゴメンナサイ。中間テスト、がんばってくださいね。

さて「駿河のうた」は「さくらえびの海」です。ハーモニーに特化した練習を行いました。11小節目のユニゾンでの歌い出しから12小節目の頭のハーモニーが決まるかどうか、これを全ての部分で確認したと思ってください。確認した場所が多く、参加していたメンバーだけの話ですから、欠席していたメンバーのヒントになるような記述はできません。ゴメンナサイ。

ですが、よく音が入っていて、キチンとしたハーモニーができるのは流石です。ホメておきたいと思います。フルメンバーが揃ったら素晴らしいハーモニーができることと思います。

「みかんの花はかおり」も同様にハーモニーの確認です。強弱とかテンポのことは考えず、ひたすらハーモニーを磨きました。今、ここにいるメンバーがどう高まるか、それが大事です。全員が揃っていないのに歌い方やテンポのユラメキなどをシゴキ上げたって意味はありません。細かい表現についてはフルメンバーが揃った時に共通理解します。その時に、今日のメンバーが楽しめるようにするのが「今日の練習」の眼目です。

「ちゃっちゃ茶畑」は元気よく歌うことと歌詞の確認です。元気がなければ話にならない曲ですから。

「うなぎの子守唄」は今までの話と矛盾するようですが、4番「おまえの見る夢どんな夢」からの表現についてです。でも、みんなは指揮に集中してくれればOKの話で、ポイントは「嶋田先生が作りたい表現」についてです。先生としては、時計のような決まりきったテンポで歌いたくない。「おまえの見る夢どんな夢」の後の「眠れ眠れ」のアゴーギグです早い話がユックリになる。次の「生まれた海は広かった」の後の「眠れ眠れ」も同様です。特に「売られて行く日は故郷に」の後の「夜明けの虹が出るだろう」は思い切りユックリ。

なぜ、そういうことになるかというと、この歌はバカなウナギが太っていって蒲焼きになる話ではないからです。「うなぎの子守唄」は「別れの歌」であり、その「別れ」とは「死」ではなく「出発」の別れです。

何人も何人も、手塩にかけた子供たちを卒業させた先生にしか分からない気持ちかもしれません。中学生になってくれるのは嬉しい。でも君がいなくなるのは寂しくて仕方がない…という思い。あるいは、みなさんがお嫁にいく直前の夜に、大人になったみんなが最後に娘としてこの家の屋根の下で寝る夜に、みんなの父さんや母さんが抱く思いです。お嫁さんになってくれるのは嬉しい。でも、この家からいなくなってしまうのはタマラナク辛い。そういう思い。

その「思い」が「眠れ眠れ」という言葉に集約されていると思うのです。だから熱量のこもった表現になる。もうこれは嶋田先生の「思い」であって理屈ではありません。今日の練習会場で話したことを再録することは不可能ですが、少なくとも欠席したメンバーは「うなぎが蒲焼きになる歌」ではない…ということを理解して次の練習に来てください。

残った時間は10分間。「ドミソの歌」を通しました。重大な確認が1点あります。P21から始まるフレーズは聴衆が参加した場合、メゾソプラノがBのメロディーを歌う必要はありません。ソプラノの「たとえそれがどんなに…」がかき消されてしまいます。なので、メゾソプラノは聴衆が参加する2回目の演奏では、P21からはソプラノを歌う必要があります。

「ドミソの歌」はP4にあるとおり2回歌います。1回目は「空」だけで歌って聴衆は聴いている。その時は楽譜どおりに歌います。2回目は500人の聴衆が参加するわけですから、ソプラノだけではAのメロディーを支えきれません。メゾソプラノもAを歌う必要があるだろう…というわけです。

本番のお客様が、マッタク歌おうとしない偏屈聴衆であれば話は別です。だからメゾソプラノの子は、聴衆の歌い方を判断して、その場の判断でAを歌うかBを歌うか決めなくてはなりません。ですがAを歌うことになる可能性の方が絶対に高いと思います。スリリングな話ですね。

楽しい時間はあっと言う間に過ぎていきました。今日も嶋田先生に「生きる力」を与えてくれたみなさんに、心の底から感謝を伝えます。ありがとう。

 

【冒頭のクイズの答え】

①-1 磁石が鉄を引き付けるのは、鉄が「磁区」という構造を持っているからです。

①-2 「磁区」構造を持っている金属は鉄の他にニッケルとコバルトがあり、この3つは磁石にくっつきます。

①-3 金や銀、銅(10円玉)やアルミニウム(1円玉)などは「磁区」を持っていないため、磁石にはくっつきません。

②ー1 Nはノース(北)、Sはサウス(南)の頭文字です。

③ー1 N極からは磁力線が出ていてS極からは磁力線が入っていきます。出ると入るが揃った時に磁石はくっつきます。Sの「入る」と「入る」が揃ったら、もっとくっつくはずだというのは人間の感覚であって、-と-が出会ったら+になることは中学校の数学で学習します。

④-1 磁石のN極が北を向くのは、地球そのものが巨大な磁石になっているからです。北極がS極、南極がN極になっています。だから日本では、磁石はみんなN極が北極を指します。オーストラリアではS極が南を向く…と習っていることでしょう。

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