SORA NOTE

嶋田先生から空のみんなへ


平成29年度合宿 3日目 チームワークについて

【8月13日(日)】
結論から言うと、午前中に「駿河のうた」全曲を通すことができたのは予想外の成果でした。前日2日目の最後に(余った時間で)何曲か確認し、発声練習で「うなぎの子守唄」から開始しました。
私たちの愛知県には民謡が無いのかというとそうでもなく、「岡崎の子守歌」などがすぐに頭に浮かびますが、あまりメジャーな曲ではありません。「八木節」「五木の子守唄」「木曽節」などに比肩する民謡が無いのは、なぜなのでしょうね。
答えは分かっています。名古屋が織田信長以前の時代から巨大な商業都市であり、人間の流通が全国規模で出入りが激しかったことが大きな理由の一つでしょう。民謡はある意味で閉鎖された人間の交流が少ない地域で、親の口から子の耳へと伝承されることで成立するものであり、親元を離れて子供が江戸や堺に行ってしまうという状況が多かったと思われる愛知では民謡が成立しにくかったものと思われます。東京も横浜も大阪も同じような状況です。
湯山先生は全国各地の伝承や民謡に素材を見出す名人なのですが、だから北海道・東北・北陸・四国などを素材とした名曲がありますが、それゆえに愛知の曲はありません。
その中で数少ない「お隣の県」に素材を求めた曲が「鮎の歌」と「駿河のうた」なのです。隣の静岡県を素材としたものだけに、みかん畑や茶畑は愛知県にも多くありますし、富士山を目にする機会も多く、ウナギは豊橋のすぐ近くの浜名湖の「うなぎパイ」が有名ですし、さくらえびだって商業として成立するだけの漁獲量が確保できないだけで、ちゃんと三河湾や伊勢湾にも生息しています。
地元…ということを考えると、「四国の子ども歌」よりも「駿河のうた」の方が、はるかに合唱団「空」の子どもたちにとってイメージしやすいはずです。
だから…というわけでもないでしょうが、自然な歌声が流れます。それぞれの曲に「ここの音程だけは気を付けて!」と言って何度か確認した個所はありますが、そのような部分も何度も何度もしつこく繰り返す必要はありませんでした。

家の都合により前日の夜まででやむを得ず帰る必要があった子もいるので、2日目までよりも人数は少ないのですが、良い響きが得られたと思います。

合宿でも普段の練習でも同じなのですが、今この瞬間に歌っている人・練習に取り組んでいる子は、一つのことだけ考えれば良い。それは「いかにして自分が上手くなるか、いかにして自分がレベルアップするか」ということです。チームワークというものは「みんなで協力し、力を合わせる」ということなのですが、小学校の学級での活動では、給食当番で力を合わせるとか、掃除で力を合わせるとか、運動会の行進でみんなで集中して足並みを揃えるとか、隣のクラスとのドッジボールの試合で頑張るとか、そういう場面でよく出る言葉で、だから特に小学生は「本当の」チームワークというものを誤解している可能性があります。

掃除にしても給食当番にしても行進にしても、それらは自分がより高いレベルになる必要はなく、サボらなければOK、目の前の仕事をこなせばOK、迷惑をかけなければOKという世界です。そのスキル(実力)を高めるための努力はほとんど必要ありません。

嶋田先生が言うチームワークとは小学校の活動とは異なります。プロ野球やプロサッカーに通用する「チームワークの思想」を合唱団「空」で理解して大人になってほしい。チームワークとは「助け合い」であり「カバーし合う」ということです。自分が相手をカバーするためにはカバーする実力がなくてはなりません。隣の子が歌えない部分を、その瞬間に(先生が気付く前に)自分が正確に歌って先生にバレないようにして、同時に隣の子に「こう歌うんだよ」と無言で伝えている…。助けようなんて思っていなくても実際に助けていることになるんです。ということは、自分が「あっ、シマッタ」と思った瞬間に隣の子に救われた…などという場面もあるはずです。

プロ野球やプロサッカーを見ればすぐに分かることですが、チームワークとは実力のある者同士の助け合いです。実力も無いのにチームワークに参加することはできない。

だから、みんなに言ったことは「自分がレベルアップすること、歌えるようになること、苦手なことを少なくすること、それだけに集中する時間にしよう」と言いました。実際に(東海メールクワイアーでもそうですが)自分が(嶋田先生が)歌えるようになるということは、合唱団員70人全員を助けていることになっています。逆に嶋田先生は69人から助けられています。実力があるからこそ可能なことですが、それは小学校では(給食や掃除では)学べない真実のチームワークです。

ことわっておきますが、小学校はそれで良いのです。1年生に「実力が…」なんて言っても始まりません。1年生は友達がこぼしたおかずを一緒になって片付けてあげることで「仲間を思いやる心」と「助け合う優しさ」を学び、チームワークの基礎を学んでいるのです。その小学生の話を、合唱団「空」に持ち込んではいけません。

もう一つ、ことわっておきますが、その真実のチームワークの土俵に立つために、小学生も高校生も同じレベルになる必要はありません。分かりやすく小学生の力を50、高校生の力を100と置き換えるなら、小学生は51になろうとすることが大切で、高校生は101になろうとすることが大切なのです。

自分のレベルアップが、おかずをこぼした友達一人を助けるのではなく、自分のレベルアップがチーム全体を助け、支えることになるって、カッコイイ話ですよね。そのような話をしながらの2時間でしたが、「駿河のうた」の魅力に支えられて、みんなに「チームワークとは何か」を分かってもらえたのではないかな…と思っています。

余った時間は「北陸の子ども歌」に投入し、効率の良いことこの上もありません。午後は「童謡」を湯山先生からいただいたCDを聴きながら復習しました。勝部太さんをはじめとする日本トップクラス歌手が歌っています。基本のテンポ、基本の強弱、基本の表現、早い話が楽譜に書いてあるとおりに歌うことを確認しました。大中先生の「ブランコ」も「わたりどり」も、とても美しい歌声だったと思います。

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