SORA NOTE

嶋田先生から空のみんなへ


自立して歌う…ということ  愛知県合唱連盟合唱祭

【6月10日(土)】
今日は愛知県合唱連盟合唱祭の本番です。今年で22回目の出場ということで、「空」の歴史も長くなったものです。ですが、今までのことはハッキリ言ってどうでも良い。大切なことは、今年のメンバーが何を感じ、何を得て、どう成長してくれるか…そこが問題です。今回は(今回も…と言うべきか)一人一人が自立して歌ってくれることを願って直前の練習を組み立てました。

自立して歌う…ということを簡単に記せば、カラオケで歌っているように歌うということです。カラオケで歌う場合、助けとなるのは当然ながら聞こえてくる音であり、マイクの助けを借りるとは言え、基本的には自分だけの力でウワーッと歌います。自分の声を100%出すのがカラオケの本質であり、歌詞を間違えても「アハハ」と笑い、出だしを間違えて歌っても気にしないで歌い続ける解放感。これを「自立して歌う」状態と定義しておきます。
これと相反する状態が、普段の練習でもよく見られることですが、歌詞や音程を気にするあまり、ほとんど聞こえない小さな声でしか歌えない状態です。隣の子の声を聴きながら歌い合わせていくという力は合唱には絶対必要な条件ですが、そのためには自分が隣の子に聞こえるように歌うことも必要です。なぜなら、隣の子はアナタの声を聴きながら歌い合わせているからです。
分かりやすく整理すると、大切な順番は以下のようになります。
① 十分な声が自由自在に出せること (十分な声とは10メートル先にいる人に聞こえるくらいかな…)
② 音程が正確であること (もちろん「できるだけ」です。努力と練習でどのようにでもなります)
③ 相手の声に合わせてハーモニーを作る和音感覚
④ 豊かなイメージに基づく表現力
嶋田先生の練習は④の表現力に重きを置いているように見えるでしょうが、実は④は一番後の話です。よく考えれば幼稚園の子にだって分かります。出ていない声で表現力を磨いてもザルで水を汲むのと同じです。
今日の合唱祭では①を最重要視して直前の練習を組み立てていました。フェールマミの空間をいっぱいに使って離れて座り、自分の声を聴きやすくします。相手との距離が遠くなる分、自分の声が聴き取りやすくなるわけです。先週やったように、全員が一人で歌う時間を作り、各パート一人ずつで三人のハーモニーを作るのと理屈は同じなのですが、本番当日の朝にそれをやっている時間はありません。
もともと「空」のみなさんには、12月~2月の練習で(あるいは入団以来の数年間に)②の音程と③のハーモニー感覚は十分に(じゃないかも知れない。これからもレベルアップしましょう)叩きこんでありますから、声さえ出ればこっちのもの。人数が多い少ないは問題ではなく、だいたいどれだけ大勢で歌おうとも、その中に自立して(カラオケで歌うように)歌っていない子がいたとしたら意味はありません。

ちょっと脱線しますが、私は担任だったころ、算数の授業でも国語の授業でもクラスの子に「分かった人、手を上げて」と言ったことはありません。「分かる人」と聞いて10人くらいが手を上げて、その中の一人を当ててその子が答えを言って、「はい、そうですね。では次」と進んでいく。これは美しく授業が成立していくように見えますが、私に言わせれば話にならない。30人いて10人くらいが手を上げて、では残りの20人はどうなっているかと言うと、おそらく15人くらいは分かっていても手を上げないのでしょうが、5人くらいは分からないから手を上げないわけです。その5人の分からない子は、手を上げた子の正解を聞いて「ああ、そうなのか」と分かったような気持ちになり、実は解き方も考え方もアヤフヤなままドンドン次に進んでいく…。これはダメだと5年目くらいに気付いたわけです。それ以来の約20年くらいは「分からない人、手を上げて」と言っていました。30人のうち「分からない子」が一人でもいるのに、次に進んじゃダメだと思ったのです。もちろん「分からない」と言って手を上げるのは勇気が要ることです。先生にとっても、その子が「分かった」と言えるようになるヒントをすぐにその場で出さなきゃいけないからキビシイ授業になります。ですが、上手くヒントを与えて(答えを教えるのではない)、「分かった、できた」と変容することを繰り返すうちに、みんな「分からない」と言って手を上げることが平気になってくれました。

「空」の空間でも、「できない」「分からない」「上手くいかない」は言うべきコトバであり、そこで先生がどのようなヒントを出すか、それをみんなが期待して楽しんでくれるような雰囲気を作りたいと思っています。

本番を聞いていた父母会のお父さんが「いや~、直前の合唱団がよく声がでていたんで、どうなるかと思いましたが、けっこう「空」も声が出ていましたよ」と言ってくださいました。直前の合唱団とは60人を超える高校生集団です。毎日練習土日も有りでしょうから、「空」のみんなは少ない練習時間でよく健闘していると言えるでしょう。

あと、午前中の練習では②の音程の問題もいくつか指摘しました。「あの遠い思い出を、富士山はひとり、心のひだに刻んでいる」の部分です。また、③のハーモニーについては「樹海の奥に人が死んでいる」から始まる小さいソロの部分を整えました。いずれの部分も、鍵盤ハーモニカで音を叩き込むのではなく、先生が歌って聞かせて、その声を聞いて確認するという方法で十分でした。それで明らかに音程もハーモニーも向上しますから、たいしたものだと思います。
本番の「空と樹海と湖と」の演奏は、近いうちに団員専用エリアにアップされるでしょうから、楽しみにしていましょう。
成果のあった合唱祭でした。みなさん、ありがとう。

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