SORA NOTE

嶋田先生から空のみんなへ


世界一デリケートな指揮で

信じられない時間が生まれました。世界的な合唱指揮者、エストニアのアンツ・ソーツ先生が、音楽プラザを訪ねてくださったのです。しかも、エストニアのトゥリ少年合唱団の指揮者、倉橋亮介先生もごいっしょです。
「ワン タイム(一度)、アイ コンダクト ゼム(私が子供たちを指揮します)、アフター(その後)、プリーズ(お願いします)コンダクト(指揮を)フォー ゼム(子供たちのために)」と嶋田先生が言うと、「ヤー(分かりました)」と答えてくださったソーツ先生は、すごく真剣な表情で、嶋田先生が指揮する「Mis on inimene?」を聴いてくださいました。
聴き終わった後は拍手を下さり、「アリガトー」と日本語が飛び出します。そして、その後は…、

嶋田先生がお願いした通り指揮台に立ち、約1時間、入念なレッスンをしてくださいました。初めにエストニア語の歌詞の発音、そしてフレーズごとのテンポ、そしてクレッシェンドやデクレッシェンドなどの強弱表現、メロディーを受け持つソプラノの発声、ソプラノとメゾソプラノ上との掛け合い、レガートな歌い方が必要な部分、などなど。それはそれは入念な、本格的な、詳細な練習でした。

終わった後だから白状しますが、嶋田先生は予想していませんでした。ソーツ先生がこれほど入念な練習ををしてくださるということを。みんなの歌を聴いた後、「ベリーグッド、ベリーナイス」くらいなことを言ってくれて、みんなが自信を付けてくれればOK…くらいに考えていたのです。子供を伸ばすのはホメるのが一番…と本能的に知っている先生は、ソーツ先生からホメ言葉が一つ出れば大成功と思っていました。

ところが嶋田先生の前で展開された練習は、東海メールクワイアーに対するものと寸分違わぬ本格的なものでした。なぜ、こんなことになったのかと言うと、ソーツ先生はリハーサル室に入った瞬間に「この合唱団なら、やればやるほど上手くなる」と直感されたからだと思います。あるいは嶋田先生が指揮したみんなの歌声を聴いて「言えば分かる子供たちだ」と直感されたからだと思います。本当に驚きました。

それよりも、もっと驚いたことは、「空」のみんながソーツ先生の指摘を受けて、どんどん表現を高めていったことです。嶋田先生がゼンゼン教えなかったことがバーンと指摘され、その指摘に対応して表現を新しくしていく…。あるいは嶋田先生が間違って教えていたこと(最後のポーレーの前でブレスする)を「そこはノンブレス。フレーズをつないで」と指摘され、その通りに対応していく…。
これは本当に驚いたことでした。子供だからと言って甘く練習するのではなくプロフェッショナルな練習をしてくださるソーツ先生、その練習に応える子供たち。

ソーツ先生の手は魔法のタクトでした。世界一デリケートな指揮だと言っても過言ではありません。その動きに対応して歌う合唱団「空」。すごい時間でした。

その後14時から19時まで、東海メールクワイアーのリハーサルがありました。その席上で倉橋先生は「今朝、子供たちの「Mis on inimene?」を聴いてきました。心が洗われました」と発言してくださいました。
ソーツ先生は、みなさんに長いメッセージをカードにしたためてくださいました。そのカードは来週、印刷して持っていきます。そこには「私は あななたちのコーラスサウンドが好きです」「とても美しい声です」「エストニアに来てください」などの言葉が記されています。
ありがとう、みなさん。先生はとっても嬉しかったよ。

さて、2月3月と続いた、湯山作品とは関係のないレッスンもこれで終わりです。この一連の取り組みは大きな成果を上げました。湯山先生の音楽を歌う上でも、他の全ての音楽を歌う上でも、基礎となる力を大いに伸ばすことができたと確信しています。
この力は大きい。偉大なる回り道であったことを声を大にして言うことができます。
来週は、湯山先生の3冊を持ってきてくださいね。

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