SORA NOTE

嶋田先生から空のみんなへ


日本には無いハーモニー

次週3月11日が大高イオンでのコンサートなので、愛唱曲の練習が中心になりました。それにしても、短い練習期間で、子どもたちはよくガンバってくれました。あとは、楽譜にカジリツキではなく、いかに前を向いて歌うか…ですね。本番の日の午前中の練習では、少しでも楽譜から目を離すことができるように、そのコツを伝授しようと思っています。

後半は「Mis on inimene?」の練習をしました。よくハモっていたと思います。アカペラ(ピアノなどの伴奏がない、人間の声だけで作るハーモニー。またはその楽曲のこと)で正確にハモることは、とても難しいことなのですが、耳が良いのでどんどんハーモニーが美しくなります。たいしたものだと思います。

北ヨーロッパの合唱曲は不協和音が多く出てきます。ミとファとソが同時に出てきてぶつかり合うハモらない和音が、なぜ多く使われるのか、その理由は定かには分かりませんが、先生はこう考えます。

歴史的な事実として、ラトビア、エストニア、リトアニアという国々は、18世紀からロシア帝国に支配されていました。ロシア革命ののち、1918年に三国とも独立を達成したものの第二次世界大戦中には再びソビエト連邦(今のロシア)とドイツに占領されたのです。

1991年のソビエト連邦崩壊により、ようやく独立を果たして現在に至っているのです。ということは、エストニア人がエストニア語を自由に使えるようになったのが1991年で、それからまだ26年しか経っていません。それまでの約200年間はロシア(ソビエト)に支配されていて、ロシア語しか使えなかったのです。

日本が、たとえばアメリカに占領されたとすると、おそらく私たちは日本語を使うことを禁止され、英語を強要させられると思います。事実、日本も太平洋戦争の時に、支配した台湾やフィリピンの人たちに日本語で話すことを強要し、子どもたちの教育も日本語で行ったのです。

だから、今でも台湾やフィリピンなどのお年寄りは日本語を話せる人がいます。それは好きで勉強した成果ではなく、子どもの時に無理矢理「日本語を使え」と命令された名残なのです。

200年もの長い間、ロシア語を使うことを強要され、自分の国の言葉を使うことができなかった人々。それがアンツ・ソーツ先生の国、エストニアをはじめとするバルト三国(ラトビア、エストニア、リトアニア)なのです。

だから、バルト三国では合唱がものすごく盛んになりました。数え切れない作曲家たちが数え切れないくらいの合唱曲を作り、今でも総人口の5人に1人はどこかの合唱団に入って歌っているという国なのです。

なぜ、そういうことになるかと言うと、自分の国の言葉が使えないからです。私たちの日本が、アメリカに支配されて英語しか使えなくなったと考えてみましょう。そうなったとしたら、日本語を使うことができるのは家の中での家族の会話と歌を歌う時だけです。まさかアメリカも、私たちが「さくら」や「ふるさと」などを歌うことまでは禁止できないでしょう。同時に「さくら、さくら、やよいの空は」という歌詞を「チェリー(桜)、チェリー、マーチ(3月)スカイ(空)」と英語で歌えとも言えますまい。

という訳で、他国に支配されている状況では、自分の国の言葉を使うことができるのは歌う時だけ…となるわけです。

そして200年間に数え切れない合唱曲が作られた。そして、その多くは、祖国への愛、自由へのあこがれ、平和の大切さ、人間とは何か、愛するとは何か、命とは何かといった内容が歌われているのです。いつの日にか支配をはねのけ、自由な人間として祖国を守ろうという気持ちを歌に込めたのですね。

「Mis on inimene?」も、そういった曲のひとつです。

このような曲は、支配とか抑圧とか自由を奪う何者かに対する反発の精神が込められているように思えてなりません。その精神が、音楽の中では不協和音となって表現されるのではないかなぁ…と先生は思うのです。

不協和音は日本の音楽(たとえば湯山先生や大中先生の音楽)の中にも全く無いわけではありません。ドファソドとかレミラシなどの組み合わせですね。これは古来から伝わる雅楽の和音で、多くの場合、たとえば桜の花が舞い散る情景とか、初日に輝く海の波のきらめきとか、そんなイメージに使われます(もちろん例外はありますが)。ですが、自分を押さえつける外からの力をはねのけ、自分の生き方を貫くといった「戦いの音楽」は、日本の音楽の中には少ないと思います。

「Mis on inimene?」のハーモニーは、日本には無いハーモニーと言うことができると思います。

3月5日(日)、東海メールクワイアーの練習に行った嶋田先生は、都築会長と鈴木副会長から正式に許可をいただきました。

「3月25日の午前に、合唱団「空」の練習に来てくださいって、ソーツ先生に頼んでも良いですか?」

これは、とても重要なことなのです。東海メールクワイアーが招聘している先生ですから、合唱団「空」が勝手なことをするわけにはいきません。ちゃんとキャプテンに相談することは、子どもの世界でも大切なことですよね。

都築さんも鈴木さんも「いいですよ。うまくいくといいね」と言ってくださいました。うまくいかない場合とは何でしょう? それは、ソーツ先生が熱を出していたり、すごく体調が悪かったりする場合です。18日(土)の練習でお目にかかった時、ソーツ先生にお願いします。

みなさん、祈っていてくださいね。

Comments are closed.