SORA NOTE

嶋田先生から空のみんなへ


自分がグラついた時に
相手の子がフォローする足の運びをしてくれたら

今日もスタートから見学者を3人迎えることができました。しかも男の子も1人。「空」の明るい未来を感じます。
見学者に前向きな印象をもってほしいので、「陽は昇る」を使っての発声練習から始めました。歌詞のマチガイOK、音程のマチガイOK、とにかく元気よく、眠った体(のど)を起こすために、大きな声で歌おう…と指示します。
「陽は昇る」はメロディーもハーモニーも難しいところはありませんが、歌詞の付け方が難しいので、暗譜しにくい曲です。5月24日(火)ウインクあいちでの本番は、楽譜を持って歌えるように交渉しようと思います。ですが、これは暗譜しなくても良いという意味ではなく、暗譜できれば暗譜することに超したことはないのです。できるだけの努力をしていきましょう。

しばらくの間、「雲」と「雨の遊園地」の練習が続いています。だから今日は目線を変えて、「鮎の歌」から「猪譚」を取り上げることにしました。歌ったことがあるのは在団年数が長い子2人だけで、あとは全員が初見(生まれて初めて歌う)の曲です。
冒頭の「おれは寝てた。寝場はその時、見切りの衆と組犬どもに囲まれた」から「激しく、激しく」と要求します。
「おれ」というのは猪が、自分のことを「おれ」と言っているのであり、自分が寝ていた時に、猟師とそれに従う猟犬によって取り囲まれた情景を表しているのです。だから、「空」の子が得意な、柔らかくて温かい声ではダメです。いわば命を切った張ったという、大ピンチの音楽です。
だから「ホーレホレホレ、ホーレホレホレ、ホーレィ」というのも叩きつけるような、あるいは殴りつけるような激しい声がほしいのです。
これが「ビリーブ」だったら、激しい声などもってのほかです。「たとえば君が傷ついて、くじけそうになった時は、必ず僕がそばにいて支えてあげるよ。その肩を」という歌詞を、激しく叩きつけるように歌ったら、こりゃまた大笑いだぜ。
ということは、「猪譚」を「ビリーブ」みたいに歌ったら、抱腹絶倒うたがいなしという世界になります。ちなみに抱腹絶倒とは「ほうふくぜっとう」と読み、「抱腹」とは「おなかを抱える」、「絶倒」とは「気絶して倒れる」ということで、「おなかを抱えて大笑いして、あまりに笑いすぎて、おなかが痛くなって気絶して、ぶっ倒れる」という意味です。
音楽にはいろいろな音楽があるんです。「雲」にしても「猪譚」にしても、激しく、汚く、いやらしく、暗く、そして戦いの音楽であって、「空」の子が伝統的に苦手とするものです。
だから今、先行して取り組んでいるわけです。これが「わさび田」とか「いちごたちよ」、あるいは「君は鳥、君は花」などであれば、明るく、温かく、生命力にあふれたものですから、「空」の子が最も得意とする領域です。
得意なことは後回しにして、苦手なことから練習する。嶋田先生の作戦なのですが、みなさんが先生の立場だったら、どうしますか?やっぱり得意なことからスタートしますか?先生は、苦手なことから取り組むべきだと思います。

さて、「猪譚」の歌い方について、共通理解しておきたいことを記しておきます。
P19やP21、P23、P25に見られるように、アルトから先行してメゾソプラノ、ソプラノへと下から音を重ねていく形は、全て全員で歌うことにします。つまりアルトは楽譜のままですが、メゾソプラノはアルトから歌います。そして、ソプラノは、アルトとメゾソプラノを全部歌ってから自分のパートを歌います。P28も同じ処理をします。
逆に、P22「しかも矢受けの」とP26「なんと利口な」のように、ソプラノから先行して上から音を重ねていく形は、楽譜通りに歌います。
高い声ならそれほど難しくはありませんが、低い声をたっぷりと充実した響きで始めることは難しいからです。

「猪譚」も、全員でソプラノ、全員でメゾソプラノ、全員でアルトを歌い、4回目で自分のパートを歌ってハーモニーを作るという方法で押し通しました。それでもって1時間で最初から最後まで通すことができたのは、驚くべき効率です。
何度も何度も言いますが、自分のパートしか知らないで歌っていてはダメです。それは、2人3脚をしていて、相手の子がグラついた時に、ひたすら自分のペースで歩みを進めるようなものです。
相手の子がグラついたら、その子のグラつきに合わせて自分の足をコントロールしなくてはなりません。そうすれば、相手の子は転ばなくて済み、つまりは自分が助かることになるのです。
自分がグラッときた時に、相手の子がマイペースを保ったら、ぶっ倒れます。しかし、自分がグラついた時に相手の子がフォローする足の運びをしてくれたら、どんなに嬉しいでしょう。
これは、言うほど簡単なことではありません。実行し実践することは、とても難しいことです。嶋田先生が理想とする合唱は、ひたすら自分のパートを一直線に歌い切るのではなく、どこかのパートの声が不足していたり、誰かが思わぬミスをしてしまったりした時に、臨機応変にカバーし合えるチームです。
そして、「合唱」というコトバを「人生」と置き換えた時にも、同じような動きができる子になってください。

全部のパートを歌いながら自分のパートを確認していく、そんな練習ができることを、私はとても誇らしく思います。

Comments are closed.