SORA NOTE

嶋田先生から空のみんなへ


理解しようとする気持ち

中学生・高校生は期末テストの真っ最中と思われ、20人弱のやや寂しい練習となりました。が、たとえ何人であろうとも、来てくれた子が「ああ、来てよかった」「おもしろかった」「少し上手くなった気がする」と思って帰ってくれるようにするのが、嶋田先生の使命です。

で、発声練習として「富士山」を使ってみました。それから一人一人に「先生の背中」をさわってもらって、「息を吸う」という技術の確認。「富士山」はト長調で最高音G(高いソ)まで出しましたが、よい響きだったと思います。これに20分。しかし、発声練習は大切ですが、そればっかりではおもしろくありません。大崎先生にソプラノをお願いし、嶋田先生はメゾソプラノとアルトを受け持って、「マリちゃんの歩いた夢」の⑥「あるいたゆめ」⑦「小さな手」⑧「けっこん」の3曲の音取り。これは50分ほどで完了してしまいました。曲が(音楽の作りが)自然に作られているからでしょうが、それにしても音取りは早い。いつもながら感心します。

後半は合わせです。「富士山」の効果でしょうか、かなり強い声を出してくれます。「あるいたゆめ」などはピアニシモから始まる曲なので、ふさわしい声ではないのですが、強く出してくれる声を「弱く」と言うのはカンタンですが、弱くしか出せない子に「もっと強く」というのはむずかしい。と言うか、ヘタに「強く」と要求すると、合唱では出してはいけない声つまり「どなり声」になってしまうことが多いのです。そういう意味で、強い声を出してくれると、練習が効率よく進みます。で、「あるいたゆめ」の歌い出しは、すぐに解決。

この曲集にはところどころに「ほこうしゃ」という言葉が出てきます。これは「歩行者」ではなく「歩行車」であって、ようするに「車いす」のこと。そして、「小さな手」の「手をかざしてみた。右手は大きいし、左手は小さい」という歌い出し。この詩を、さらっと歌ってはいけない。右手と左手の大きさが違う…。その自由にならない左手を「空に向かって大きく振った」その気持ち、その心の痛み、その悲しみを、健常者であるボクたちは理解することはできないかもしれない。ですが「理解しようとする気持ち」はもちたいものです。そんな話をすると、「お日様、見てください。治してください」という部分のフォルテッシモが、ちゃんとFFになるから嬉しいね。

「けっこん」は、この曲のフィナーレなのです。強い決意の言葉、「病気の人をいろいろ助けてあげる」から「夢の中で私は歩いた」に移るP33のritは、この曲集のいちばん感動的な部分です。「助けてあげる」はフォルテッシモで、「夢の中で私は歩いた」は静かに美しくピアノ。この、テンポと強弱の変化もうまくいきました。本番で、どんな感動的な演奏になるのか、その片鱗を予感することができました。

さて、来週はもう7月に入ります。合唱団「空」のみなさんの、一層の健闘を祈ります。

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